おもちゃのように愛車カスタムを愉しむDIY好きオーナーのダイハツ・ロッキー

  • GAZOO愛車取材会の会場であるポルトヨーロッパで取材したダイハツ・ロッキー(A200S)

    ダイハツ・ロッキー(A200S)

「プラモを作っているのと同じ感覚。クルマ遊びは、そんなつもりで楽しんでいます(笑)」 そう語るダイハツ・ロッキーのオーナーさんは、まるで作品の進捗状況を見守るような様子で、微笑みを浮かべながら愛車を見つめていた。

取材には7歳離れた弟さん(トヨタ・チェイサーのオーナー『もち』さん)と一緒に来てくれた。それぞれともに家庭を持った現在も生まれ育った街の近くに暮らし、家もご近所同士なのだとか。どちらかが旅に出た時はお互いの家を訪れ、お土産をあげたり、もらったりする仲の良い関係がずっと続いているという。

免許を取って最初に購入したクルマは、トヨタのTE30型カローラ。免許取り立てだったこともあり、クルマで出かけるのが楽しくて仕方なく、乗り潰すその時までハンドルを握っていたそうだ。そのカローラに続いた愛車はカリーナ、カムリ、カローラスパシオと、ずっとトヨタ車ばかり。特に意識していた訳ではなかったそうだが、最初にお世話になったトヨタディーラーのセールスマンが独立し、新たに始めた中古車店にずっと通っているため「なんとなく自然な成り行きで」トヨタ車を購入し、乗り継いできた。

3人の娘さんがおり、物心ついた頃の記憶に残っているであろうファミリーカーは、カリーナとカムリである。もうすっかり大きくなったので、流石にクルマで一緒に出かけることもなくなったが、その歴代ファミリーカーに受け継いできたという2体の人形は、ロッキーの助手席前にちゃんと残してある。 「亀の人形は家族で海遊館に行った時に買ったお土産だったかな? 子供たちが喜ぶものだから、カムリの時からずっと付けてるんですが、スプリングがサビてきちゃって(笑)。キレイにしてからロッキーにお引っ越ししました」

ひとつ前の愛車であるカローラスパシオからクルマを乗り換えることにしたのも、子供が成長し、もうそれほど大きなクルマを必要としなくなったのが理由のひとつでもある。当時、買い替えの第一候補に挙げていたのは、ホンダのフィットだった。

だが、ちょうど半導体不足の影響で新車の生産スケジュールが遅延し、中古車の在庫も全国的に逼迫していた時期。クルマを買いたくても買えない状況が続く中、馴染みの中古車店で、これならすぐに買えますよと勧められたのがロッキーだったそうだ。

「当初考えていた本命のクルマではなかったんですけど、もともとこういうカクカクした四角い形のクルマは好きなので、すぐに気に入りました。実際に使ってみると荷室は広いし、バックドアも大きく開くので荷物を積む時に楽ですね。季節の花を育てることも趣味なので、ホームセンターに行って苗や園芸用の土を買って帰る時なんか便利ですよ」

DIYが得意なオーナーにとって、もちろんガーデニングだけでなくクルマのカスタマイズも人生に彩りを与える趣味のひとつ。これまで乗ってきた歴代のクルマでも、自分のやれる範囲でコツコツとクルマいじりを楽しんできた。その長年の経験を通して得たモットーが「目立たないように目立つ」ということである。

ダイハツのディーラーオプションである前後左右のエアロパーツを装着したロッキーは、全体のカラーリングを白黒で統一。フォグランプ周辺やセンターピラー、リヤピラーは本来ツヤなしのブラックなのだが、そこをさり気なくDIYでグロスブラックに仕上げてある。

「要所に赤をアクセントとして加えると雰囲気がシマると思い、エンブレムやグリル、サイドスカートなどには赤を加えています」と言う通り、他とはひと味違うことはしっかりと主張。特にDIYの技が効いているのはヘッドライトのサイド部分で、透過性のある赤いテープでプチコスメしている。同じロッキーのオーナーが見たら「ん?」と気になるポイントに違いない。

フロントバンパーの下に追加されたロワスカートの左サイドには、錨のエンブレムが加えられているが、これは昔からファンだという『宇宙戦艦ヤマト』から着想を得たもの。実はナンバーの「2199」も、ヤマトが地球を発進した年が2199年だったという設定から拝借したものだ。 「中学2年生の頃からテレビアニメの宇宙戦艦ヤマトを観て、松本零士さんの世界観から受けた影響は今もずっと残っています。特にメカの描写が好きで、本当はヤマトの計器類を再現してクルマにいっぱい付けたいところなんですけど、さすがにそれはやり過ぎでしょうね(笑)」

この「やり過ぎない」という感覚も、愛車のカスタマイズを楽しむ上で大切にしているもの。実は奥さんがそのお目付け役だそうで「それはやり過ぎ」とか「それ、ええやん」といった忌憚のない意見も普段から参考にしているそうだ。そして、実はそんな中でも一番会心の作品だと内心に秘めてきたのが、なんとリヤワイパーだ。 「リヤワイパーのステーって、どんな高級車でもグロス仕上げになってることってないんですよね。

だったらやってやろう!と思いついて、ザラザラの表面をサンドペーパーで落として、ウレタン塗装で塗って、あとはひたすら磨いていきました。そういう手間のかかる作業ほど好きで、やりたくなるんです。完成して付けちゃったらそれでもうお終いなので、じゃあ次は何やろうかなと、またクルマを眺めてアイデアを練るのも楽しいんです(笑)」

そんなこだわりはインテリアにも反映され、むしろ外装よりも手間暇をかけたカスタマイズがあちらこちらに施されている。シートの周囲を彩る赤のパイピングは純正だが、それと合わせるようにセンターコンソールやアームレスト、シフトレバーとハンドブレーキレバーのブーツなどに赤を追加。さらにセンターコンソールの周辺にはカーボン柄のシートを貼り、メッキモールも追加してスポーティな高級感を演出している。

ドアトリムにも同様にカーボン柄や赤のアクセントを加えたほか、インナーハンドルに赤いステッチが施されたレザー巻きのアクセサリーを装着。純正でそうなっていたと言われても違和感ないカスタマイズは、「目立たないように目立つ」をコンセプトにするオーナーさんの真骨頂と言えるだろう。

照れもあるのか、工夫して実現したであろうハンドワークを、あまり自分からアピールしようとはしないオーナーさん。おそらく「自己満足でやっていることだから、わざわざひと様に話すようなことじゃない」という考え方からそうされているのではないかと推察されるが、いやいやどうして、全体の統一感を重視したカスタマイズはハイレベルだ。

ちなみに、フロントサイドに宇宙戦艦ヤマトをモチーフに取り付けたという錨のエンブレム。実はもうひとつ別の意味があって、娘さんのお婿さんが海上自衛官なので、仕事の無事を祈る気持ちが込められているのだとか。

物言わずして、気持ちを込める。

ちょっと不器用な昭和生まれのオーナーさんは、誰よりも優しい心と、少年のような遊び心を合わせ持った、素敵なお父さんなのであった。

(文: 小林秀雄 / 撮影: 清水良太郎)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:ポルトヨーロッパ(和歌山県和歌山市毛見1527)

[GAZOO編集部]

MORIZO on the Road