ミニマムな相棒ダイハツ コペンを手に入れ、いつかはお遍路&ネコ活の旅へ

  • GAZOO愛車取材会の会場であるポルトヨーロッパで取材したダイハツ・コペンアルティメットエディションS (L880K)

    ダイハツ・コペン アルティメットエディションS(L880K)

『いつか2シーターのクルマに乗りたい』という気持ちはありながらも、自分にはまだ早いかなと、その機会を逃し続けてきたというオーナー。その背中を押してくれたのは、通勤路で毎日のようにすれ違う1台のクルマとそのオーナーさんの姿だったという。

「2シーターのクルマって、僕の中では自由な時間がある時に乗れるような、そんなちょっと贅沢なクルマかなと思っていたんです。自分もいつかはそういった愛車で走りたいなっていう思いというか、憧れはありましたね。そんな時、通勤路で自分と同じくらいの年齢のオーナーさんが運転する小豆色のコペンとすれ違うようになって、そんな景色を見ていたら、自分でも乗りたいなぁと思うようになりまして…」

クルマ関連の前職を定年退職後、その経験と知識を活かして、現在は大阪府にあるチューニングショップ『トライアル』で、車検やパーツ開発に関わるお仕事に就いているという。そんなプロフェッショナルが迎え入れたコペンの魅力とは。

「一番最初のクルマは父親のお下がりだったTE37レビンで、それからケンメリのスカイライン、そこから210とR30のスカイライン、途中でセドリックを挟んでR32型のスカイラインGT-Rを2台。ちょうど同時期に70と80のスープラにも乗って、現在はDVF型のインプレッサとダイハツ・ムーブを所有しています。この間まではGRヤリスを所有していたけれど手放してしまい、レースに出ようかと思ってダイハツ・エッセも持っていたんですが、それは身内に譲りました」と、その愛車遍歴も華やかだ。

コペンを購入しようと思い始める前には、ハコスカやケンメリなど、名車と呼ばれる国産旧車を所有したいという思いもあったという。

「いろいろ考えたのですが、旧車を所有したら外装やエンジンなど、レストアに費用もそれなりに掛かるだろうし、仕事の経験上からいっても、全て快調をキープしたまま長く乗り続けられるかなぁ? と、やっぱり不安はありました。その時期に、友人の90スープラに乗せてもらって長野のスカイラインミュージアムまで行ったんです。そこで名車の数々を見ていたら、やっぱり維持管理の問題もありますし…。それならば、自分でチョコチョコと乗り回せるクルマが良いなって思ったんです」

そうしてコペンを購入しようと決め、中古車屋さんを探し回ったり、周囲のクルマ仲間から情報を集めたりすることに。そんな中でも、いくつかのこだわりがあったという。一番の条件はボディカラーであった。

「黒かシルバーの個体を探しました。僕、乗っているクルマも黒ばかりだし、服装の上下も黒が多いんです。そこにワンポイントで赤を入れると、今の職場であるトライアルのイメージカラーである黒/赤と同じになるっていうのもありましたね(笑)」

また、コペンの中でも現行の2代目ではなく、初代モデルのL880K型というのもポイントだったという。
「ダイハツの軽自動車用エンジンは3気筒ばかりなんですが、このL880K型に使われているJB-GETエンジンだけは4気筒なんですよ。それにコペンって2シーターの中でもスポーツカーって感じがするけど、この丸いルックスがなんだか可愛いらしくて、それが好みでした」

こうして半年ほど前に購入したのが、黒光りするボディも凛々しい、ダイハツ・コペン アルティメットエディションS(L880K)のレザーパッケージだった。

「クルマ仲間からの情報で『愛知県に良い個体がある』と教えてもらったんです。なんでも、ボディは黒色でシートなどが総革張りの限定モデルだと。実際に見てみると、2010年式という年式にも関わらず程度が良くて、これだけ時が経っているのに外装もすごく綺麗なんですよ。その他にも、前オーナーさんがカスタムを施していた部分も自分の趣味とピッタリ合っていて、一目見て気に入りました。走行距離は10万キロくらいまでならと思っていたのですが、ちょっとハミ出た11万キロでしたが、メンテナンスがしっかりしていたという点と、もともと想定していたグレードよりも上級なものでしたので、このクルマに決めました。実際に、前オーナーさんのメンテナンスが良かったお陰か、アクセルを踏み込んだ時の加速感など、エンジンの調子も絶好調でしたね」

ちなみに、コペンと言えばオープンカーであることも大きな特徴のひとつ。だが、意外にもその点についてはあまり重要視していないという。

「この子より前に気に入って注文したコペンがあったんですけど、屋根を開けたら閉まらなくなり、修理するということでオイルポンプやいろいろ手を尽くしてくれたんですが、結局は直らなくて『このクルマを売るのは辞退させて欲しい』と、お店から言われたことがあったんです。だから今回は『閉まってさえいれば開かなくなっても良いですよ』と先に言っておいたんです。でも、この子はちゃんと動いてくれていますね。まぁ、晴れの日に何度か開けたことはあるけど、基本的に閉めて走っていますからね(笑)。動き出すと屋根からガタガタミシミシという音がするという症状はあったものの『指サックを入れたら治るよ』っていう情報を教えてもらって、試したら収まったので現在は快適です」

その他、購入してから自分で手を加えたところがあるかを伺ってみると、ステアリングとシフトノブを変更したという。
「僕は体が大きいんで、以前コペンに乗ったときに太ももが引っ掛かりそうで大丈夫かな? って思ったことがあったんです。けど、この子に乗ってみたら引っ掛かることはなかったんですが、純正のステアリングを少し小径のものに取り替えたら、さらに乗り降りがしやすくなりましたね。レザーシートのステッチやステアリングの赤に合わせて、シフトノブもTRD製に交換してみました」

足まわりはオーバーホール済みで乗り心地にも大満足。前オーナーが履かせていたホイールも気に入っているが、今後は自分好みのホイールに交換することも検討しているという。
何より、言葉の端々に出てくる『この子』という呼び方から、オーナーがこのコペンをとても可愛がっているということを感じ取ることができる。

「四国のお遍路巡りが22箇所くらいで止まってしまっているので、ゆくゆくは引退して自分の時間が取れるようになったら、コペンでゆっくり泊まりながら流して回ろうかなって思っているんです。それから、僕は猫が好きなので、全国の有名猫ちゃんにも会いに行ってみたいなと。ちなみに私のお気に入りは松山城の城主猫『さんじゅーろー』。この猫に会いに行くのが楽しみなんですよ」

いつもよりチョッピリ近い距離で微笑む奥様。そして、楽しそうに談笑しながらステアリングを握るオーナーさんの笑顔が思い浮かぶ。そんなコペンと紡ぐストーリーは、クルマ人生最大の贅沢なのではないだろうか。

(文: 西本尚恵 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:ポルトヨーロッパ(和歌山県和歌山市毛見1527)

[GAZOO編集部]

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