タフでワイルドな105系ランドクルーザーに夫婦で乗り込み西へ東へ
トヨタを代表するクロカン四駆のランドクルーザー。砂漠や荒野など「もしここでクルマが止まったら生命の危機」という過酷な環境にも圧倒的な悪路走破性と耐久性で応え、世界中から厚い信頼を置かれているキング・オブ・SUVだ。
現在の日本国内においては、現行モデルとして300系をラインナップ。さらに、2014年に期間限定で再販された70系が、23年に2度目となる再販売を開始した。両車の違いは多いが、それぞれのキャラクターを端的に物語るのがサスペンション形式である。
300系はフロントに独立懸架のコイルスプリング式ダブルウィッシュボーン、リヤにトレーリングリンク車軸式と呼ばれる3リンク+コイルスプリングのリジッドアクスルを採用。一方の70系は前後ともにリジッドアクスルとなり、フロントに3リンク+コイルスプリング、リヤにリーフスプリングを備える。
言うなれば、前者が乗用としての乗り心地を重視した高級路線、後者がオフロード性能を重視したヘビーデューティ路線となるが、その大きな分かれ目となったのが1998年に発売された100系である。100系はランクルの本分であるタフな実用性はそのままに、快適性や内装の豪華さも追求し世界中で大ヒット。ランクル=高級クロカンSUVというイメージを定着させる立役者となったモデルだ。
だが、あまり一般的には知られてはいないが、100系には俗に“105系”と呼ばれる派生モデルも存在する。主にオーストラリアを中心とした海外でのニーズに応えるために生産され、ボディが100系となる一方、パワートレインやサスペンションは、ひとつ前のモデルである80系を踏襲している。前後ともにコイルスプリングが備わるリジッドアクスルを採用し、見た目は100系の豪華さを、中身は80系の質実剛健さを兼ね備えた仕様となっているわけだ。
そんな珍しい105系のランドクルーザー(HZJ105)を愛車にし、日常のお買い物から車中泊まで、あらゆる用途に使っている生粋のランクルマニアが『hzj105』さんだ。
「以前は70系を2台、80系を1台乗り継いできました。順番的には新車で買った76(70系4ドア)、間に別のクルマを挟んでから中古で買った80、最後が74(70系2ドア)ですね。昔はエスクードやビッグホーン、ハイエース、デリカスペースギアなども所有してきましたけど、一度ランクルに乗ると、あまり他のクルマに乗りたくなくなります(笑)」
確かにランクル好きの人は、一途にランクルに乗り続けているイメージも強いが、道が悪いほど本領を発揮する絶大な信頼感を味わうと、なかなか他に目が行かなくなる気持ちになるのもわからないではない。あえてランクルの魅力を、ひと言で言うなら何ですか?と、hzj105さんに聞いてみた。
「ひと言ですか…(笑)。やっぱり、耐久性ですかね。80に乗っていた時なんですけど、家族で山に行った帰り、タイトな藪の中を走っていたら斜面にクルマが半分落ちちゃったんです。それで仲間にウィンチでレスキューしてもらったんですけど、フックが割れてしまって、自分が乗ったままひっくり返っちゃったんですよ」
「子供はまだ小さかったので、父親がクルマに乗ったまま一回転半して崖下に落ちちゃったもんだから、しばらくトラウマになったみたいですね(笑)。クルマも普通に考えれば、ほぼ廃車レベルと言っていいくらいだったんですけど、その80には愛着がありましたし、直せないわけではなかったので、頑張って直しました。80は買ってから足掛け14年くらい乗りましたけど、やっぱ頑丈なんだなって思いましたね」
その時トラウマを抱えたお子さんは、現在は23歳と20歳の立派な大人に成長。hzj105さんと奥さまは、とても成人した息子さんが2人いるようには見えないほど若々しいのだが、乗ったクルマがひっくり返って谷底に落ちたエピソードを笑って話せるhzj105さんの性格が、そうした印象を生む秘訣に違いない。
「それくらい80が気に入っていたので、一度74に乗り替えた後も、もう一度4ドアで、かつ前後4本コイルのランクルが欲しいなって思っていたんです。その時にヤフオクで今の105が出品されているのを見つけたんですけど、写真で見る限りかなりボロボロな状態でした。その分、相場よりは安かったですし、105にはずっと憧れていたので、どうしようかと悩んでいたところ、いつもお世話になっているリバーサイドガレージというランクル専門店が、面倒見てあげるからどうしても欲しいなら買いやと背中を押してくれたんです」
そうした経緯で、現在の愛車であるランドクルーザー105を手に入れたhzj105さん。いざ落札し、自分で積載車を運転して長野県まで取りに行ったものの「現車を見たら、やっぱりそのまま置いて帰ろうかと思いました(笑)」というほど、ボディの状態はかなり悪かったそうだ。
だが、約束通りリバーサイドガレージで徹底的なレストアを行ってもらい、サビや穴などはすべてキレイに補修。購入時から大きく切断されてしまっていたサイドシルも直され、新たにゴツいロックスライダーを取り付けることで、ボディの保護と乗り降りのしやすさを両立させた。
「ペイントは白黒で統一したかったので、ボディは元色と同じ白、ホイールは黒に塗ってもらいました。バンパーは半艶にして、少し見た目の質感を変えてあるのもこだわりです」
リバーサイドガレージの豊富なノウハウが注がれ、雪国の過酷な環境で劣化していた105のボディは、すっかりhzj105さん好みの仕上がりに。安心して乗れるよう、足まわりやブレーキのオーバーホールも行い、車高は購入時とほとんど変わらない7インチのリフトアップを実現している。
リヤが観音開きドアとなっているのが105系の特徴で、hzj105さんは荷室にベッドキットを取り付けて車中泊仕様にしている。100系は70系や80系と比べて中も広いので、夫婦2人でゴロンと横になっても広々しているそうだ。冬場に寒くないようにと、キャンピングカーではお馴染みのFFヒーターも装備した。
ヘッドライトやグリルを保護する目的で備わる、通称カンガルーバーがついたフロントバンパーは、オーストラリア仕様のトヨタ純正品。SAFARIシュノーケルとともに、クルマを購入した時から付いていたものだそうだが、いかにもオーストラリア仕様らしいルックスを生み出している。
また、助手席がベンチシート仕様になっているのも、国内仕様の100系にはない特徴。hzj105さんは、それを活かしつつ運転席のみRECAROシートに交換している。
エンジンは1HZ型の4.2リッター直6ディーゼルを搭載。105系はサブの燃料タンクも装備されており、合計で180Lもの軽油を入れておくことができる。hzj105さんは、これまでの整備の履歴がすぐに分かるように、日付と走行距離、交換したパーツの名称をヒューズボックスの蓋に記録してある。
手先が器用で、FFヒーターの取り付けも自分で行ったhzj105さんは、ある時思い立って100系のプラモを自分の105仕様に改造。バンパーや観音開きのリヤドアを再現し、1/24スケールのラジコンにマウントした。実車と並べると確かにそっくりな、世界に1台のオリジナルモデルカーまで作り出してしまった。
ルーフサイドにはARBのサイドオーニングを備えているが、昨今流行っている重装備のキャンプには興味がなく、「野営」と言った方がしっくり来るシンプルな外遊びを楽しんでいるそう。行き当たりばったりで気ままに出かけられる車中泊仕様にしているのは、普段忙しく働く奥さまを労う気持ちもあるそうだ。
「だいたい1ヶ月に1回くらいのペースで、2人の休みを合わせて出かけています。最近だと、伊勢神宮に行ったり、知多半島をドライブしたり。道が空いている夜のうちに出かけて、どこか適当なところで車中泊して、日中遊んだらまた夜のうちに帰るっていう感じです。実は今日も、この撮影が終わった後、串本とか勝浦方面を目指そうと思ってます(笑)」
実にアクティブなランクルライフを謳歌しているhzj105さん。日本国内で登録されている台数が、おそらく20台程度ではないかと言われている希少な105系で、今日も西へ東へ冒険に出かける。
(文: 小林秀雄 / 撮影: 清水良太郎)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:ポルトヨーロッパ(和歌山県和歌山市毛見1527)
[GAZOO編集部]
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