ドラテクをヴィッツでそしてサーキットで学ぶ。「いつかはレースエンジニアに」
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トヨタ・ヴィッツRS(NCP131型)
クルマ好きになったきっかけは、「ラリーやサンデーレースなどに参加していた父親の影響だ」と語る『さっしー』さん。
愛車のトヨタ・ヴィッツRS(NCP131型)はノーマルらしさをそのままに、鍛造ホイールやハイグリップタイプのタイヤ、フルバケットシートなどポイントを押さえたモディファイが行なわれるなど“正統スポーツ仕様”という雰囲気を漂わせている。
「実は父親がモータースポーツにハマっていたのは僕が生まれるずっと前で、当時のことは話で聞いただけ。物心ついた時にはフツーの軽自動車に乗っていましたし。でも、なぜか僕もクルマやバイクに興味を持つようになって、学生の頃にはレーシングドライバーになることを夢見ていた時期もありました。とは言え、現実はなかなか厳しくて、そこに辿り着くための道を探すこともできず、せめてクルマに関係した仕事に携わりたくて、地元のディーラーに就職しました」
こうして普段は一般車両の整備に励みながら、あくまでも趣味としてモータースポーツを楽しむことを決めたさっしーさん。そのベース車として、最初に選んだクルマは扱い易いボディサイズを持つヴィッツの1.3リッターモデル(NSP130型)。当初はマニュアル車を探していたものの、条件に見合った物件が見つからず、やむなくCVT車を選ぶことに。
それでもサスペンションやタイヤなど各部に手を加え、熊本県大津町のHSR九州で待望のサーキットデビューを果たす。最初のうちはライン取りやブレーキングのポイントなど、コースに慣れるだけでも精一杯だったものの、場数踏むうちにドライビングのスキルは着実に上達。タイムもみるみる向上を見せる反面、CVTで走り続けることへの限界も感じ始めるようになった。
「ステアリングの操作に集中できるというメリットはあるけど、いかんせん、ここ一発という時の反応がイマイチ。まぁ、そもそもスポーツ走行向きじゃないことは分かっていたんですけどネ。日頃からパーツの手配や足まわりのセッティングでお世話になっている地元カーショップのスタッフさんからも『ここから先のことを考えるとマニュアル車に乗り換えた方がパーツの選択肢が増えるし、費用的にも抑えられるはず』と、アドバイスを受けました。そこでネットで物件を探し始めたところ、数ヵ月後に福岡の販売店でマニュアルの前期型ヴィッツRSが見つかりました。ちなみにGAZOOの中古車サイト内の掲載車です(笑)」
新たな愛車となったヴィッツRSは、1.3リッター車に対して、パワーが14ps高い1.5リッターのエンジンや、4輪ディスクブレーキが採用されたハイスペックグレードだ。
同系統のクルマということで、タイヤとホイール、車高調整式サスペンションの他、一部のパーツはCVT車で使用していたものを移植することで、チューニングのコストを抑えることにも繋がったという。
制動系では、スリット加工が施されたプロジェクトμ製のディスクローターやステンメッシュブレーキホース、駆動系ではORC製強化クラッチとクスコ製の1.5ウェイLSDを装着、排気系にはトラスト製のスポーツマフラーを追加するなど、各部に強化品やサーキット走行向けの部品を投入。
外観はヴィッツG’s用のリヤバンパーやテールランプに加え、ルーフエンドには友人から譲り受けたスポイラーを装着。心機一転を図ると共に、これまでのHSR九州に加え、より本格的なコース規模を誇る大分県のオートポリスにもチャレンジ。さらなるステップアップに取り組むこととなった。
「通勤や街乗りにも使うのでロールケージの取り付けは見送ったり、イイ音で音楽を聴くためにスピーカーを換えたりと、走行性能向上のためではない要素も混ざっていますが、少しずつ自分が理想とする仕様に仕上げてきました。やっぱりマニュアルミッションは自分でクルマを操っている感覚がダイレクトに体感できて楽しいですね」
「今のところHSR九州でのベストタイムは1分24秒台半ば。オートポリスはなかなか難しくて2分29秒台がやっと。プロのレーシングドライバーの中には2分22秒台という異次元のタイムで走っている方もいますが、さすがにそれは無理ですね…。今年は久しぶりに新品のアドバンA050タイヤを導入する予定なので、2分27秒台に入れることを当面の目標として頑張りたいと思います」
1.3リッターのヴィッツから乗り換えて以来、現在まで5年が経過。タイムアタック以外にも、カーショップが主催する耐久レースや、GRガレージ熊本の主催による走行会にも参加しているそうで、フロントグリルやバンパーにびっしりと刻まれた跳ね石の跡が、これまでの走り込みの成果を物語っている。
さらに運転の基本操作をトレーニングするためにと、佐賀県のレーシングカート場にも定期的に通うなど、人一倍向上心旺盛なさっしーさん。ちなみに、純粋にタイムの速さを追求するならGRヤリスやスイフトスポーツなど、より高いパフォーマンスを秘めたモデルも存在するが、乗り換える気持ちはまったく無い様子である。
「負けん気が強いんです。もちろん、価格が高くて手が出ないということもあるけど、パワーがあって速いのは当たり前。僕はパワーが少ないクルマをいかに速く走らせるか、という点にこだわっています。『頭文字D』や『MFゴースト』もそうじゃないですか(笑)。ヴィッツはたった100psチョットだけど、頑張ればそれなりのタイムが狙えるし、ウエット路面ならば2リッタークラスのクルマを追い回すこともできますからね」
「2年前、タイヤが冷えていたことが原因でコース上でスピンしてしまったことがありましたが、それ以外はクラッシュや大きなトラブルは無いです。けど、さすがに初度登録が2011年ということでエンジンマウントの劣化による振動や、ブッシュのヤレも感じられるようになってきました。今後はどこかのタイミングで根本的なメンテナンスが必要になると思いますが、まだまだこのクルマで頑張りますヨ」
コースを走るだけでなく、スーパーGTやスーパー耐久、スーパーフォーミュラなど、オートポリスで行なわれるビッグイベントには、ほぼ欠かさず足を運び、もうひとつの趣味である写真撮影も楽しんでいるというさっしーさん。
応援しているドライバーは野尻智紀選手(スーパーGT、スーパーフォーミュラ)、推しレースアンバサダーは奥田千尋さんなどなど、とにかくモータースポーツの世界が好きでたまらないといったご様子だ。
「プロカメラマンみたいな機材は持ってないけど、自分だけの撮影ポジションを探しまわったり、アングルを工夫したりとシャッターチャンスで勝負しています。これも負けん気の表れでしょうか。やっぱりサーキットに行くとテンションは上がりますね。仕事は日々勉強中の身なのでエラそうなことは言えませんが、これからもっともっとクルマに関する知識や経験を積んで、いつの日かエンジニアとしてレースの現場に関わることができたら最高ですね」
控えめな言葉の中にも、モータースポーツシーンに対する真っ直ぐな想いを感じさせるさっしーさん。持ち前の負けん気の強さを存分に活かして、ぜひレースエンジニアへの夢を叶えて下さい!
(文: 高橋陽介 / 撮影: 西野キヨシ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:三池炭鉱 万田坑(熊本県荒尾市原万田200-2)
[GAZOO編集部]
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