我が家のヴィッツRSは、同じ型&同じ色の3台目。ジムカーナと日常を駆け抜ける頼もしい相棒!

  • GAZOO愛車取材会の会場であるジーライオンミュージアムで取材したトヨタ・ヴィッツRS(NCP13)

    トヨタ・ヴィッツRS(NCP13)



愛車を買い替えるタイミングが訪れた時、それまで乗っていたクルマが気に入っていたとしたら、また同じモデルをリピートしたり、後継モデルを選んだりする人は少なくないだろう。しかし、例えばボディカラーやグレードなどの仕様までまったく同じ個体に買い替えるいう人は、どれくらい存在するだろうか?

ここで紹介する『もとやん』さんは、型式もボディカラーも同じ、トヨタ・初代ヴィッツRS(NCP13型)の後期型をなんと3台も乗り継ぎ、現在も街乗りとジムカーナ競技の兼用として楽しんでいるというオーナーさんだ。

彼がこの仕様のヴィッツから乗り換えない理由は、大きく分けると3つある。
ひとつ目は、見た目のデザインが気に入っているそうで「コンパクトな3ドアが好きなことと、この初期型後期のフロントとリヤのスタイルがすごく好きなんですよ。特にフロントのグリルの下の部分の形が気に入っているんです。それにこのガンメタの色も好きなんですよ」と、ベタ惚れのご様子。

そして2つ目の理由は、もとやんさんの趣味であるジムカーナ競技に向いているという点である。

「このヴィッツは修繕部品が手に入りやすく、メンテナンスがしやすいんです。というのも、クルマは軽いのに、以前のセリカなど、2リッタークラスのクルマにも使えるブレーキパッドが流用できますし、兄弟車種のプラッツや同時期の他のヴィッツの部品も流用できるところが良いんです。それに、初期型ヴィッツには5ドアモデルもあるんですが、3ドアの方が軽量なので、そんなところも競技向きでして」

さらに3つ目の理由が、このクルマは奥様が買い物などで普段から愛用していて、そのコンパクトさが買い物などの街乗り用として、使い勝手が良いからだという。奥様的には本当は5ドアの方が良いそうだが、そこは“競技用としても使う”ということで、3ドアで我慢してもらっているそうだ。

見た目の好み・ジムカーナ競技向き・街乗り向きというこれらの理由から、この仕様の初期型ヴィッツを3台乗り継いできている。となると、気になるのはヴィッツに乗り始める前はどんなクルマに乗ってきたのか、そしてこのクルマを乗り続ける理由でもある、ジムカーナをなぜ楽しむようになったのかという点だ。

  • (写真提供:ご本人さま)

小さな頃からクルマ好きだったというもとやんさんが、運転免許を取得して最初に乗ったのはトヨタ・カローラレビン(AE85型)。ジムカーナ競技を始めたのも、このレビンに乗っている時だった。

「学生の時にクルマが欲しくて、その頃から競技向きの車種が良いなと思っていました。そこでアルバイトして買ったのが、当時手頃な価格だったAE85のカローラレビンでした。本当はAE86が欲しかったんですけどね。僕はモータースポーツに興味があったので、20代の時にJAFのライセンスを取得して、“街乗りのクルマで、リスクが少なく楽しめるジムカーナ競技だったらできるかな?”と思って始めたんです。そんなアプローチが自分に合っていたみたいで、楽しかったですね」

  • (写真提供:ご本人さま)

こうしてジムカーナ競技に目覚め、その後24歳で結婚したもとやんさん。AE85がエンジン不調に陥ったのを機に『子供が生まれるから』と、4ドアハードトップのカローラセレスに乗り換えた。そしてジムカーナは辞めたのかと思いきや…。

「この時も、本当はランサーやインプレッサが欲しかったんですけど、1.6リッタークラスが買える程度の予算しかなくて、カローラセレスにしたんです。ジムカーナの方は、楽しくて辞められず、このセレスで続けていました。まぁ、当時僕が出場していたA2クラスは、CR-Xやシビック、ミラージュの全盛期。セレスでは勝てるはずもなかったんですけど、楽しんでいました。ちなみに、このクルマではちょっとだけラリーにも挑戦したんですよ」

ファミリーカーとして買ったはずのクルマでも、ジムカーナにハマっていたもとやんさんだが、2人目のお子様ができたことを機にマツダ・MPVを増車。しばらくは競技用のセレスとMPVの2台体制で、35歳までジムカーナを続けていた。しかし、お子様の小学校入学を機に、競技から離れることにしたそうだ。

それから10年近くはMPVで過ごしていたが、モータースポーツ好きに育った息子さんが運転免許を取得。さらに、JAFの公式競技に参加できる『国内B級ライセンス』まで取得。そうして競技用の車両を買うことになり、10年前に購入したのが1台目の初代ヴィッツRSだったというわけだ。

  • (写真提供:ご本人さま)

「手頃な値段でジムカーナ競技を楽しめるクルマということで、条件にマッチしていた初代ヴィッツRSの3ドアハッチバックを購入したんです。競技することを前提にして、中古パーツを集めてジムカーナ仕様を作りました。この時、息子はまだ学生だったので、このヴィッツ1台でダブルエントリーをして、『親子対決』をしていたんですが、面白かったですよ~! 息子が始めたばかりの頃は、父ちゃん自慢げにサイドターンとかをカマしまして『そんなことができるのか!?』と驚かれたりしながらネ。懐かしいなぁ」と、夢中で話すもとやんさんは、とても幸せそうだ。

「息子も面白いから続けているんだろうと思います。時々息子が『これに乗ったら父ちゃんに勝つで』と言いますが、確かに若いのでシフトアップ等の動作も速いから、その差だけでも負けるなと…。同じクルマに乗ったらもうダメでしょうね(苦笑)」
ちなみに、そんな息子さんは現在、ZC33S型のスイフトスポーツを駆って、本格的にジムカーナ競技に参戦。昨年は地区戦でシリーズチャンピオンになるほどの腕前に成長しているという。

ちょっとだけ悔しそうなもとやんさんだったが、そんな息子さんの成長はきっと誇らしいに違いない。そして、復活して10年経った現在も、ジムカーナを続けている理由を改めて伺うと…。

「まずクラッシュするリスクが少ないですよね。ちょっとだけカジったラリーは、リスクはあるしお金も掛かる。ロールケージやサイドバーも装着しなくちゃいけないなど、各所の“レギュレーション”を考えると無理だな、と。サイドバー付きのクルマを、カミさんに運転させるわけにはいかんのですよ。それとジムカーナの良いところは、最初にコースを覚えるための“完熟歩行”でコース歩くことになるので健康的!(笑)。それに複雑なコースを覚えるのが頭の体操になりますし、サイドターンとかが気持ち良く決まると楽しいじゃないですか。だから続けている感じですね!」

もとやんさんが初代ヴィッツを最初に選んだ理由はジムカーナ競技車両にちょうどよかったからだと判明したが、それ以降2回乗り換えた理由も伺ってみた。
「1台目は息子が交通事故でぶつけて壊して、2台目は僕が普段と違うハイグリップタイヤ装着クラスに挑戦したら、いつもよりタイヤが食いすぎて競技中に横転させてしまったんです」

そして、次のクルマを探すことになったもとやんさんは『やっぱりこのクルマが好きだから』と、同じクルマを探すことを決意。壊れたクルマは“部品取り用”として保管しておいて、再びヴィッツRS探し始めたところ、神奈川県で見つかったという。

こうして手に入れたのが現在の愛機、2003年式の初代ヴィッツ後期のRSである。ただ、ルーフの塗装の剥げが酷かったそうで、塗装屋さんで見積もりを取ったところ、20~30万円近くかかることが判明。『クルマが24万円だったので“屋根の色”の方が高くなるし、だったら自分でやるか』と、DIY塗装で補修したのだという。

そしてそんな彼の愛車は、ジムカーナ車両らしく、スポンサーのステッカーでやや派手な出で立ちとなっている。ここで思い出すのが、このヴィッツは奥様の買い物クルマでもあるということだ。派手さが得意ではないという奥さん的にNGなのでは? と思っていたが、意外な返答が返ってきた。

「一番大きな“Project μ”ステッカーは、カミさん的には可愛らしい色みたいで『この色なら良いよ』と言ってくれたんです。僕にとっては初めてサポートして下さったメーカーでもあるので、カミさん的にもOKやし、派手めにしたくて自作で大きいのを作ってみました。で、他のステッカーは『タイヤをサポートしてもらうため』だとか『スポンサーの意向で貼っているもので、資金を有効活用するために必要』などと説得しています(笑)」

どうやら奥様にとって、エメラルドグリーンの丸文字ロゴは、カワイイ模様という認識が功を奏している様子。また、各種ステッカー以外にも、奥様用でもあるシートのチョイスなども良く考えられている。

「カミさんは身長が150cmくらいで、フルバケットシートだと角度も変えられないし、穴蔵に収まっているという感じになってしまうんです。だからリクライニング可能なセミバケットシートにして、座布団を置いてシートポジションを調整しているんですよ」

そして、もとやんさんのモータースポーツ好きは、ご家族みんなに影響しているようで、最近では娘さんと一緒にラリーにも参戦したのだとか。

「お世話になっているショップさんのアクア(AT車)をお借りして、娘がコ・ドライバー、僕がドライバーで参戦したんです。街乗りで、娘のコ・ドラの練習としてペースノートを作らせて、それを読んで僕に伝えるという練習をしました。ただ“本番でミスる”というお父ちゃんの悪いクセが、娘にも伝播していました(笑)。それでも楽しかったですよ! とても良い想い出です」と、嬉しそうに目を細めた。

また、この日は“想い出の品”として、沢山のヴィッツの『チョロQコレクション』も持参して下さった。すべてのモデルに微妙に違いがあり、ひとつとして同じものはないそうだが、自身のヴィッツとまったく同じ仕様のものが無いというのがチョッピリ残念なのだとか。
そんなもとやんさんに今後について伺うと…
「22年間乗っているMPVとの2台持ちなのですが、仮に乗り換えるとしたらMPVの方で、このヴィッツは競技車両として、乗れるまで乗り続けていきたいですね。カミさんには『競技で壊したらもう辞めてね』と言われていますが(笑)。今時のロードスターや息子が乗っているスイフトとかも結構速いんですけど、なんだか乗り換えようという気がしないナ。このヴィッツで遊んでいるのが、僕は一番楽しいんです」

同じ色、同じ仕様の初代ヴィッツRSを3台乗ってきたこだわり、そして情熱は、他のクルマでは代用できないものだろう。

これからも是非、このヴィッツに乗り続けながら、ご家族と共にモータースポーツライフを満喫していってほしい。そう願わずにはいられなかった。

(文: 西本尚恵 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:ジーライオンミュージアム&赤レンガ倉庫横広場 (大阪府大阪市港区海岸通2-6)

[GAZOO編集部]

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