小学生の頃から貯金して手に入れたヴィッツRS G'sで愛車ライフのスタート地点に
最近は「クルマが欲しい」と思ったら、現金一括やオートローンといった昔ながらの自己所有型のほかにも、残価設定ローンやカーリース、さらにはカーシェアなどさまざまな選択肢が存在する。
リーズナブルに新車に乗りたい、必要な時だけ使いたい、できるだけ維持費をかけたくないなど、自分のライフスタイルに合わせてクルマと付き合うことができる好環境が整っているのは最近のトレンドと言えるだろう。
いっぽうで、自分だけの愛車を所有して、長く愛情を注ぎ続けたいと考える人もまだまだ多いはずだ。
そんな自分だけの愛車を目指して小学生から貯金し続け、大学進学とともに2012年式トヨタ・ヴィッツRS G’s(NCP131)を手に入れたのが波多江さんだ。
「小学生の時に86がデビューしたんですよ。それを見たらクルマってカッコいいなって盛り上がっちゃって。幼い頃からクルマが大好きだったのですが『大きくなったら自分の好きなクルマに乗るんだ!』って、具体的な目標ができたという感じですね。そこからお年玉とかお小遣いとか、高校生の頃はバイトも頑張って、将来の愛車に向けて貯金するようになったんです。高校を卒業して大学に入学する頃には免許代+クルマ代くらいは貯まったので、入学とともに初めての愛車としてこのヴィッツを購入したんです」
幼い頃からクルマが好きだったという人は多くいるが、小学生の頃から将来の愛車のために貯金を続けていたという人は、なかなか稀有な存在と言えるのではないだろうか。そして、そんな長年の努力の結晶となるヴィッツは、波多江さんにとって大切な宝物である。
1999年に誕生したトヨタ・ヴィッツは、リーズナブルなリッターカーというシティコミューター的キャラクターを持ついっぽうで、スポーティ仕様のRSを用意するグレード体系など昭和を代表するホットハッチ『スターレット』の後継車となる存在でもあった。歴代モデルではワンメイクレースも盛んに開催されるなどモータースポーツの入門カーとしても親しまれ、単なる普及車とは違った新たな価値観を築いたモデルである。
波多江さんの乗るヴィッツはシリーズ3世代目の前期モデルで、5MTが搭載されたスポーティグレード『RS』のなかでも、専用の外装デザインやサスペンションチューニングが施された『G’s』である。「MTでスポーティな走りを楽しみたい」という波多江さんにとっては、まさに思い描いた通りの愛車というわけだ。
搭載されている直列4気筒、1.5リッターの1NZ-FEエンジンは、乗用車から商用車まで幅広い車種に搭載されるほど信頼性が高く、燃費や耐久性といった面でもメリットは大きい。特に懐に余裕がない学生ならばこの経済性は見逃せず、そのうえで乗って楽しみたいという欲求までも満たしてくれるだろう。
いっぽうで、現在の走行距離は11万キロ弱ということで、前回の車検ではブレーキ周りのリフレッシュやスパークプラグの交換など、予想以上に整備と部品代が掛かってしまったのだとか。その分は両親からお金を借りて賄ったのだが、本当なら自分でしっかりと支払えるように貯めておくべきだったと反省したという。
「今はアルバイトでガソリン代や維持費を賄っているんですが、やっぱりガソリン代は大きな出費ですね。地元の愛知県と比べると富山県はガソリンが高く、燃費が悪いハイパワー車とかには乗れないです。もちろんそういったクルマにも憧れはありますが、現状、乗り続けていくことを考えるとランニングコストの事も考えなくちゃいけないですしね」
そんな波多江さんの現在の愛車ライフはというと、通学ではクルマを使用していないので、ドライブや買い物、アルバイトへの通勤というのが主な用途。大学の友人とのドライブに出かける時も基本的には波多江さんのヴィッツが出動するという。運転が好きなのでみんなでワイワイ過ごす空間は楽しめるものの、大学の友人はクルマに興味がないため、クルマ関連の話が盛り上がらないのがちょっと残念なんだとか。
やはり友人のクルマを介していろんな車種を体験してみたり、クルマ談議を楽しんだりという経験もしてみたい、というのは現在の切実な願いでもあるそうだ。
そんな波多江さんがこのヴィッツを選んだ最大の理由が5MTの設定。お父さんが長らくランエボⅤに乗り続けているというだけに『クルマはMTであることが条件』と、幼い頃から刷り込まれているのだとか。今後はMT車という選択肢が極端に少なくなる可能性も考慮して、乗れるうちに乗っておきたかったというのが本心でもある。
また、5MTという設定だけでなく、G’s専用のバンパーデザインやホイールといった装備も波多江さんお気に入りのポイント。
購入したタイミングではGRヤリスもデビューしており、後期モデルのヴィッツGRスポーツなども中古市場に流れはじめていた頃。それらのモデルは予算的に手が届かなかったのだが、結果としてこの派手すぎないスタイリングに愛着が深まり、カスタマイズを加えなくても飽きずに長く乗れることにも繋がっているそうだ。
ただし、テールランプはクリア化された後期モデルの方が好みのようで、メーターと合わせて後期仕様にアップデートをしたいと熟考中。細かいポイントを変更することで、愛車のイメージを自分流に仕上げていく予定なのだとか。
また、2021年に手に入れた段階で新車登録から9年が経過していたこともあって、ステアリングなどにも擦れが目立っていた。本来なら社外ステアリングやレザー張り替えなどのリペアを行ないたいところだが、その分の予算があればガソリン代として使いたいというのは乗って楽しむ派だからこそ。今後、お金をしっかりとかけられるようになったら対策を考えるということで、現状キープとなっているのだ。
「ノーマルのスタイリングも好きなんですが、カスタムとかリペアとか、実はやりたいことはたくさんありますね。けれど例えば“無闇にマフラー交換する”とかではなく、どうせ費用をかけるわけですから、見た目にも性能的にも納得がいくように、良く考えながらカスタマイズしていきたいですね。もちろん擦れてしまったステアリングや、この辺の年式では定番のヘッドライトの黄ばみなどもしっかり修復して、新車みたいなコンディションに蘇らせるのが目標です」
「現在は大学3年生なので、就職活動がはじまってあまりアルバイトに入れないんです。駐車場代とか保険代など走らせていなくてもお金がかかってしまうので、生活はカツカツですよ。でも好きなクルマを存分に楽しめているので、あまり負担には感じていません。就職が決まれば4年生からはアルバイトもバリバリ入れますので、もう少し余裕ができるんじゃないかな。それまではもう少し倹約を頑張ろうと思います」
ちなみに現在のアルバイトは、中古車店でSNSを担当しているそうだ。クルマが好きだからこそ、クルマにまつわる仕事を選び、日々色々なクルマに接することで知識を深めている最中である。そんな経験を基に考えるからこそ、ヴィッツのカスタマイズプランはより現実的なものになっていくことだろう。
「乗りはじめて2年くらい経過していますが、まだまだ飽きることはありません。社会人になったら他の車種にも目移りするかもしれませんが、初めて自分で手にいれたこのヴィッツはずっと手元に残しておきたいですね」
誰しも初めて手にいれた愛車は思い出深いはず。そんなクルマが小学生時代から貯金し続けた努力の結晶ならなおさらだ。波多江さんとヴィッツの時間はまだ始まったばかりで、これから先も様々な人やクルマと出会うことでさらに理想のイメージが広がり、ヴィッツに対する愛情はさらに深まっていくだろう。
そして、これから長く続いていく愛車ライフにおいて、ヴィッツとの思い出は波多江さんにとってかけがえのない宝物であり続けるはずだ。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 平野 陽)
- 許可を得て取材を行っています
- 取材場所:海王丸パーク(富山県射水市海王町8)
[GAZOO編集部]
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