目指すは走行50万km! 『漢』を感じるランクル70のSTDグレードが最高です

  • GAZOO愛車取材会の会場であるジーライオンミュージアムで取材したトヨタ・ランドクルーザ70

    トヨタ・ランドクルーザ70


トヨタランドクルーザーと言えば、『堅牢さ』や『悪路走破性』、そして『信頼性』といった強靭なスペックが魅力のブランド。そんなヘビーデューティーなワークホースは、トヨタが世界に誇る本格的なクロスカントリー車である。

一方で、100系、200系、300系と呼ばれる近年のランクルは、豪華な装備や洗練されたラグジュアリーな仕立てで、堅牢さや悪路走破性を求めるユーザーだけでなく、アウトドアライフを中心に楽しむオーナーにも人気となっている。

そんな数々のランクルがラインアップされる中で、ベーシックで質実剛健なところが魅力なのが70系のランクルである。

「STD(スタンダード)グレードならではのシンプルさがボクの中ではオシャレなんです」と、トラッドスタイルをこよなく愛するランクル70オーナーが、今回ご紹介する『りょうちゃん』さん(以下:りょうさん)だ。

りょうさんとこのランクル70との出会いは偶然だった。今から14年前となる2010年、りょうさんが29歳頃の出来事だったという。

「実はこのクルマ、近所のクルマ屋さんに解体前提の廃車として放っておかれていたものなんです。ちょっと可哀想やったし、子供の頃からこの2ドア仕様のランクル70のチョロQを持っていて、ずっと乗りたいなと思っていたから、このクルマを見つけた時に『これやん!』って。色もこの色が好きだったので『これはもう2度と出会えんかもなぁ』と運命を感じて、買ってきちゃいました。二束三文の金額で申し訳なかったんで、それまで乗っていたジムニーを替わりに手放してきました(笑)」

りょうさんが購入されたのは、1990年式のランドクルーザー70(PZJ70V)のショートモデル。搭載されるエンジンは、3.5リッターの直列5気筒の1PZ型ディーゼルエンジンで、115ps/23.5kgmを発揮。グレートはLXとSTDが用意されている中で、そのエントリーモデルにあたるのが『STDグレード』である。

70系のランクルショートは、シンプルな構造ながらも軽くて丈夫。そしてオフロードでの高い走破性にも定評があるモデルだ。国内では1984年の発売当初から商業車として、また世界各国では、ライフラインの巡回警備や医療関係など、命に関わるような場面でも活躍しているという頼もしいクルマ。

日本では、一度は販売が終了してしまった70系だったが、その間も海外輸出向けには製造が続けられていた。そして2023年に、再び国内の現行モデルとして正規ラインアップに復活したという真の実力モデルでもある。

もともとクルマ好きだったというりょうさんは、このランクル70に乗る前の20代の愛車はずっとジムニーで、このランクル70が2代目の愛車となる。ちなみに、初の愛車としてジムニーを選んだのは。「当時は安かったことと、普通の軽自動車よりもカッコ良いですし、キャンプもしますから」と、実用面とデザイン面両方気に入っていたとのこと。

そういった好みからすると、ランクル70に惹かれたというのも自然流れ。しかも、子供の頃から乗りたいと思っていた一台だったというのだから、出会った以上、購入するのは必然だったのかもしれない。

「初年度登録が1990年なので、購入当時でもすでに20年落ちだったんですけど、走行距離はわずか4万kmで極上やったんです。前のオーナーさんはおじいちゃんだったみたいで、恐らく古くなったので手放したんでしょうね。買ってからすぐに冷却水漏れしていた部分などを修理して、ラジエターと燃料ポンプ、クラッチといった消耗品も交換したので、今はめちゃくちゃ快適ですよ。エアコンだってガンガン効きます。視界も高いし最高ですね!」

購入時に4万kmだった走行距離は、15年経った取材日には27万9958kmに達していた。りょうさんによれば、和歌山県でクルマがないと生活できない環境に住んでいたことがあり、通勤やデートなど日常の足としてはもちろん、休みの日にはスキーやキャンプ、趣味の自転車競技で遠征することも多く、必然的に距離が延びていったのだという。

もはや、カーライフの相棒として欠かせない存在となっているランクル70だが、りょうさんは愛車のどんなところが特に気に入っているのだろうか。

「デザイン面では、このプレスラインがめっちゃ綺麗やなと思うんですよ。商業車やのに、なんでこんなデザインしているんやろみたいな。開発した人は絶対にセンス良いでしょうね。250系のランクルにもこのプレスラインが再現されていますしね。それと、この2ドアショートの間延びしていない感じが好きなんです」

「あとは、やっぱり内装の廉価版特有のシンプルさですね。シートは飾り気のないビニール製だし、屋根の梁とかも商業版と同じ、インパネ周りも豪華な加飾はなく質素でシンプル。そんな『ザ・働くクルマ』って感じが好きなんですよ。だから、ボクにとってはSTDグレードの方がオシャレなんです。まさしく質実剛健、軍用車みたいな無骨な感じで、ひと言で表すなら『漢』。例えば街中で、快適でデザインも洗練されている現行のランクルに横に並ばれても、ボクの中では『違うクルマ』なので、特に意識することすらないですね(笑)」

「そして、荷物がたくさん積めるんです。後ろの荷室には、キャンプ用品や自転車用グッズ、親父をどこか連れて行く時の歩行器だったり。あと、車高は高いのですが、ステップがあるので両親は逆に車高が低いクルマより乗り降りしやすいみたいです。また、リッター11kmくらいは走ってくれるので、一回の給油で1000km弱も走ってくれるのも良いですね。それとパートタイム4WDというのも気に入っています。普段はFRで走っていますが、雪の日やウィンチを稼働させるような時は、4駆に切り替えて本領を発揮してくれます」

では、逆に不便な点はないのか気になったので伺ったところ『集中ドアロックがない』『ディーゼル規制で走れないところがある』『車重の関係で立体駐車場に入れない』など、いくつか挙げてくれたが、りょうさんにとってはそんなネガ要素も含めて、このランクルが可愛いくて仕方がない様子だ。

いくらヘビーデューティーをウリにしているランクルとは言え、初年度登録から35年が経過している旧車であることには変わりない。そして総走行距離が23万kmとなると、やはり気になるのはメンテナンスの状況だ。話を伺うと、やはりそれなりの苦労はしているようで…?

「オイル交換は5000kmに一回、トヨタのオイルチャージサービスを利用しています。ほぼ自分でやるのと変わらないくらい安い。というのもこのクルマ、エンジンオイルが10リットルも入るんですよ。最初は自分でやってたんですけど、オイル廃棄用のトレイも差し替えなあかんのでドロドロになるやないですか。そんなこともあって、今ではお店でやってもらっています。あと、やっぱりサビは出てきますね。フレームやシャーシは車検の時に黒く塗ってもらったり、ボディも錆びてあかんなと思ったところは切り取って、直してもらっています」

「洗車はマメにしていますし、タイヤ交換もしっかりしています。ほら、古いクルマって、ちょくちょく綺麗にしとかんと、全てがボロくなるでしょう。ちなみにビニール製のシートだって貼り直してますしネ。STDグレードを維持するのに気を遣ってますわ(笑)」

日頃から消耗品の交換や洗車などをこまめにしっかり行っているからこそ、今も快調に走り続けられているというわけだ。そんなりょうさん、ここ最近は主に自転車競技の遠征で使うことが多いのだという。

  • (写真提供:ご本人さま)

「ボクはオートバイも好きで、休みの日はそっちに乗ることが多いので、このクルマは自転車レースの遠征などに使うことが多いですね。マウンテンバイクを後ろのキャリアに積んで出かけ、遠征先でレースをしています。ジムニーに乗っていた10年近くは自転車レースをやめていたんですけど、このクルマにしたことでレースに復活できました」

そんな近況を聞きながら、『この愛車、まだまだりょうさんの元で活躍しそうだな』と思いつつ、今後についても伺うと、案の定「とりあえず50万kmを目指したい。あとはできるだけノーマルを維持していきたいですね」との返答が。なんでもランクル70は、モデル違いでも流用パーツが世界中から出るため、フロントフェイス関連のパーツ以外は手に入りやすいのだという。

最後に“この愛車に名前をつけよう”という話になり、ウンウン悩んでいたりょうさん。「質実剛健でまさに『漢』のクルマですね」と力説していたし、強そうな名前になるかと思いきや…『とうふ』と命名。
「白くて四角いから」と、説明しながら愛おしそうに愛車を眺めていた姿が、とても微笑ましかった。

(文: 西本尚恵 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:ジーライオンミュージアム&赤レンガ倉庫横広場 (大阪府大阪市港区海岸通2-6)

[GAZOO編集部]