長距離を気持ち良く、楽しく走れるアベンシスワゴンに陶酔するカーライフ
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トヨタ・アベンシスワゴン(ZRT272W型)
運転が好きな人ほど、クルマとの対話を楽しむシチュエーションやクルマの走らせ方に、その人なりのこだわりがあるものだ。『コーナーをいかに気持ちよく曲がれるかが一番!』というコーナリング重視派もいれば、エコランを徹底して燃費の自己記録を更新することに無類の喜びを感じるという人もいるだろう。
2013年式のトヨタ・アベンシスワゴン(ZRT272W型)に乗る『tysaab』さんはというと、長距離をいかに気持ち良く、楽しく走ることができるかに重きを置くロングツーリング派だ。長い旅路を通してクルマから伝わる情報を五感で味わいながら、クルマへの理解を深めていくことに楽しみを見出している。
「私は物心がついた時からクルマが好きで、絵本の代わりにクルマのカタログや雑誌を読みあさっているような子供でした。運転免許を取ってからは一日中運転していても苦にならないほどの運転好きになり、学生時代からよくレンタカーを借りるようになって、最低でも500kmは走っていました。あくまで運転することが目的なので、ひとつの趣味と言えるかもしれません」
tysaabさんにとってレンタカーとは、必要に迫られて借りるものではなく、あのクルマに乗ってみたいと目をつけたモデルの品定めに利用するツールのようなもの。
これまで数えきれないほどのレンタカーを運転してきたそうだが、地元である大阪と岡山を往復する西ルート、奈良を経由して名阪国道の亀山まで行って戻ってくる東ルートなど、自分なりにクルマの性能をチェックするポイントを設けた、お気に入りコースを複数設定しているそうだ。
そんなtysaabさんが、初めて購入したマイカーはトヨタのアルテッツァ(SXE10)であった。2.0リッター直列4気筒の3S-GEエンジンを搭載した『RS200』の6速MT車で、購入時にローダウン&インチアップされていた足まわりを、あえて純正に戻すなどして乗っていたそうだ。
「初めて買うクルマはMTが良いと思い、両親のクルマでもお世話になっていた地元のトヨタディーラーで勧められたのが、下取りで入ってきたというアルテッツァでした。ずっと乗っていたいと思うほど気に入っていたんですが、2年ほど乗ったところで地方の大学に通うことになった弟に譲ることになりまして。仕方なく次のクルマを探すことにした時、ふと思い出したのが、以前にレンタカーで借りて、走りが気に入っていたアベンシスワゴンだったんです」
アベンシスはトヨタが欧州市場向けに開発し、生産もイギリスの工場で行われていたDセグメントのセダン&ステーションワゴン。3代に渡って展開されたが、2代目モデルは日本にも輸入され、ビスタの後継車種として位置付けられた。
そしてtysaabさんが乗る3代目は、発売当初こそ日本には輸入されていなかったものの、他のトヨタ製ステーションワゴンが次々と廃止されていったことから、その代替需要に対応するため2011年からワゴンのみ輸入されることになったモデルである。
「2代目のアベンシスが登場した頃はまだ中学生だったんですけど、トヨタが欧州市場だけを見据えて本気で開発したクルマは一体どんな乗り味なんだろうと、その時から気になる存在ではあったんです。それもあって3代目が出た時にレンタカーで借りて、2日に渡って800km近く走り回りました(笑)。それでも疲労感はなく、すっきりした乗り味だったことが印象に残っていたんですよね。一応、86とか2代目マークX、2代目オーリスなど他の購入候補もあったんですが、好みのステーションワゴンであるということと、記憶に強く残った走りの魅力が勝って、アベンシスワゴンを購入することにしたんです」
ちなみに、当時は現在の奥さんと遠距離恋愛中だったそうで、仕事の関係で住んでいた愛知県と、奥さんの住んでいた東京の往復も何度となくしていたというtysaabさん。デートがてらに、当時池袋にあったアムラックス東京にも出かけたそうだが、その時に奥さんも一番気に入ったのがアベンシスワゴンだったそうだ。
「妻は他の候補のクルマより、助手席が広々としていたところが気に入ったみたいですね。それで、アベンシスワゴンを買った後もしばらくは遠距離が続いたので、週末しか乗らないにも関わらず年間で1万2000kmも走っていました。結婚が決まると、引っ越しのために妻を東京まで迎えに行ったりもしましたね」
愛車を常に良い状態で保ち、キレイなまま長く乗ることにもこだわるtysaabさんは、ディーラーでの定期点検や5000km毎のエンジンオイル交換を徹底する他、数年ごとに東京のショップで塗装の磨きとコーティングを実施。自分で洗車する時も細かい部分までこだわり、開口部のヒンジまで毎回拭き上げるという念の入れようだ。
また、欧州仕様のパーツやアクセサリーを購入して取り付けることも、趣味のひとつ。例えばリヤゲートの左側には『TOYOTA』のエンブレムが付いているが、実は日本仕様にはない特徴なのだそうだ。
その他、左側ドアミラーの鏡面を左ハンドル用のワイドミラーに交換してみたり、イギリス仕様に使われるラバー製の後席用フロアマットを導入してみたりと、さり気ないカスタマイズも実現。ラゲッジルームに備わるパーティションネットも日本仕様には用意されていなかったアクセサリーで“ちょっと他とは違うぞ”という満足感を楽しんでいる。
カタログやグッズ類、ミニカーなどのコレクションも多く、今回の撮影会に持参していただいたのは、ほんのごく一部とのこと。カタログは1000冊以上、ミニカーは400台以上と、もはやtysaabさん自身も正確に把握できないほどのコレクション量だそうだ。
「アベンシスワゴンの走りは、購入当初から本当に気に入っていたんですけど、ある時からピッチングのような挙動が気になり始めました。それで神奈川県にあるショップに依頼して、ビルシュタイン製のダンパーをベースにしたワンオフのサスペンションを作ってもらいました。寸法を取るためだけに純正ダンパーを買うなど、手間やコストはそれなりに掛かったんですが、お陰でフラットな乗り味に生まれ変わって、なおさら長距離を走るのが楽しくなりました」
最近はSNSを通じて、アベンシス仲間とも交流を持つようになったというtysaabさん。車高を落としたり、ホイールをインチアップしていたりするオーナーが多い中、オリジナル重視のtysaabさんは少数派になるそうだが、乗り味へのこだわりは誰にも負けないと胸を張る。
「25歳でレガシィやアコードワゴンではなく、新車のアベンシスワゴンを選択していた時点で、自分は少数派の人間だったとは思います(笑)。でも、派手さはないものの長く愛せる質感の高いクルマだと思いますし、伸びやかなデザインと走りの楽しさ、それに実用性も兼ね備えていて、本当に気に入っています。これからも大切に乗っていきたいと思っていますが、もし手放す時が来たら“トヨタ博物館に寄贈したい”というのが夢ですね」
生粋のクルマ好きで運転好きのtysaabさんが、今のところ所有したことのあるクルマが2台だけというのも不思議といえば不思議だが、乗ったことのあるクルマの台数と距離で言えば、そんじょそこらの人では太刀打ちできないのも事実。きっとクルマ好き過ぎるが故に、自分のクルマには一途に尽くすのがtysaabさん流なのだろう。
購入してから12年が経過するというアベンシスワゴンが、新車かと見紛うほどの美しさを保っているところに、tysaabさんのクルマ愛がヒシヒシと感じられた。
(文: 小林秀雄 / 撮影: 清水良太郎)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:ジーライオンミュージアム&赤レンガ倉庫横広場 (大阪府大阪市港区海岸通2-6)
[GAZOO編集部]
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