自分より年上のマークII GTツインターボを手に入れ『当時のカタログのような姿』を目指す日々
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トヨタ・マークII(GX71型)
マークⅡというモデルが誕生したのは1968年。コロナとクラウンの間に位置するモデルとしてトヨペット・コロナ・マークⅡがデビューを果たす。2代目からは、日産の大人気車種であるスカイラインの対抗馬としてのキャラクターが強くなり、直6エンジンを搭載し、ボディサイズも大型化。代が進むごとに、その人気は高まっていった。
そんなマークIIの人気が爆発的に高まったのが4代目と5代目。80年代初頭に初代ソアラが登場し、高性能にして高級なパーソナルモデルが人気となり、いわゆるハイソカーブームが発生したが、そのブームの中核的な車種となったのが、マークII 3兄弟と言われている。言うまでもなくだが、マークII 3兄弟とは、マークII、チェイサー、クレスタのこと。3代目マークIIの時に兄弟車としてチェイサーが、そして4代目の時にクレスタが追加され、マークII 3兄弟と呼ばれるようになった。
スタイリッシュなスタイリングや、豪華なインテリアは、マークIIの初代から共通する特徴となるが、マークII 3兄弟が出揃った4代目以降、急激に人気が高まったのは、高性能エンジンが搭載されるようになったからではなかろうか? 4代目マークIIには、ツインカム24バルブヘッドを有する1G-GEが搭載され、5代目マークIIには、1G-GEをツインターボ化した1G-GTが搭載されたのである。
ツインカムエンジンにツインターボを組み合わせたのは、この1G-GTが日本初。185ps/6200rpm、24.9kgm/3200rpmというスペックは、当時の2ℓエンジンとしてはトップクラスの数値を誇った。
そんな5代目マークII(GX71型)に搭載された『1G-GTツインカム・ツインターボエンジン』に興味を持ち、初めての愛車としたのが『たらら』さんだ。
「“ツインカム”や、“ツインターボ”という高性能を連想させるワードが満載で、それから日本初ってところにも惹かれて、1G-GTが搭載されたクルマに乗ってみたかったんです」というたららさんは30歳。1G-GTが登場した1985年には当然生まれてらっしゃらない。そんな生まれる前のエンジンになぜ、興味を持ったのかだろうか?
「僕が生まれた頃、父が乗っていたのがGX81型のマークIIだったんです。その前にはGX71にも乗っていたようで、家にはGX71のカタログがあったんですよ。子供の頃からクルマには興味があったので、そのカタログを見ていたんですが、ツインカムとか、ターボが二つも付いているメカニズムが、いかにも速そうな感じで興味を持ったんだと思います」
学生時代はオートバイにハマっていたということもあって、21歳で4輪の免許を取得するも、クルマを手に入れる余裕はなかったという。そんな理由で自分のクルマを所有しようとなったのは、社会人になった年となる2017年になってからだという。
「元々、角張ったスタイリングのクルマが好きで、子供の頃から興味を持っていた1G-GTエンジンも味わってみたかったので、その両方が適うGX71マークⅡのGTツインターボに乗りたいなぁと思っていたんです。ちょうどそのタイミングで、ネットオークションにこのマークIIが出品されていて、落札したんです」
落札したマークIIは、1988年式のGTツインターボ。機関部こそ大きなトラブルはなかったものの、外装の程度が良くなかったという。
「ボディの錆びが酷かったんです。そんな理由もあってか、当時の相場と照らし合わせてみてもかなり安く落札できたんです。自分的にはツインカム・ツインターボエンジンを買ったら、車体がオマケで付いてきたって感じですね(笑)」
子供の頃から憧れていたという1G-GTが乗ったマークIIに乗った感想を伺うと「特別速いという印象はなかったです。でもマークIIをキビキビと走らせてくれるパワー感がありました。乗り味とは関係ないですが、エンジンルームを開けると、水冷式インタークーラーがあって、その上に刻まれた『TOYOTA INTERCOOLER twin turbo』の文字とかが、すごくカッコ良かったですね」と、スペックや乗り味だけでなく、1G-GTの細部の造形にまで惚れ込んでいるとわかるコメントが返ってきた。
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(写真提供:ご本人さま)
1G-GTエンジンのオマケとおっしゃる車体の方は、落札直後に撮ったというこの写真を見せていただくと、そこまで酷いコンディションには見えないが、見えない部分のサビが酷かったのだそうだ。
「外装がそんな状態だったので、手に入れた当初は、1年ぐらい乗ったらST205セリカGT-FOURとか、GZ20ソアラに乗り換えようと思ってました」と、おっしゃるように、マークIIを長く乗り続ける予定ではなかったようだ。しかし、実際には「マークIIに乗り始めたら、愛着が沸いてきたんです」と、マークIIに乗り続ける道を選んだ。
長く乗り続けるとなれば、錆びヤレた外装は気になるので、まずは錆びた部分の補修と共に全塗装を行なったそうだ。
「モールやゴム類は、幸いにもあまり傷んでなかったので、保護艶出し剤などを使って綺麗に磨き上げてから再使用しています」
また、全塗装と共にトランスミッションにも手を加えたという。
「元々はATだったんです。手に入れた時は『まぁ、ATでもええか』という感じだったんですが、ネオクラ(ネオ・クラシックカーの略で、80~90年代に製造されたクルマ)仲間が、AE92レビンのスーパーチャージャーに乗っていて、運転させてもらったんですが、やっぱりマニュアルの方が運転するのが楽しい。それでマークIIもMT化することにしたんです」
ちなみにGX71マークIIのGTツインターボには、5MTの設定もあったが、現在では新品部品はもちろん、中古でも部品を揃えるのは非常に難しい。トランスミッション本体は、同じ1G-GTエンジンを搭載していたソアラ用を流用したというが、その他にもMT化するには多くの部品が必要となる。
「センターコンソールはGX71ワゴン用を流用しましたが、色が違うので、GTツインターボの内装色に合わせて塗装してもらっています。センターコンソールに合わせて、サイドブレーキもペダル式からレバー式に変更しました。シフトノブやサイドブレーキレバーのグリップは、GTツインターボは本革巻きだったので、その部品を見つけるのにも苦労しましたね」
ボディの全塗装と、MT化などが完了し、さらに愛着が増したマークII。その後、ホイールを社外品に変えたり、細かな部分をいじるなどカスタマイズを楽しんだりした時期もあったようだが『新車のカタログに載っているような状態を目指す』という、現在の方向性に至ったそうだ。よって、新車時の状態に可能な限り近づけるべく、機関部などはプロの手を借りて、それ以外の部分はDIYで現在の状態にまで仕上げたという。
例えば、DIYで仕上げた部分として「ワインレッドの内装は、部分的に色褪せていたので、ホームセンターで売っている、布を染められる塗料で塗って仕上げています」と説明してくれた。紫外線による色褪せが発生していたというリヤのスピーカーボード付近などは、全く違和感のない状態にまで仕上げられていた。もちろん専用色などがあるワケではないので、市販されている色を混ぜて調色し塗ったというから、そのリペア技術には驚かされるばかりである。
たららさんがマークIIを手に入れてから今年で8年目となるが、その間に、奥様と出会い、そしてご結婚されたという。そんな奥様からのマークIIツインターボの評判を伺うと「自分が乗っている軽自動車よりも快適だと言ってくれてます」とのこと。
実際に一緒に来られていた奥様にお話を伺うと「こんなクルマがあるって全く知らなかったんですが、乗せてもらう度に、いろいろ教えてもらいました。乗り心はフワフワしていて、高級感があるところが良いですね。それから運転席でシフトレバーをガチャガチャ操作する姿も、カッコいいなぁと思いました(笑)」
そんなたららさんの姿を見て、ご自分でも運転してみたいと思ったそうだが、免許がAT限定だったのですぐには実現できず。しかし「限定解除して、何度か運転させてもらいました」と、楽しげに語ってくれた。
「現在、このマークIIは、買い物やドライブなどの休日使いがメインなんです。今まではオートバイでの通勤だったんですが、これからはマークIIも使えるようにしようと思っているんです。ここまで仕上げてきた新車当時の雰囲気はそのままに、いろいろと快適なクルマにしたいですね」
このマークIIが生まれた昭和という時代感を、お二人で楽しんでいるのもたららさんご夫妻の素敵なところ。撮影時の服装も、1980年代を意識した装いでいらしていて、当時のままの姿を令和に蘇らせたようなマークIIに収まると、まるでタイムスリップしたかのような絵ができあがるのだ。
完全なる趣味のクルマとしてではなく、たららさんご夫婦の生活になくてはならないクルマとして、どうやら1988年式のマークIIグランデ GTツインターボは、これからも進化していくご様子だ。
(文: 坪内英樹 / 撮影: 稲田浩章)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:ジーライオンミュージアム&赤レンガ倉庫横広場 (大阪府大阪市港区海岸通2-6)
[GAZOO編集部]
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