その数、170台以上!コレクションしてきたクルマに込められた、それぞれのストーリーとは

  • 日産・グロリア

170台以上を所有しているという「池添さん」は、その1台1台に思い入れがあるとのこと。

ひょんなことから池添さんの元に舞い込んだクルマや、幼い頃から自分が乗ってみたかったクルマなど、眺める度にそのクルマにちなんだストーリーを思い出すと話してくれました。

この取材では、170台のクルマの中から思い入れのあるクルマを選んで頂き、色々なお話を伺ってきました。

今回は、池添さん × グロリア のお話をお届けします。

――どのクルマの話にしますか?

この話を頂いたときに、まさにそれについて悩みました。どのクルマのことを話したらいいんだろうって(笑)。

全部同じくらい大切なクルマではあるんですけど、これが面白いんじゃないかな?という車種を勝手に選んでみたので、そちらでよろしいですか?

――はい!お願いします!

  • 日産・グロリアのフロントビュー

日産のグロリアなんですけど、おそらく現存するのが世界に1台なんじゃないかと思っているんです。というのも、僕のグロリアは1番安いグレードで、このグレードが探しても探しても見付からなかったから。

――世界に1台!?なぜ1番安いグレードにこだわったのですか?

渡哲也さんが出ていた西武警察という刑事ドラマがあったんですけど、それで使っていたのがこのグレードだったんです。犯人が乗っていて空を飛んでひっくり返ったりとか、ぶつかって燃え上がるとか横転するとか、スタントで使われていたクルマなんですよ。

なんでも、スクラップになる前のグロリアを集めてきて、色を塗って撮影に使っていたらしいです。いわば“やられキャラ”な感じなんですけど、僕はなんかそこが良かったんです。

あとは、営業車やタクシー、教習所で使われていたりもしました。ずっと乗りたい高級車というよりは、ある程度乗ったらポイっとする人も多かっただろうから、球数が少なくなってしまったんだと思います。

  • 日産・グロリアのリアビュー

――池添さんは、どこで見つけたのですか?

オールドタイマーという雑誌の、個人売買欄に掲載されていたんです。もう、見たときは、やったあああ!って興奮しましたよ(笑)。

朝イチで問い合わせをしたけど繋がらなくて、昼にもう1回電話をしたら「もう1人欲しいと言っている人がいる」と言うんです。

10月26日発売の雑誌だったんですけど、11月3日にイベントをやるからそこで話し合ってくれってなわけです。そしたら2人で競り合っちゃってねぇ(笑)。最終的に30万円で出品されたクルマが100万ちょっとまで値上がりしちゃいました。

でも、やっと乗りたかったクルマを手に入れたから、幸せな気持ちでいっぱいだったんですけどね。雨の日も雪の日も、通勤や買い物にも、毎日のように乗りました。

――170台もあったら乗り放題なのに、グロリアに毎日乗っていたということは、よほどお気に入りだったんですね♪

  • 日産・グロリアの左リアビュー

そうですね。だって、あまりにも見付からないから、普通のグレードを安いグレードにおとして乗ろうとしていたくらいでしたから(笑)。

そんな矢先に僕の前に現れたということは、これはきっと運命だったのかもしれません。でもね、嘘と思うかもしれないですけど、そういうのって本当にあるんですよ。

――と、いいますと?

スバルのレックスなんかがそうです。実はこれ、亡くなった友人が乗りたかったクルマなんですよ。墓参りのために北海道に発とうとした前日に、近所の中古屋さんの前を通ると置いてあったんです。

亡くなった友達が引き寄せたのかなー。なんて、なんとも言えない気持ちになりましたね。

――ほかに、そういった思い入れのあるクルマはありますか?

  • スバル・レオーネ

あとは、北米仕様のスバル・レオーネかな。30年近く探していたけど、なかなか見付からなくてねぇ。

子供の頃に、親戚の結婚式にお呼ばれしたときに、会場でスバルの展示会をしていたんです。そこで出会ってから、ずっと乗りたくて探していたクルマで、見つけたときは本当に嬉しかったですね。

アメリカのカリフォルニア州の解体屋さんに置いてあった写真が載っていたんですよ。放置車両というか、すすが被ってるような状態の。で、それをアメリカの方がレストアして、アメリカのカーセンサーのようなサイトに掲載されていたのを日本の方が購入して、それを僕が購入したという感じになっています。

こんな風に、アメリカから日本に来るまでの履歴が分かるクルマって、なかなかないから面白いなぁと思ってね。もしもレオーネが話せたとしたら、何ていうんだろうなぁ?なんて考えたりしちゃいますよね。

  • スバル・レオーネの左リアビュー
  • スバル・レオーネの運転席

――池添さんは、どうしてそんなにもクルマを集めるのですか?

言うなれば、ミニカーを集める感覚に似ているのかなぁ。どんどんコレクションしてしまうと言いますか……。あとは、車も寄ってくるんですよ。池添さんのところに置いておこうみたいな(笑)。

――じゃあ、池添さんにとってクルマはミニカーみたいなもんなんですね。

それはね、微妙に違うんですよ。ミニカーみたいに集めるんだけど、クルマ自体は身体の一部という表現がしっくりくる気がします。

実は、脳梗塞で倒れてしまって、視野欠落になったことがあってね。広い範囲で見えないと言うのかな? 双眼鏡で見てる感じで一点でしか見えないんですよ。

お医者さんには「もう、クルマには一生乗れません」と言われたんですけど、コレクションしたクルマ達を眺めていると、どうしても諦めたくなくてね。もう1回クルマに乗るぞと決めて、1ヶ月くらいすると視野が奇跡的に戻ったんです。

それくらいクルマが好きというか、クルマに乗らずにはいられないんです。

――思いが届いたんですね。

そういうのはあると思います。もちろん、リハビリというか、自分なりに色々なことをしてみたんですけどね。

人混みにわざと行って、目を動かさなくてはいけない状況に自分を追い込んだり。時代劇のような動きが激しい映画を見てみたり、顔を動かすんじゃなくて目を動かして右を見たりとか。

果たしてそれに効果があったかは分からないけど、そうやって頑張ろうと思わせてくれたのは、間違いなくクルマのおかげです。

  • スバル・レオーネと数々の愛車

170台以上あるクルマのうち、手放したのは数えるほどだとのこと。全てに思い入れがあり、来るべくして自分の元に来たと話してくれました。

「僕の所にきたクルマは、最後まで見届けますよ」と、嬉しそうな声が印象的でした。

(文:矢田部明子)

[GAZOO編集部]