【ノスタルジック2デイズ】昭和を愛するオーナーが幼少から憧れた330系グロリアは、運命的に巡り合った奇跡のフルノーマル車
ノスタルジック2デイズ会場には、その名の通りノスタルジーに浸れるクルマが数多くディスプレイされているのが特徴。その時代も昭和世代をメインに平成初頭まで幅広く、見る人それぞれに様々な懐かしさを蘇らせてくれるのは足を運ぶ人の楽しみでもある。
そんな中でも格別の “昭和感”を放っていたのがこの1978年式日産グロリア4ドアハードトップ。40年以上の時を超えて、今なお輝きを放つ美しい姿を見せて頂こう。
日産・グロリアといえば高級セダン「セドリック」の兄弟車として知られているが、そもそもの派生はプリンス自動車時代に誕生したスカイラインがルーツ。4代目の230系からセドリックと兄弟車として設計され、最終型までそのポジションは固定されている。この330系はそんなセドリックと兄弟車としてデビューした230系の後継として1975年にデビューしたモデルだ。
高度成長期を背景にしたパッケージングは豪華を極め、ソファを思わせるふかふかのシートや快適なアシストシステムの採用、近未来感を漂わせるオーバーヘッドコンソールの追加など、まさに当時の最先端が詰め込まれていたのだ。
オーナーは幼少の頃から330系グロリアへの憧れを抱いていた人物。その思い出は幼い頃に遊んだミニカーが原点だという。当時従兄弟と一緒に遊んでいる際に、いつも従兄弟が持っていたのがこの330系グロリアのタクシー仕様。自分はバスのミニカーしか持っていなかったため、低くスタイリッシュな330系とバスを比較しては憧れを募らせていたのだ。そして大人になると330系グロリア好きに端を発し、昭和世代の雑貨や家電にまで興味を持ち始めて収集するに至ってしまったというわけだ。
しかし家電や雑貨は収集しても旧車を所有するにあたって様々な不安があったことから、なかなか手を出せなかったのが実際のところ。そうこうしているうちに仕事も軌道に乗り、旧車の手始めとして手に入れたのが初代ソアラである。このソアラに乗り始めたところ、それまで頭で思い描いていた旧車への不安は一気に解消され、次第に本命の330系グロリアを探すようになったのだ。
もちろん乗るなら当時の時代背景を感じられるフルノーマル車。しかも普段から使用することを考えると、コンディションにもこだわりたい。こうして幼い頃から憧れた330系グロリアを手にする決意は固まり、理想の330系グロリアを探す具体的なアクションに移行していったのである。
高級車である330系グロリアであっても時代の経過とともに、廃車にされてしまうものが増えてくるのは消費社会の原理。さらに廃車を免れたとしても様々な改造が施されることも多く、今となってはノーマル車を見つけることは難しいともいえる。しかし、根気よく探してみると意外なコンディションで保存されているということもある。ここ数年、話題にのぼるバーンファインドはまさにそんな宝探しの一種ともいえるが、このグロリアもまさに奇跡的に発掘された1台なのである。
「最初はフルノーマル車なんて残っていないかと思っていたんですが、見た瞬間に自分の求めていたクルマがそこにあったんです。栃木にある養豚場の社長さんがずっとガレージに保管していたためボディはサビもなく、内外装も全て当時のまま。走行距離も3万キロの極上品でしかもボディカラーは市場に比較的多く出回っているブラックではなく、カッパーオレンジというのにも心を撃ち抜かれました。まさに運命の巡り合わせだと思い、その場で定期預金を解約して即決しちゃいましたね。もちろん家族には買った後で報告したんですが(笑)」
運命的な出会いによって手に入れたグロリアだが、大切に飾っておくのは性に合わない。クルマは普段から走らせるために生まれてきたという思いから、毎日の通勤から家族でのドライブなどフルに活用しているという。もちろん、デイリーユースに向けて各部の整備を完璧に行い、なおかつ壊れていたエアコンもリフレッシュ。他の車両も所有しているが、クルマに乗る機会の9割近くがこのグロリアというからその溺愛ぶりは理解できるだろう。
「この時代のクルマって本当に不便なんですよね。足はフワフワしてコーナーではロールもすごいし、ハンドルも常に修正舵を当てていないと真直ぐに走ってくれない。ブレーキだって気を使って踏まないと全然効かないし。オーディオも今どき8トラなんて、どこでソフトを入手できるんだと。でもこの乗り味が当時の雰囲気を味あわせてくれるんですよね。現代のカスタムパーツを使えばこのスタイルでもっと快適にもできるかもしれませんが、それじゃグロリアに乗っている意味はない。だからこれからもカスタマイズは一切行わず、ノーマルのままずっと乗り続けていきたいですね」
前述の通り現在は仕事も含めほとんどがこのグロリアで移動している。そのためか、取引先との話もグロリアの話題で盛り上がることもしばし。それまで他のクルマで移動していても仕事の話で終始していたが、このグロリアに乗り始めたら仕事以外の話題にも発展し、より親密度がアップしているという。趣味でありライフスタイルであり、さらに仕事上では良きパートナーとなっているグロリアは、今後も昭和の香りを漂わせながらオーナーの生活を華やかに彩ってくれるだろう。
(テキスト:渡辺大輔/ 写真:平野 陽)
[ガズー編集部]
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