見た目も走りもお気に入り。夫婦揃って可愛くて仕方がないサニートラック
日産サニーをベースに開発されたサニートラック、通称『サニトラ』。その中でも1971年から2008年まで発売されていた2代目のサニトラは、途中のマイナーチェンジはあったものの、37年もの間発売されていた超ロングセラーモデルだ。
国内では1994年に販売が終了したが、30年以上経過した今でも旧車ファンの間では高い人気を誇っている。
そして神奈川県在住の新田番地さん(52歳)も、「可愛くて可愛くて仕方がないんですよ!」とそんな2代目サニトラの魅力にすっかりハマってしまったおひとりだ。
「このサニトラを手に入れたのは2年前の2021年4月です。Twitterでの個人売買で、友達がリツイートしていたのを見まして。それで高校生の時にサニトラが欲しいなと思っていたのを思い出して、程度もよさそうで値段も思ったより安かったので…」
そんな新田番地さんはクルマ好きな親や親の勤め先の方たちの影響もあり、免許取得後はスズキカルタスやR30型スカイラインにS14型シルビア、そしてフォードフォーカスにセレナC24型(バイクトランポ用)、その後はAMG GLA45、そして今ではもうすぐ手放す予定というR35型GT-Rと、さまざまなクルマを乗り継いでいる大のクルマ好きだ。
ただ、これだけさまざまな方向性のクルマを乗ってきた彼にとっても旧車はいろいろと大変なイメージがあり、特に乗りたい訳ではなかったのだとか。しかし、サニトラだけは話が別だったという。
「旧車に乗るなら若かった頃に憧れたサニトラが良かったんです。それにちょうどしばらく休んでいたバイクのレースをするために今年からコースに復活しようかなと思っていたので、バイクが積めるというのも大きかったですね」
そして購入したのは、2代目にあたる1986年式の日産サニートラック(B122型)の標準ボディで、A12型1.2Lエンジン搭載の4速MT仕様だ。
実際にこのサニトラに乗ったところ「想像以上にしっくりきた」のだという。
「やっぱり旧車だし癖があって乗りづらいイメージだったけれど、乗ってみたらクラッチは軽いしギアの入りもいい。重ステも気にならないくらい乗っていて楽しいんですよ。それに車体も軽いし乗り心地のソリッドさはスポーツカーに負けない。FR駆動なので後ろから蹴り出してくれる感覚もいいですね。
2シーターのライトウエイトスポーツって感じですべてがよかった!今は可愛くて仕方ないし、乗っていて楽しいからいつでもご機嫌でいられますね」
これはもう、ベタ惚れという表現がぴったりかもしれない。
こうしてオーナーを虜にしたサニトラだが、販売期間が長かったこともありパーツ類も豊富で、チューニングのベースカーとしても人気が高い。となると気になるのはこのクルマのカスタム具合だが、目に見えての大きく変わっているのはタイヤと車内パーツの一部程度で、基本的に大きく変更していないのがポイント。
「タイヤは元々12インチの商業用のものを履いていてその時はヨレヨレだったけど、ホイールを14インチにアップしてタイヤも太くしたら走りが安定しまして。思った以上によくなったのは嬉しかったですね。
あとはそれ以外で僕が交換したものといえば、シートをレカロ製にしてMOMOステアリングに交換したこと、あとは走行に影響の出たオルタネーターを強化品に交換したことと、水漏れしていた社外ラジエターを純正に戻したことくらいです」
ちなみに、純正シートは完全にヘタっていた上に破れていたため、「とりあえずレカロ製なら間違いないだろう」と交換したのだとか。
そんな中、サニトラに載っているもので気になるものを2つ発見。
その一つが、助手席にドーンとおいてある大きな黒い物体だ。
「これは充電タイプのスピーカーで、色々比較した中でこれだけ出力が100wだったのかな。結構遠くまで音が響きます。ただ、助手席に嫁さんが乗るときはナシです(笑)」
奥様とのドライブは、きっとスピーカーで音楽を流す必要のない楽しい空間なのかもしれない。
そしてもう一つが、エアコン代わりに投入されたであろう、荷台で固定されているスポットクーラー。
「僕的にはこれを『人権システム』と呼んでいます(笑)。スポットクーラーは発電機で稼働させて、後ろの窓をアクリルガラスに交換してダクトを室内に入れてみました。
まだ1週間くらい前に設置したばかりなんですけど、まあまあ涼しくて、暑くはない(笑)。去年の夏場は暑くてボケっとしてしまうこともあったけど、しっかり効いてくれるので今の季節にも普通に使っていますよ! 嫁さんからもOKでました」
ちなみに新田番地さんは奥様とのふたり暮らしで、このサニトラの助手席に乗ることも多いという。
そんな奥様はクーラーが効かないからと最初はこのクルマを嫌がっていたため、新田番地が「売ろう」と切り出したところ、「え!」」と一言。
「どうやら気に入っちゃったらしくて(笑)」。
そしてこの日はスーパー耐久第2戦富士24時間での取材だったのだが、奥様もオーナーであるご主人とご夫婦&友人と一緒にテントを張って観戦を楽しんでいたので、このサニトラについてどこらへんが気に入っているのか気になり、お話を伺ってみた。
「最初のうちは可愛いとは思わなかったんですけど、乗っているうちに可愛く感じて、まあいいかなって。割と乗り心地もいいですし。ただ難点は、古いクルマなのでエアコンがないんですよね。あと荷物が乗せられるけど幌がないから雨の日は無理かな(苦笑)」
特別クルマ好きというわけでもない女性が、現代のクルマに比べれば快適さや性能面でも劣るこのサニトラを気に入ることはあまりないのではないだろうか。オーナーであるご主人にとっては本当に素敵なパートナーだ。
ちなみに、新田番地さんに愛車の嫌いなところを聞いてみたのだが、「本当にないんです。古いから錆びているのは当たり前だし、乗り心地はトラックだからしょうがないし」と嬉しそうに話していたのが、印象的だ。
そんな新田番地さんは、日常の生活に欠かせない存在となったサニトラとの今後のカーライフを、どのように思い描いているのだろうか。
「本当に可愛くて仕方ないですし、この先もずっと乗っていたいです。ただ、もしこのサイズの4ナンバーのピックアップトラックが出てくれたら買い替えは考えていて。というのも、これは正直ちょっと荷台が狭いというか。これ、ショート(標準ボディ)なんですけどロングタイプのほうがやっぱりいいですしね。
あとはSR20DETのエンジンをこれに積んでみたい。S15シルビア用の6速ミッションを入れて、NAのオーテックバージョンなんて最高におもしろそうじゃないですか!」
そう嬉しそうに話す新田番地さん。このクルマでチャレンジしたいことはまだまだたくさんありそうだ。
そして実はオーナーさんは昨年R35GT-Rも購入。しかし近々手放すつもりなのだといいう。
「R35GT-Rはドライブ用として購入しましたが、自分にはちょっと手に余ったので手放すことにしました。で、トヨタ車にはこれまで乗ったことがなかったので、先日GRカローラの抽選に申し込んだんですけど外れてしまいまして…(苦笑)。この先もう一度抽選の機会があれば応募したいですね。もし当たればこのサニトラを普段使いとトランポ用、そしてドライブ用にGRカローラと2台体制でいこうと思っています」
新田番地さんがこの相性バグツンのサニトラと出会ってからは、まだ2年が経過したばかり。この先もきっと愛車の乗り味を楽しみながら、たくさんの時間を共有していくことだろう。
(文:西本尚恵 写真:中村レオ)
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