25年ぶりに復活した父の初代ブルーバード。懐かしさや成長を感じさせてくれる宝物
高校2年生のときに自転車を漕いでいると、とある整備工場に初代ブルーバードがポツンと置かれているのを見かけた「佐々木さん」。
そのクルマが お父様の憧れだった初代ブルーバードと気付いた佐々木さんは、帰宅後すぐにそのことを伝えたそうです。すると、2日後に整備工場に足を運ぶお父様の姿が。ところが、すでに解体屋さんに引き取られていたようで……。
今回は、そのブルーバードを25年ぶりに復活して愛車に迎えた佐々木さんのお話をお届けします。
―――結局、解体屋さんで潰されちゃったのですか?
急いで行ったからギリギリセーフで、廃車になるマイクロバスの上に乗っかっていました。
―――おおおお!間一髪ですね。ところで、お父様はなぜ初代ブルーバードにそこまでこだわったのでしょうか?
ちょうど免許を取った時に街中を走っていたクルマだそうで、当時は乗ることができなかったからずっと欲しかったみたいです。だけど、うちには910ブルーバードがいたから、母は「2台も同じクルマはいらないでしょ!?」って怒っていましたけどね(笑)。
その後、確かにそうだということになって、910ブルーバードを廃車にして初代ブルーバードを復活させるという、ちょっとよく分からない逆転現象が我が家で起きていました(笑)。
―――これで、もしも初代ブルーバードが走らなかったら…、奥様の逆鱗に触れそうな気が……。
それがですね、初代ブルーバードは初っ端からやらかしちゃったんですよ。復活させた当日の夜に、得意気な顔をして父が家に帰って来たんです。
「ドライブでも行くか?」なんて言われて、当時高校2年生だった僕と、小学生だった妹は意気揚々とクルマに乗り込みました。
大宮駅まで行って帰って来ようなんて言っていたんですけど、ガソリンフィルターが詰まって途中で動かなくなっちゃってね。何をしてもエンジンがかからないから、次の日学校があった僕と妹だけ電車で先に家に帰りました。
妹はパジャマだったから、かなり恥ずかしそうにしていたな〜(笑)。
―――奥様が乗っていなかったのが不幸中の幸いですね(笑)
そうそう。まぁ、それでも「このクルマ、大丈夫なの?」という不穏な空気が我が家に流れましたけどね(笑)。
そんなこともあったけど、それから6年乗って、色々あってナンバーを切ったという感じです。ただ、父は決して廃車にはせずに、僕が乗るかもしれないからとブルーシートに包んで25年間保管していました。
そして、去年の11月に復活して、また公道を走っているというわけです。
―――25年越しに復活させるキッカケは、何だったのですか?
僕が50歳、父が80歳になって、再び乗るなら最後のチャンスかなと思ったからです。そう思い描いていた時に、初代ブルーバードをいじれるショップも見つかって、トントン拍子に事は進みました。
去年の9月に実家から引き上げて、おおよそ1ヶ月半で車検が取れる状態までもっていくことが出来ました。何年、最悪何十年もかかると思っていたから、とても嬉しかったです。
―――お父様は、かなり喜んでいたのでは?
そりゃあもう大喜びだったし、感無量といった表情をしていました。すぐに実家の近くを一周したんですけど、クラッチミートの絶妙なタイミングなどを見ていると、最近まで乗っていたんじゃないかと思えるくらい上手でしたね。
免許を返納しようか?なんて話も出ているんですけど、それを感じさせない運転でした。おそらく、身体が覚えているんでしょうね。感覚で操作しているというか。
―――佐々木さんは、運転してみてどうでしたか?
このクルマは、エンジンの掛け方が独特でね。チョークを少し引いて、パカパカとアクセルを3回踏んで、すこーしアクセルを踏んだ状態でスタートするというコツのいるかけ方をするんです。
それをやった瞬間に、「あぁ、これこれっ!」ってなりました。懐かしいというか、胸が一杯になるというか。ブレーキの感覚やハンドルの重さからも時の流れを感じて、走るにつれ色々な思い出が頭の中に蘇っていきました。
30年前は「まだお前には早い」と言われて、特別な日しか乗せてもらえなかったんですよ。だから、そんなクルマのオーナーになったということが信じられないし、歳を重ねたんだなと感じています。
―――今後は、どういう風に乗っていきたいですか?
サビてるし、塗装も当時のままだから艶も無くてくすんでいるけど、それが味になっているかなと感じているんです。だから、当分はこのまま乗っていきたいと思っています。むしろ、このくすみやサビが 時の流れを感じさせてくれるかなって。
ただ、つい最近天張りがバリバリになって落ちてきたから、そこは修理したいなと(笑)。とまぁ、今のところこんな感じでしょうか?まだまだ乗り始めたばかりで、とにかく今のところは走ることが楽しくてそれどころじゃないんです!
ブルーシートの布団を剥いで2024年に再び走り始めた初代ブルーバードは、「もしかしたら、25年前の街並みとガラリと変わった風景に驚いているかも?」と笑いながら話してくれた佐々木さん。
確かに、62年前に生まれ、ひょんな出会いから愛車に迎え入れられ、25年ぶりに復活しスーパーに買い物に一緒に出掛ける、そんなこと想像していなかったかもしれません。
これからも何十年と、佐々木さん一家と一緒に楽しい時を過ごしていってほしいです。
(文:矢田部明子)
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