スポーツカーをつくりたい!だからこそ挑戦した、学生フォーミュラ
4歳の頃にディズニー映画『カーズ』の「マックイーン」仕様のクルマがレースに出場するのを見て、速いしデザインもカッコいいし、街中でも見かけない珍しいクルマに心を打たれ、大人になったらスポーツカーをつくって乗ってみたいと幼心に思ったそうです。
今回は、そんな秋澤さんとBRZのお話をお届けします。
―――学生フォーミュラに挑戦していらっしゃるんですよね?
学生フォーミュラで作成したクルマ
今年の夏に引退しましたが、入学当初から真剣に取り組んできました。「学生フォーミュラって何?」と思う方もいらっしゃると思いますので簡単に説明すると、全員学生のチームメンバーで、フォーミュラスタイルの小型レーシングカーをレギュレーションに従って企画、構想、設計、製図、製作、走行評価を行い、「ものづくり」を学ぶ活動です。今年はその小型レーシングカーのドライバーとチームリーダーを務めましたが、果たしてこれで正解だったのか、いまでも分からない状態です。
―――そう感じる原因は、何だったのでしょうか?
学生フォーミュラの車両作成現場とフレーム
誰が良い悪いというわけではなく、モチベーションが異なるメンバーを一つの方向に向けることが難しかったです。またこれといった正解が無いため、今も“分からないまま”という感覚があります。クルマが好きなメンバー、ものづくりが好きなメンバーなど、さまざまなキャラクターが揃っていたため、各個人の希望が全て通るわけではなく、誰かがどこかで我慢しなければならない場面もありました。そんな時、どうやってチームのポテンシャルを保ちながら、同じ目標に向かって歩んでいくかを考えさせられた1年でした。ただ、この経験は絶対に将来の役に立つと確信していますし、スポンサー様とのやり取りや資金集めの難しさも身に染みて分かりました。クルマ以外にも本当に多くのことを学び、改めて挑戦して良かったと思っています。
高校2年生の頃まで、クルマ関係の学校に進むべきかどうかを非常に悩んでいました。だからこそ、余計にそう感じるんですよね。
―――どういったことに悩まれたのでしょうか?
クルマ業界全体が100年に1度と言っても過言ではない大変革期だったため、その道に進んでこの先大丈夫なのかという不安がありました。また同級生と話しているとクルマに関心のある人が少ないことを感じていたため、今後クルマ業界はどうなるのか心配でもありました。僕は埼玉県出身ですが、公共交通機関が発達しているため、周りには免許を持っていない人の方が多くいました。その状況下でもやはりスポーツカーをつくりたいという思いがあり、来年クルマメーカーに就職することが決まっています。スポーツカーには独自の魅力があり、たとえクルマが好きではない人でも、乗ることで魅了させる力があると思います。だからそんなクルマをつくれば、クルマに興味を持つ人が増えるのではないか。それが僕の出来ることではないかと感じたのです。
―――そんな秋澤さんの愛車は何ですか?
BRZです。子供の頃から親の影響でスバルが好きで、GT300クラスではずっとBRZを応援していて憧れのクルマでした。バイトをしながら貯金し、両親にお金を貸してもらって何とか購入できたときはとても嬉しかったです。
―――私も学生時代は学業そっちのけでバイトしていました。懐かしいなぁ……。
いつの時代もあるあるなんですね(笑)。ちなみに、僕は洗車のバイトをしているのですが、これが結構楽しいんです。80スープラの内装を掃除している時に運転席に座る機会があり、「おお……これがスープラのシートか……」と感動したり、クラッチペダルを踏んだ時の硬さが自分のBRZと比べてどう違うのか?といった勉強にもなるといいますか。もちろん、与えられた仕事はしっかりとこなしますが、バイトでありながらバイト以上の楽しさを感じています。
―――愛車であるBRZのどんなところが気に入っていますか?
フロント側から見たときに、前傾姿勢で今にも走り出しそうな低いフォルムや、ハンドルを切るとスッとキビキビ動く運動性能が魅力のクルマだと思っています。さらに、走り始めるとギアの音やエンジン音が聞こえ、操作していることが楽しいだけでなく、クルマと一体化しているような感覚を味わいながら“非現実的な日常”を体験できるところも気に入っています。
先ほど述べた通りクルマメーカーへの就職が決まっているのですが、サスペンション系を開発できる部署にいけたらいいなと思っています。
―――その理由は何でしょうか?
フォーミュラの走行会で、サスペンション関連の設計ミスが見つかったことがありました。ステアリングラックが本来の位置より5mmほど高い位置に装着されており、そのためタイヤがバンプした際にアウト方向に向いてしまい、うまく曲がれないことが主な要因でした。対策として、タイヤ側のタイロッドエンドを2mmほど上に装着したところ、走行性能が見違えるほど向上しました。この経験から、サスペンションがクルマの走りに与える影響を実感し、自分はこの分野を専門にクルマをつくりたいと考えるようになりました。
こうした出来事を体験すると、自分もオーナーさんも楽しいと思える、最高の走りをしてくれるクルマを世に出したいという思いが強くなりましたね。
そう語る秋澤さんは、これからもBRZと共にカーライフを楽しんでいくことでしょう。また、就職後はサーキット走行にも参加したいと話しており、今後もさまざまなことにチャレンジしていきたいと語ってくれました。いつか秋澤さんが手がけたスポーツカーが登場することを願っています。
山口東京理科大学 学生フォーミュラチーム
<ホームページ>
https://tusy-formula-hp.webnode.jp/
<Instagram>
https://www.instagram.com/socu_formula/
<X>
https://x.com/socu_formula
(文:矢田部明子)
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