「アガリの1台」と走り続けて20年。1972年式日産・スカイラインGT-R 2000ハードトップ(KPGC10型)に惚れ込んだオーナーの本気

取材をしていると「アガリの1台(人生最後の愛車)」を所有しているオーナーに出会う機会が非常に多い。そのほとんどのオーナーが数十年の長きに渡り、愛車と人生を走り続けている。これまでに、どれほど、ともに喜んだり、試練を乗り越えたりしてきたのだろうと、ついオーナーと愛車のヒストリーに思いを馳せてしまう。

今回の主人公、49歳の男性オーナーもそんななかの一人だ。愛車は日産・スカイラインGT-R 2000ハードトップ(KPGC10型、以下GT-R/ハコスカGT-R)。世に言う「ハコスカGT—R」である。オーナーはこのクルマと幼い頃に出会い、絶対に乗ると心に決めて手に入れている。所有してから20年が経った。今回はオーナーのGT-Rに抱く想いや、愛車への接し方を、詳しく伺っていく。

オーナーの所有するハコスカGT-Rは、1972年式。貴重な初代GT-Rの最終モデルにあたる。富士グランドチャンピオンレース(通称「グラチャン」)をはじめとする数々のレースで通算50勝という伝説的な記録は、自動車史に刻まれている。ボディサイズは全長×全幅×全高:4330×1655×1370mm。オーナーによると、総生産台数の約9割は、今もなお生き続けているという。

エンジンルームにも、オーラが漂う。プリンス・R380に搭載されたレーシングエンジン「GR8型」をベースとして公道向けに開発された名機「S20型」は、排気量1989cc、直列6気筒DOHC4バルブエンジンだ。量産車では初採用となったDOHC4バルブ方式は、吸排気効率を向上させて高回転・高出力化を実現。最高出力は160馬力を誇った。

この個体のオドメーターは、9万8000キロを刻む。といっても、この時代のクルマは10万キロを超えるとゼロに戻るので、それ以上の距離を走っている可能性もある。20年前にオーナーが手に入れてからは、約5万キロを走っているそうだ。

「良いコンディションを保つために、雨の日の運転や、埃っぽい場所を避けつつも普段乗りをこなし、サーキット走行もしています」

オーナーがこの個体を手に入れたときの年齢は29歳だった。では、GT-Rの存在を知ったのはいつなのだろうか。

「2歳か3歳の頃に、テレビでレース中継を観たんです。そこで活躍していた『何か知らないけどカッコいいクルマ』の虜になりました。後にそれが、ハコスカGT-Rだと知りました。当時の感覚は、ヒーローものへの憧れに近かった気がしますね。将来、大人になったら自分もこのクルマに乗るんだと、幼心に決意しました(笑)」

長年想い続けるなかで、気持ちが途切れることはなかったのだろうか?

「小学生になると、クルマの知識もついてきていたので、ケンメリGT-Rも好きになっていました。同時にスーパーカーブームが到来しました。ランボルギーニ・ミウラやイオタが好きでしたね。ただ、スーパーカーはあくまでも夢の存在でしかなかったので、自分が実際に所有したいクルマとして、ケンメリとハコスカの2択になりました。スーパーカーに匹敵する国産のエンジンは、私のなかではGT-Rしかないと思いましたね。最終的に、生まれて初めて好きになったハコスカGT-Rを買うと決めたんです。それが小学3年生の頃でした(笑)」

ここで、オーナーの愛車遍歴も伺ってみた。

「メインカーの愛車遍歴は、ハコスカGT(日産・スカイライン2000GT-B/GC10型)とハコスカGT-Rのみなんです。ハコスカGTは17歳のとき、自分で実車確認に行きました。綺麗なシャンパンシルバーで4ドアのモデルでした。それから、今のGT-Rになります。納車してもハコスカGTは売却しなかったので、一時はハコスカの2台体制が2年続きました。でも、GT-Rに乗る回数のほうが増えてしまい、結局専門店に引き取ってもらったんです。このまま乗らないのはかわいそうだと思いまして…」

現在は、GT-Rと通勤用のスズキ・カプチーノの2台体制。オーナーは、1台を長く所有するタイプのようだ。次に、その理由を伺ってみた。

「愛着が湧いてしまうんですよ。コックピットからの見慣れた景色がもう見ることができなくなると思うとつい寂しくなってしまって、新車に移行できないんです(笑)。それに、スイッチの配置を体が覚えてしまうと、使いやすさを重視してしまって」

そんなオーナーが念願のGT-Rを手に入れたのは、1998年の夏。この個体と出会ったきっかけは?

「買うのは最初からハコスカGT-Rと決めていたので、そのつもりで中古車誌を読んでいて見つけました。当時も決して安くはなかったはずですし、現車確認するとしても2~3台しか見ることができませんでした。何しろ、まず店頭に並んでいなかったし、ショップへ行くと門前払いを食らうこともありました。20代の若造がGT-R、しかもハコスカに乗れるはずがないと思われたようですね。だから、手に入れたときは本当にうれしかった!契約して2週間ほど待って、ショップの方が家まで自走で届けてくれました」

GT-Rを購入するために、貯金はしていたのだろうか?

「していました。18歳で就職した直後から、10年間コツコツ貯めていた資金を元手に手に入れました」

ここで、少し意地悪な質問を投げかけてみた。オーナーの年齢だとR32~R34のGT-R全盛期をリアルタイムで見ていたわけだが、心は揺れなかったのだろうか?

「全然揺れなかったですね。なぜなら、GT-Rの『3ナンバー』に納得できなかったからです。当時は『5ナンバー2000cc』という枠のなかで、どれだけ力を発揮できるかがGT-Rの真髄だと思っていました。今は32GT-Rも好きですが、私は第一世代のハコスカGT-Rが大好きです。それぞれの世代のGT-Rを心から愛する人に守っていただきたいと思います」

オーナーの個体は、サーキット走行も行いながら、隙のない美しさを放っている。レストアやモディファイは施されているのだろうか?

「エンジンは購入時にオーバーホール済みでした。オーバーフェンダーもオリジナルです。ただ、結構車体がヤレていたので、今から10年前に再度エンジンのオーバーホール、ミッション・足回りのオーバーホール・全塗装・サビとりを行いました。それから、納車時から履いていたワタナベのホイールは、黒からガンメタに再塗装しています。足回りはGABのショックと、ショップオリジナルのダウンサス。マフラーは純正タイプのステンレスマフラーを装着しています。少し甲高いサウンドがしますね」

座席は、WILLANS 製の4点式シートベルトと、R32GT-Rの純正シートに交換してある。サーキット走行に対応したものだが、そのこだわりは?

「筑波サーキットと富士スピードウェイで、スポーツ走行を楽しんでいます。R32GT-R用のシートはローポジションになるので、メーターが見やすくなるメリットがあるんです。それにホールド性が抜群なので、腰に負担が掛かりません。ロングドライブにも向いているシートですね」

GT—Rを維持していくうえでこだわっていることは?

「普段乗りできるようなコンディションを常にキープしておくことです。セルを回せば1発でエンジンがかかるし、ブレーキもちゃんと効きます。これを20年間維持してきました。手に入れたばかりの頃は、通勤でも乗っていたんですよ」

抜群のコンディションをキープしているオーナーのGT-Rだが、ここで気になるのが部品の供給状況だ。実状を伺ってみた。

「ゴム類・外装を含めてほとんど出てこないですね。ネットオークションでもしょっちゅう探してはいますが、部品価格の異常な高騰を目の当たりにしています。例えば、純正バンパーが見つかったと思ったら、予想以上に高額だったり…。だから、少しでも安く、効率良く部品をやりとりできる仲間のネットワークは、カーライフの命綱です。ハコスカGT-Rは、ノリで買うと苦労するクルマだと思います。経済的に余裕があったからといって、維持できるクルマではありません。何よりオーナー同士の『横の繋がり』が大切だと考えています」

日産は2018年、NISMOよりR32GT-Rの部品の再供給を開始している。さらにR33・R34 GT-Rの部品の再供給も決定。今後、ハコスカGT-Rの部品も復刻生産されることを切に願いたい。

オーナーがGT-Rに、最も魅力を感じている点はどこなのだろうか?

「見た目とS20型エンジンのサウンドですね。エンジンから発せられるメカニカルノイズさえ愛おしく感じます。私がサーキットに通ういちばんの理由は、GT-R同士で競りあっているときの『音の共鳴』がたまらないからなんです。気心が知れた仲間と走っていますし、お互いに走りと音の共鳴を楽しんでいます」

最後に、このクルマと今後どう接していきたいかオーナーに伺ってみた。

「もちろん、老後の楽しみとして生涯乗っていきたいです。この子と年をとっていきます。そして、これ以上のクルマの存在も望んではいません」

シンプルな言葉のなかに、幼少期からの濃密なカーライフに支えられた言葉の重みを感じた。そして、永く乗るためには「人の繋がり」が大切であることも、あらためて考えさせられる。最愛のハコスカGT-Rとのエピソードに声を弾ませるオーナーの様子に、今後のカーライフがより幸せであるようにと、願わずにはいられない取材となった。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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