国内人気No.1レースSUPER GTとは? GT500とGT300クラスのマシンやポイントシステム、レースの流れなどを解説

  • SUPER GTの2023年参戦車両の集合写真

日本のモータースポーツで最も人気を集めるカテゴリーがSUPER GTで、スタートから30年以上も続くレースシリーズ。コロナ禍までは海外ラウンドも開催されていたこともあり”全日本選手権”はかけられず、国際自動車連盟(FIA)公認のFIAインターナショナルシリーズである。

2023年シーズンもトヨタ、日産、ホンダのメーカー系チームで争われるGT500クラスの15台、メーカーのカスタマーチームやプライベートチームで争われるGT300クラスの27台、ふたつのクラス計42台による混走のレースが行われ、それぞれのクラスでドライバー、チームのチャンピオンが争われる。

今季よりカーボンニュートラル燃料(CNF)を使用し、使用するタイヤ本数を削減するなどカーボンニュートラル対応を推し進めている。

SUPER GTシリーズは、2ドアのツーリングカーをベースにした車両で、ふたりから3人のドライバーが交代して争うセミ耐久レース。
2つの速度の異なるクラスの40台を超える車両が入り混じって戦うレースは非常にスリリングであり、ピットインやドライバー交代のタイミングも絡み、他のカテゴリーと異なり結果が読みにくい手に汗握るレースシリーズに育った。
そして参戦するドライバーは国内のトップドライバーが揃い、たくさんのレースクイーンもSUPER GTの魅力に華を添えている。

  • 2023 SUPE GT第1戦鈴鹿のGT500クラスのスタートシーン

    2023 SUPE GT第1戦鈴鹿のGT500クラスのスタートシーン

  • 2023 SUPE GT第1戦鈴鹿のGT300クラスのスタートシーン

    2023 SUPE GT第1戦鈴鹿のGT300クラスのスタートシーン

トヨタ、日産、ホンダというメーカーのワークスチームが争うGT500クラスは、トヨタはGRスープラ、日産はNissan Z、ホンダはNSXとそのメーカーを代表するスポーツカーがベース車両。基本的にシャシー(モノコック)は共通で、そこにベース車両のスタイルを盛り込んでいる。
エンジンはスーパーフォーミュラと同様、各メーカーが開発した直4、2リッターターボのNRE(ニッポン・レーシング・エンジン)を搭載。足回りや補器を含むパーツ類の多くも統一の共通部品として性能の統一を図っている。

GT300クラスは、市販されているFIA GT3車両、日本独自のGT300、そしてマザーシャシー(GT300MC)が使用できる。海外メーカーのスーパーカーから、GR86やGRスープラなど国内自動車メーカーのスポーツカーまで幅広い車種が参戦している。
また車種により得意なコースも分かれていることで、シリーズを通して読めないレース展開となっている。

SUPER GTは約30年続くGTカーのトップカテゴリー

スタートするきっかけになったのは、グループA規定で争われていた全日本ツーリングカー選手権が1993年いっぱいで終了となり、その人気車両であった日産スカイラインGT-R(R32)の行き場がなくなってしまうことだった。
GT仕様のスカイラインGT-Rが1台と日産シルビア(S13)1台、そしてIMSA-GTやJSS車両との混走により、93年に全日本GT選手権(JGTC)が全3戦でスタートした。

翌94年からはGTアソシエイションが発足しシーズン途中からはトヨタ・スープラも参戦。しばらくはポルシェやフェラーリを使ったプライベーターの参戦もあった。96年にはホンダNSXが参戦し、国内3メーカーがそろい、現在もその3メーカーによる争いとなっている。

2004年の最終戦終了後にはアメリカ、カリフォルニアスピードウェイにおいてオールスター戦を開催。翌2005年からシリーズに海外ラウンドを入れたこともあり、全日本GT選手権からSUPER GTへと名称変更。同時にFIAインターナショナルシリーズとなった。

2014年にはドイツ・ツーリングカー・マスターズ(DTM)とGT500クラス車両をクラス1として共通化。2019年にはドイツと日本で交流戦が行われたが、DTMは車両をFIA GT3へ変更し、共通車両でのレースは交流戦以外日の目を見ることはなかった。

GT300クラスは、国内外の車両を使用したプライベーターによるレース展開が繰り広げられたが、2012年にFIA GT3車両の使用ができるようになった。そしてJAF GT300(現行のGT300)、MCとの性能調整(BoP)が行われ接近戦を演じられるようにしている。

ドライバーについてはスタート当初は1~2名で、ドライバー交代なしということもあったが、現在では基本的に2名で、長いレースでは3名までが認められている。

レース距離は、コロナ禍以前は500km、800km(500マイル)、1000kmといった長距離戦もあったが、今年は開幕戦岡山、第6戦SUGO、最終戦もてぎが300kmでその他は450kmで行われる。

SUPER GTの車両規則 最速のGTカー「GT500」と車種が豊富な「GT300」

GT500の参戦車両

GT500車両規定に則り、ベース車両になっているのは下記の通り。

  • トヨタ:GRスープラ
  • 日産:Nissan Z
  • ホンダ:NSX

共通モノコック&共通パーツの使用

GT500の車両は、共通のカーボン製専用モノコックを使用する。またトランスミッション、ドライブシャフト、リヤウィング、ECU等電子部品などは共通のパーツを使用することで、性能の均衡化とコストダウンを図っている。

エンジン、駆動形式

エンジンは直4、2リットル直噴ターボのNRE(ニッポン・レーシング・エンジン)で、各メーカーは規定に沿ったエンジンを製作して搭載する。年間に使用できるエンジンは2基までで、トラブル等でそれ以上を使用するとペナルティが科せられる。

エンジンはフロントに搭載しリヤ駆動に統一(市販車ではミッドシップのNSXもFR化)。

空力と改良の凍結

フロントスポイラー、アンダーフロア、リアディフューザーは指定された形状、リアウイングは共通部品を使用しなければならない。
前後のホイールアーチやホイールセンターから下の部分、フロントのフリックボックスやドア下のラテラルダクトのスタイルやデザインは開幕戦以降改良が凍結される(2023年も昨春以降凍結中)。したがってシーズンで改良ができるのは、主にエンジンとタイヤだけということになる。

GT300の車両の種類

GT300クラス車両は、以下の3種類がある。

  • GT300
  • GT300MC
  • FIA GT3

GT300はベース車両の車室部分を使用して仕立てたレーシングカー。
GT300MCはモノコックとエンジンなどが共通でオリジナルのマシンを作ることができる車両。
GT300とGT300MCは車両の改造やパーツの交換が可能。ただし、リアウイングは1シーズン1種類、フロントカナードは1シーズン2種類と使用は制限される。

FIA GT3は世界のメーカーが販売しているレース用車両で、パーツの交換や改造はできない。

タイヤ

タイヤの銘柄は自由で、GT500/GT300クラスともブリヂストン、横浜ゴム、ダンロップ、ミシュランが供給している。1レースで使用できるタイヤは今季から本数が減り、ドライタイヤが300kmレースで5セット、450kmレースで6セット(予定)となり、サーキットにどのような性格のタイヤを持ち込むのかがカギになる。

カーボンニュートラルフューエル

また今季よりカーボンニュートラル化を推進するために、カーボンニュートラルフューエル(CNF)を他のレースに先駆けて採用することとした。開幕戦ではGT500クラスが、また第3戦鈴鹿からはGT300クラスもCNFを使用することとした。

サクセスウェイト制でスリリングなチャンピオン争いが展開

SUPER GTを楽しむためのレースに関するルールをお届けしよう。

ポイントシステム

ドライバーポイント(GT500/GT300とも同じ)

1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
20 15 11 8 6 5 4 3 2 1
レース距離が700km以上の場合
25 18 13 10 8 6 5 4 3 2
予選ポールポジション : 1pt

チーム決勝順位(GT500/GT300とも同じ)

1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
20 15 11 8 6 5 4 3 2 1
レース距離が700km以上の場合
25 18 13 10 8 6 5 4 3 2

チーム決勝周回ポイント

トップと同一周回 1周遅れ 2周遅れ以上 3周遅れ以上
GT500 3 2 1
GT300 3 3 2 1

選手権で争われるのはGT500/300クラス共にドライバー部門、チーム部門。ドライバー部門のポイントは1位から10位まで順に与えられ、予選でポールポジションを獲得すると1点が与えられる。年間を通して最もポイントを獲得したドライバーがチャンピオンとなる。

チーム部門は1位から10位まで順に点が与えられ、さらに完走したうえでトップと同一周回や1周、2周、3周以上の遅れごとに点が追加される。年間を通してすべてのポイントの合計で争われるため、確実にポイントを獲得することが重要となる。

  • 2022年のGT500でドライバー、チームともダブルタイトルを獲得した平峰 一貴、ベルトラン・バゲットとTEAM IMPUL

    2022年のGT500でドライバー、チームともダブルタイトルを獲得した平峰 一貴、ベルトラン・バゲットとTEAM IMPUL

公式予選

公式予選は基本的に走行時間10分ごとのノックアウト方式で実施される。Q1はGT300クラスはA、Bの2組に分けられそれぞれ上位8台がQ2に進出。GT500クラスのQ1は上位8台がQ2に進出できる。
Q2はGT300クラスが16台、GT500クラスが8台で上位を争い、これで決勝のグリッドが決定となる。

使用できるタイヤはQ1とQ2それぞれ1セットずつで、ウェット宣言が出された場合は、ウェット(レイン)タイヤへの変更が許可される。

決勝レース

決勝レースはセーフティカー先導のフォーメーションラップからのローリングスタートで始まるが、シグナルがグリーンになってもスタートラインを越えるまでは、前の車両を追い越すことはできない。
ドライバー交代のためのピットインは300kmレースでは1回、450kmレースでは2回義務付け。またひとりのドライバーがレースの2/3を超えて運転することはできない。
タイヤ交換は義務付けではない(距離によっては大会ごとに指定する場合もある)。

FCY(フルコースイエロー)

アクシデントなどがあった場合、安全上の理由でフルコースイエロー(FCY)が導入されることがある。FCY中、コース上の車両は全車80km/hに制限される。FCY中は追い越し禁止、原則ピットレーン侵入禁止となる。

セーフティカー(SC)

FCYからセーフティカー(SC)導入となることもあり、この場合はSCが先頭車両の前に入り、全車追い越し禁止となりSCの隊列についていかなければならない。SC先導の走行も周回数に含まれる。
SCは後続の隊列が整ったらスタートラインでいったん停止し、GT500クラスイン側、GT300クラスアウト側に分かれて整列。各車両の停止が始まるとSCが走り始め、GT500クラス、GT300クラスの順に隊列走行を行う。
コース上の安全が確認されると、SCがフラッシュランプの消灯、コース上から退去し、グリーンシグナルとなったスタートラインを超えるとレースが再開する。

  • セーフティカーが出動し、ホームストレートで整列している様子

    セーフティカーが出動し、ホームストレートで整列している様子

サクセスウエイト

SUPER GTでは、サクセスウェイト制を採用しており、レースの結果により第2~6戦はウェイトを搭載しなければならない。重さはGT500クラスがポイントの倍(kg)、GT300クラスはポイントの3倍(kg)。ウェイトの上限は100kgだが、数値上の累計は行われる。

第1戦:搭載なし
第2戦~第6戦:ドライバーズポイントにたいして、GT500クラスは「2倍」、GT300クラスは「3倍」のウェイト
第7戦:ドライバーズポイントにたいして、GT500クラスは「1倍」、GT300クラスは「1.5倍」のウェイト
第8戦:サクセスウェイトは適用されない

GT500クラスではサクセスウェイトが51kg以上となった場合は、競技の安全性が考慮され燃料流量リストリクターとウェイトを併用した調整が行われる。

  • サイドウインドウ後方にハンデウェイトのステッカーが貼られている

    サイドウインドウ後方にハンデウェイトのステッカーが貼られている

現地観戦には場内限定ライブ配信アプリ「Grooview Multi」が便利

実際に現場で観戦できるのは各サーキットのスタンドやコースサイドからとなる。お気に入りの場所で腰を据えて楽しむのも良し、数か所のポイントを移動して撮影するのも良し。いろいろな楽しみ方があるだろう。最近はテント持参でバーベキューをしながらレースを楽しむファンも増えている。

また、サーキット現地で観戦する方向けに、場内限定とはなるがライブ配信アプリ「Grooview Multi」を通じてレース中継やラップタイムのタイミングモニターを視聴することもできるという。
ただし、電波の状況次第では繋がりにくいこともあるようだ。

【第1戦 岡山】今季もSUPER GT場内限定ライブ配信アプリ「Grooview Multi」の無料配信が決定!

テレビ中継はBS「J SPORTS」にて有料で観戦でき、「SUPER GT Live Timing」では有料とはなるがライブタイミングやコース上のマシンの位置情報などを見ることができる。
またYouTubeの「SUPER GT Official Channel」、公式SNS、さらにアプリ「Sportsnavi」の中の「SUPER GT」でもさまざまな情報を得ることができる。

(文:皆越和也 写真:GTアソシエイション)

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