『どうしてこのボディカラー』コンセプトカーや新型車の“色”にまつわるストーリー【ジャパンモビリティショー2025】

ショーやイベントに車両を展示する場合、コンセプトを伝えたり、デザインをより良く魅せたりするために重要となる要素のひとつが“色"。
そこで今回は、自動車メーカーブースに展示されたコンセプトカーやプロトタイプモデル、また市販車のボディカラーに注目して徹底取材。どんなボディカラーが多いのか? どうしてそのカラーを選んだのか? それぞれの担当者やデザイナーに直撃してみた。

ジャパンモビリティショー2025、どんなボディカラーのクルマが多い?

まずはジャパンモビリティショー2025の自動車メーカーブースに展示されていた車両のボディカラーを集計。調査対象としたのは小型モビリティなどを除く108台だ。
その結果は、白系が一番多くて全体の25%、次いで青系が14%、シルバー/ゴールド系が13%、グレー系が10%、水色や赤系がともに8%という順番だった。

ちなみにBYDやKIAなどの中国メーカーは白系、国内自動車メーカーはグレーやシルバー、スバルやBMWは青系を多く採用。とくに白や水色はクリーンなイメージも強く、EVが増えている昨今の自動車業界を考えれば頷ける。

また、白やシルバーは、シンプルなソリッドカラーではなく、メタリックやパールなどを加えた2コート仕様だったり、艶感を抑えたマット仕様だったりと、一見シンプルに見えながらも各メーカーのこだわりが感じられた。
というわけで、気になったボディカラーの理由について、さらに深堀りしてみよう!

ボディカラー 比率
1位 白系 25%
2位 青系 14%
3位 シルバー/ゴールド系 12%
4位 グレー系 9%
5位 水色系 8%
6位 赤/ピンク系 8%
7位 緑系 6%
8位 ガンメタ系 5%
9位 ブラウン系 5%
10位 オレンジ系 3%
11位 黒系 2%
12位 紫系 2%
13位 イエロー系 1%

ジャパンモビリティショーに展示車両のボディーカラー比率

モノトーン系カラーで統一したトヨタの狙い

全体的にシルバーやゴールドなどの落ち着いたイメージのカラーで展示車両を揃えたトヨタ。その意図ついて伺ってみたところ「時代のトレンドもありますが、“あなたが主役のトヨタ"を表現した“TO YOU"というメッセージを伝えるため、ブース全体の世界観を統一しています」という話だった。
また、それはコンセプトカーや展示車両だけではなく、市販車のカラーバリエーションを考えるときも同様で、クルマの世界観を考えトーンをあわせた設定を用意することを心がけているそうだ。
トヨタグループとして数多くの車両を展示しているが、その中でも注目したのが『カローラ コンセプト』のボディカラー。照明によっては青っぽくも見えるボディカラーは『ウォーターフリーズ』と名付けられ、グレーをベースに淡いグリーンを加えているそうだ。そこには鮮やかさを抑えつつ、硬質感を際立たせることでモダンさを強調するという狙いがあるという。
この色味は、なかなか写真では伝わりにくいので、ぜひ実車を見て感じてほしい。

オレンジ・グリーン・パープルと攻めたカラーで自分らしさを表現

全体的にモノトーンのボディカラーが多い中、オレンジ・グリーン・パープルと個性全開の車両を並べていたのはメルセデス・ベンツ。
コンセプトカーの『Concept AMG XX』は、1960~1970年代にかけて開発された幻のコンセプトカー『C111』のデフォルト色だったオレンジを採用し、過去と現在のメルセデス・ベンツの在り方を表現。
また、GTは専用開発された限定色『グリーンヘルマグノ』、Gクラスは日本では未設定の『ノバパープルグラファイトマグノ』の車両を展示。どちらも個性的なカラーで艶を抑えたマット仕様と、会場内で一際目立っていた。
派手なボディカラーのクルマを並べた理由について質問すると「個人の好みにあわせてクルマを選んでほしい。それを伝えるために派手なカラーリングの車両を展示することにしました」という答えが返ってきた。

『開発コンセプト✕ステージでの見え方』計算しつくされたボディカラー

三菱自動車の世界初公開となるコンセプトカー『エバンス コンセプト』は、砂漠やオアシスなどをイメージしつつ、冒険を想起させる赤みの強いゴールド系カラー『テラコッタ』を採用。ちなみにテラコッタとは、イタリア語で“焼いた土"を意味し、いわゆる素焼きの陶器に近い色味となる。さらに、照明のあたるステージ上でボディデザインを正確に伝えるためにマットカラーを採用しているという。
ちなみにマットカラーは欧州スーパースポーツでも人気の艶消しボディカラーだが、完全な艶消しカラーは立体感が薄れてボディのディテールが出にくいため、ショー展示では不向きという一面もある。
そこで三菱では、メタリック系のテラコッタカラー+ハーフマットというボディカラーを選択。具体的には艶感が50%程度になるハーフマットを採用し、色味や立体感を絶妙なバランスで表現しているとのこと。
これによって、冒険というコンセプトと、ステージ上で美しく魅せることを両立しているというわけだ。

軽やかさや温かみを表現するためにイエローをプラス

ダイハツが次世代の軽自動車として出展したコンセプトカー『K-VISON』は、一見するとシルバーっぽいが、そこにはデザイナーのこだわりが詰まっていた。
パッと見はシンプルなシルバーに見えるが、デザイン担当者いわく「普通のシルバーだと金属感が強すぎて、ちょっと硬質的な印象になってしまうんですよね。身近な軽自動車ですし、EVのコンセプトカーなので、軽やかさや温かみを伝えたい。そこで悩んだんですよ」と、苦労を語る。最終的には、シルバーのベースカラーにイエローパールを加え、独特の柔らかい雰囲気を演出しているそうだ。
また、シルバー単色では陰影がぼんやりとしてキャラクターラインが伝わりにくいが、イエローパールの2コート塗装にすることで、光が当たると反射が生まれエッジも見えやすくなるという効果も得られたという。
ほかにも白系、グレー系、シルバー系の展示車両を深掘りしていくと、シンプルなボディカラーを個性的に輝かせるため、メタリックやパールの使い方にこだわるデザイナーが多かったように感じた。

ヌルっとしたデジタル感のある塗装表現に注目!

爽やかながら深い青の質感が印象的だったスズキのコンセプトカー『ビジョンeスカイ』。
そのボディカラーのこだわりについてデザイン担当者に伺うと「EVなのでデジタルな雰囲気を目指しました。人工的な青色と言いますが、ウレタンやポリエステルのような人工素材が発するヌルっとした質感を持った青にこだわっています!」との返答。
具体的には、ヌルっとした印象を出すために赤みのある青をベースに選択。さらに先進感を表現するためにグリーンのガラスフレークを追加することで、光があたるとギラギラと輝き、フェンダーなどのエッジが際立つようなカラーをチョイスしたそうだ。
また、ルーフは軽やかなイメージを出すために、光が強くあたると白く見えるくらい明るめのライトグレーを選択。ホイール部分もルーフと同じライトグレーにすることで統一感を高め、どちらもボディ同様に緑色の偏光塗料を使うことで、全体的にハイライトが強調されるようなイメージに仕上げているそうだ。
EVというと、青や白、グリーンなどのイメージが強いが、デザイナーはそのなかでも個性を演出するために努力を重ねていることが感じられた。

伝統と象徴、そして革新を目指した新生WRブルー

スバルが世界初公開した『パフォーマンスE SITコンセプト』。スバルの次世代パフォーマンスシーンを表現したBEVベースのコンセプトカーで、デザインはもちろん『E WRブルー』というボディカラーでも伝統と進化を表現している。
スバル伝統のWRブルーをベースにしながら、艶感を抑えたハーフマットにすることで、従来のソリットカラーと現代的な雰囲気をミックス。さらにSTIブランドを象徴するゴールドのホイールやレッドのブレーキキャリパーを差し色として採用しているところも見どころだ。
ちなみにスバルは、そのほかの車両もブルーをベースに濃淡や艶感で差をつけ、スバルのブランドカラーでブースを埋め尽くしていた。

国が変わればイメージカラーも変わる!?日本では赤の理由

市販車で注目したのはホンダ『プレリュード』。2年前のジャパンモビリティショー2023ではシンプルな白のボディカラーのコンセプカーがお披露目されたが、市販モデルではレッドをメインカラーに据えている。
その理由について伺ってみると「2年前のコンセプトモデル発表時は、色に染めることなく、純粋なスタイリングを伝えたかったので白にしました。ただ、日本では歴代モデルのイメージもあり、プレリュードに対して赤を連想する方もたくさんいらっしゃいます。そこで市販仕様では赤をメインカラーに採用しました」と経緯を語る。
ただ、国が変わればイメージも変わるそうで、例えば欧州では水色に近い鮮やかなブルーを積極的にプロモーションに使っているそうだ。

というわけで、みなさんもジャパンモビリティショー2025会場を訪れる際には、ぜひクルマの色にも注目してみよう! 説明員さんに「どうしてこの色なんですか?」と質問してみると、面白いエピソードや、カーデザイナーのこだわりを知ることができるかも!?

(文:三木宏章)

ジャパンモビリティショー2025