トヨタが東京ビッグサイト南館をジャック!　「トヨタ館」を自称する最大級エリアは、トヨタに宿る物作りの魂が盛りだくさん【ジャパンモビリティショー2025】

今回のジャパンモビリティショー2025会場で、ひと際話題を呼んでいたのが、南館ワンフロアに集合したトヨタグループ。トヨタやレクサス、ダイハツに加え、新たに独立したセンチュリーの4ブランドが並んでプレスカンファレンスを開催。ブースにはトヨタの物作りの原点となる豊田自動織機やトヨダ AA型などを展示しながら、これまでの歴史とともにそれぞれの目指すブランドの形を表現している。

2025年、トヨタが掲げる新たなキーワードは“To You"。以前からモビリティ・フォー・オールを合言葉に、さまざまな取り組みをおこなってきているが、ここで一つ疑問となったのが「For Allとはすべての人に向けた最大公約数」ではないだろうかということ。しかし、物作りに際しては誰かの助けになりたい、誰かを笑顔にしたいという考え。そんな思いを形にしたのが歴代「カローラ」。誰かのためのクルマ作りの象徴なのである。
新たに公開されたカローラコンセプトは、そんな思いを詰め込んだモデル。EVからHV、エンジンまで動力源を想定し、さらにみんなが乗りたくなるようなかっこいいクルマに仕上げているのだ。

続いて紹介されたのはダイハツ。“小さいからこそできる"のキーワードとともに、登場したのはミゼットX。1950年代に誕生した初代ミゼットの発想を受け継ぎ、小さいことを最大限に活かした身近な移動を再発明しているのだ。解説の随所では「ダイハツメイ」のキャッチフレーズを多用。ダイハツ+発明を組み合わせることで、ないものを作るというダイハツの精神を表している。

さらにダイハツでは軽オープンの2台のコペンも壇上にディスプレイしている。ちなみに、既存モデルのコペンは英語表記でCOPEN、こちらのコンセプトカーはK-OPEN。1台は一昨年のジャパンモビリティショーで登場し、話題を呼んだコンセプトカー「ビジョンコペン」をさらに進化させたモデル。そして、もう1台が先日生産の終了が発表されたLA400Kの限定車をベースに、エンジンを縦置きに変更したFR化が行なわれているもの。豊田章男代表取締役会長がダイハツのマスタードライバーに就任したことによって、パワー/ドライブトレインを具体化して大幅な進化を遂げている(?)というわけだ。

これまでトヨタのフラッグシップを務めていたレクサスは、センチュリーがその上を担うことで自由度が増したとのこと。そのためこれまでにないチャレンジングなモデルの開発にも着手できるようになったのは執行役員のサイモン・ハンフリーズ氏。

その言葉を表すのは6輪ミニバンのLSコンセプト。もちろん6輪は奇を衒ったスタイリングではなく、「ラグジュアリースペース」の発想に基づき、車内空間を広げるために小径タイヤを選択することがきっかけ。径を下げたことでタイヤにかかる荷重の負担を分散させているというわけ。フラッグシップに求められるオーセンティックなスタイリングとは違う、新たな発想による物作りを可能にしているのだ。

新たに独立したブランドとして、トヨタの最上級に位置するセンチュリーは、豊田章男代表取締役会長が登壇。1963年に開発が開始された初代センチュリーからはじまり、脈々と受け継がれた伝統はまさにトヨタが掲げる物作りの精神そのもの。しかし、伝統だけにこだわるのではなく、2023年にはSUVを、そして今回のモビリティショーでは、最新モデル「CENTURY Concept Model」をワールドプレミアとしてアンベール。トヨタの一ブランドとして再始動したセンチュリーは、当初のコンセプトでもある「ジャパンプライド」を担う存在として進化し続けるのである。

トヨタブランドが一堂に会した南館は、もはや「トヨタグループ館」と呼べるボリュームゾーン。プレスカンファレンス終了時には、豊田章男代表取締役会長を中心にブランドの垣根を越えたチームトヨタが集合し記念撮影も行なわれていた。豊田自動織機の開発時にあったトヨタ流の物作り精神は、このチームトヨタへと着実に受け継がれ、時代とともに進化し続けているというわけだ。

（文：渡辺大輔）