PHEVで東京~広島の往復1500キロを走ってみた!(後編)…安東弘樹連載コラム
東京~広島往復1500KmをPHEV(プラグインハイブリッド)のクルマで走破し、実際の燃費や使い勝手を検証する、という記事の後編です。
前編では往路、東名高速道路の海老名サービスエリアまでの経過を、お伝えしましたが、後編では、その後の模様や最終的な結果をお知らせします。
海老名SAからはハイブリッドモードで走行、でもバッテリー残量は0に
海老名サービスエリアで、撮影用のGo proを設置し、すぐにスタート。そこからは所々で動画を撮影し、その度に、燃費の変化やクルマの挙動、装備や乗り心地等についてコメントしながらの走行になりました。
何だかアナウンサーとしてロケをやっている気分です。
もちろん、ディレクターやカメラマンがいる訳ではありませんが、少し緊張しながらの旅になりました。
今回、お借りしたDS7ですが、中型のSUV(日本では大きい部類に入るかもしれませんが)で1940Kgとかなりの重量がありますが、モーターだけで市街地を走っている時もそのトルクのお陰で、重量を感じることはありません。しかし、高速道路をエンジンだけで走っている時に追い越しで加速する様な場面では、1.6Lという小さな排気量を感じた、というのが正直な感想です。
ちなみに海老名サービスエリアまでは、5種類ある走行モードのうちデフォルトであるEVモードで走り、殆どモーターだけで走ってきました。しかし駆動用のバッテリーが減ってきたこともあり、その後は、クルマが最も効率の良い走行状態を考える、ハイブリッドモードで走ることにしました。
このクルマの走行モードを御紹介すると、
① モーター走行を最優先にするEVモード
② 効率をクルマが考えてモーター、エンジンを切り替えながら走るハイブリッドモード
③ 乗り心地重視のコンフォートモード
④ 悪路などにおいてモーターで後輪を駆動させる4WDモード
⑤ 足も引き締め、システム馬力300PS、520Nmをフルに生かすスポーツモード
の5つで、コンソールのスウィッチで切り替えられます。
今回は燃費を主に知りたいので満充電の時にはEVモード、高速では、一度試しにスポーツモードにしましたが、基本的にはハイブリッドモードで走ることにしました。
蛇足ですが海老名を出て快調に走りながらこのクルマのシートの良さを感じました。流石フランス車、ドイツ車のガッチリとしたシートとは違うアプローチで、しっかりとソフトに身体を支えてくれます。
また私は長距離を走る時は音楽を聴くのですが、今回、なぜか自前のiPodが、接続は出来るのに、音が出ず、走っている地域のラジオを聴きながら走ることにしました。いまだに、どうして再生できなかったのか分かりませんが私のiPodが古かったからでしょうか…。
あ、話を本題に戻しましょう!
東名高速道路から新東名高速道路に乗り替え、間もなくして制限速度120Km/h区間に入ります。
さあ。まずは120キロで走った時のクルマの状況ですが、やはり見る見るうちにバッテリー残量が減り、120キロ区間に入って暫くして、0になりました。
しかし、そこからも、メーターのエネルギー、駆動表示を見ると時々、後輪も駆動しており、残量表示が0になっても後輪を場面によって駆動していることが分かります。
しかし、基本的にはエンジンのみで走っており、今度はガソリンの燃料計が徐々に減っていきました。
航続距離は順調に?減っていきます。新東名高速の岡崎サービスエリアで、初めての休憩(海老名ではカメラを設置しただけ)。
ここでは私の好きな、伊藤和四五郎商店の親子丼を食べ、ドライバーのみ燃料補給をして、今日の目的地、神戸を目指します。
順調に走行し、新東名から伊勢湾道路、新名神高速を経て京都も通過(正直、通過するだけ、というのが残念!)神戸のホテルに到着しました。時刻は17時前。まだ明るい内に着けたので神戸の夕景を楽しめました。
日常は街中走行、時々長距離走る人にはPHEVがお薦めできることを確信
神戸のホテル到着時のガソリン残量による航続距離は70キロで警告ランプが点いていて駆動用バッテリーの残量はずっと0のままです。ここまでの走行距離は515キロ。燃料は給油せずに、予約していた普通充電器で充電します。ホテルに設置してある充電器は2つしかない上、一つは故障していました。ホテルを予約する時も、EVの充電器をお借りしたい、と言ったら、「携帯の充電器ですか?」と訊き返されてしまったくらいですから、まだ需要が少ないのでしょう。充電インフラが脆弱だから、PHEVやEVが普及しないのか、その逆なのか。しかし現実的にインフラが整っていないから、まだ購入に踏み切れない、という人も多いのではないかと思います。
このご時世で破格の価格で泊まれましたが、老舗の高級ホテルでさえ、このような状況ですから、インフラ整備は急務だと感じました。
翌日、ちゃんと充電できているか緊張しながら充電器を外し、クルマを起動させたら…、ちゃんと充電されていました。メーターの表示は満タン、モーターによる航続距離は40キロになっていました。最初にクルマをお借りした時と同じ距離です。
ホテルを出て都市高速を経て山陽自動車道に入ります。
バッテリーが満タンになったことで、警告灯が点いていたのにガソリンを入れなかったのですが、それというのも、高速道路に乗ってもしばらく、モーターだけで走っていたお陰でガソリンメーターの航続距離が70キロから90キロに増えていたので、しばらく、そのまま走ってみたのです。
山陽自動車道に入って暫く走り、バッテリーが減るのに従ってエンジンも掛かるようになり、ガソリン航続距離が50キロ。バッテリー航続距離が10キロになった所で、給油することにしました。場所は兵庫県の三木サービスエリア。いつもは軽油を入れることが多いので、セルフのガススタンドでしたので、間違えない様に「ハイオク」を選び、給油しました。
自分のディーゼルのクルマの燃料タンクは60Lなので、その感覚で給油していたら、かなり早く、給油が、止まりました。あれ、早いな、と思ったら35Lちょうどで止まったようです。
後で調べたら、まあまあの大きさのSUVにもかかわらず燃料タンクは43Lと、これは同車の他のエンジン車より小さいことが分かりました。流石、PHEV!と言って良いでしょう。
気になる燃費ですが、目黒から559キロ走って35Lの給油。計算すると1ℓ当たり15.97Kmという数字。
このサイズのSUVとしては確かに優秀で、少なくともガソリンエンジンの同クラスのクルマが、この燃費を達成するのは、まず不可能でしょう。
高速道路をほとんど走って、この燃費であれば、普段は短距離走行が中心で休みの時だけ、長距離を走る、という方には、PHEVを勧められるかなと感じました。
更に山陽道を走り続け、しまなみ海道、尾道道経由で今回の目的地、広島県尾道市に到着しました。
ホテルのEV充電器は2台のみ、予約していたから問題はなかったが・・・
仕事を終え、そこから今日の宿泊地、京都を目指します。
京都のホテルも充電器がある所を選んだら、奇しくも神戸と同じブランドのホテルになりました。夜遅い時間に到着しましたが、ホテルのスタッフの方は笑顔で充電器に案内して下さり、今回2度目の充電です。しかし、このホテルも2つしか充電器は無く、将来、もう少しEVが増えてきた時、日本の宿泊施設は、急に対応しなければならなくなるであろうことが容易に想像できます。
しかも今回は神戸と京都という大都市でさえ充電器があるホテルを探すのに、相当苦労しましたので、他の先進国と比べた日本の状況に危惧を覚えました。
一挙に電動化する必要はありませんし、まだ日本では、産業界そのものが、その準備ができていませんので、不可能だとも思います。しかし、それにしても、充電設備の普及の遅さは、看過できません。これから様々な機会でアピールしていこうかと思います。
充電が始まった時に点滅する充電口のグリーンのライトを確認して安心して部屋に戻り、眠りにつきました。
さて翌日、無事に満充電になっていることを確認し、出発。
出発時、バッテリーでの航続距離が42キロ、ガソリンでの航続距離が105キロになっていました。
京都に泊まったのに何も観ずに一路、東京を目指します。17時にはクルマを目黒で返却しなければなりません。
ナビアプリによると、5時間40分掛かるとのことでしたので、余裕を持って10時にホテルを出ました。
目黒までは445キロ程あり、もう一度給油はしなければなりませんので、その時点での燃費も楽しみです。
京都のホテルを出る時、エンジンはやはり掛かりません。結局、京都東インターチェンジまでの7キロ余り、全くエンジンが掛からなかったことに改めて感銘を受けました。大きな目でみれば、このクルマが環境負荷を与えなかったとは言えませんが、美しい京都の街並みを走っている時に排気ガスを一切、出さなかったというのは気分としては良いものです。
その後、高速道路に入って30キロ程走ったところでエンジンが掛かり、ガソリンが減り始めて、私が往路で親子丼を食べた岡崎サービスエリアで給油するまでの153キロをバッテリー航続距離42キロとガソリン航続距離105キロの状態から、バッテリー0キロ、ガソリン65キロの状態になるまで、で走り切りました。
給油時の燃費は628Km走って、39ℓ弱の給油、16,16Km/ℓという数字です。
1回目の給油時より少し良くなりましたが、ほとんど変わりません。要は高速道路長距離走行時の燃費は16Km/ℓ前後、ということでしょう。
ガソリンを燃料にする、日本では大柄な部類に入るSUVで600キロ以上無給油で走る、というのは中々、新鮮です。
後は目黒を目指して一気に走り、結局その後は休憩なしで、早めに目的地に到着しました。
それでは今回の燃費の最終結果を確認しましょう。
〇総走行距離1480Km
〇総燃料量96.64ℓ
〇総合燃費は15.31km/ℓ
という結果になりました!
2回の給油時の燃費が16Km/ℓ前後だったにも関わらず、最後、急に燃費が落ちたのは、新東名高速が珍しく全線にわたり交通量が少なく、制限速度120Km/h区間、駆動用バッテリーが0の状態のままエンジンだけで、この速度で巡航したせいではないかと想像できます。
結論として、PHEVでの長距離高速走行の燃費は想像を超えて良かったという感想でした。
しかし、改めて日本の充電インフラの脆弱さを感じるとともに、日本に於いてはPHEVも急速充電に対応して欲しいとも思います。
高速道路で休憩する時、急速充電器で30分充電出来たら、高速道路に於いてもエンジンを遣わずに走行出来る距離は伸びるでしょう。
しかし、各サービスエリアで基本一つしかない急速充電器をエンジンも付いているPHEVで占拠したら電気でしか走れないEVに申し訳ないと私は思ってしまいそうです。
実際にEVを一週間、借りて高速道路を使って長距離を走った際、バッテリー残量が減ってサービスエリアで充電しようと思ったら、先客が居て、充電できず、次のサービスエリアまで、本当に電欠ギリギリでたどり着いた、という経験が有ります。その時の先客はEVでしたが、もしPHEVだったら、イラっとしたかもしれません(笑)。
そっちは給油で良いじゃないですか!と心の中で叫んだでしょう(笑)
そんな風にならない様に、サービスエリアにはせめて3つ位の急速充電器と急速充電に対応していないPHEV用に普通充電器を2つ程設置して欲しいものです。そうなれば、EV対PHEVの充電器争奪戦も避けられます。
今回借りたPHEVは6kw200Vの充電器であれば2~3時間で満充電になりますので1時間の休憩なら半分の充電が可能。これは、かなり助かります。
欧米の幹線道路や高速道路のパーキングにズラッと充電器が並んでいる光景をインターネットで見ると、つくづく羨ましくなります。
様々な業界団体が、急激な電動化に危惧を表明していますが、保守的な日本人ですから、急激な電動化は進まないでしょう。
でも緩やかな電動化は進まざるを得ませんので、今のインフラ状況が健全であるとは言えません。
今回、PHEVの存在意義を再認識したのと同時にインフラ拡充の必要性も強く感じました。
日本ではEVもPHEVも高価なものが殆どで普及率も高くはありませんが、一度、その乗り味や、使い方によってランニングコストが、かなり抑えられることを知ったら、多くの人が魅了される可能性を秘めています。
EVは不安だけどPHEVなら、という方!とにかく一度、試してみて下さい。
もしかしたら新しいクルマライフの扉が開くかもしれませんよ!
安東 弘樹
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