特定のドライバー、チームを応援するようになったモータースポーツの沼…安東弘樹連載コラム

4月16日(日)、最高の日曜日になりました。

何故か。それは、私が応援していたチーム、ドライバーが揃って優勝したからです。

勿論、モータースポーツの世界においてですが、三つの競技で、同じ日(正確に言うと日本時間では2日間)に3回、喜ぶ事になったのです!

一つ目はSUPER GTのGT500クラス、二つ目は同じくSUPER GTのGT300クラス、そして最後、三つ目は、FIA世界耐久選手権(以下WEC)です。

ポールtoウィンに大逆転勝利。雨天の中のSUPER GT

まずはGT500クラスから

  • 23号車 MOTUL AUTECH Z/NISMO(写真:GTアソシエイション)

  • GT500クラス優勝 NISMO 松田次生選手/ロニー・クインタレッリ選手(写真:GTアソシエイション)

SUPER GTのGT500クラスでは、前の週と当日のレーススタート直前の放送(収録分を放送)で、私が担当しているラジオ番組に御出演頂き、これまでもイベントなどで御世話になっていた松田次生選手がポールtoウィン!

NISMO MOTUL AUTECH Z 23号車(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)がポールポジションから赤旗続出の雨天で荒れたレースを制し、見事な優勝を飾りました。これで松田選手は通算24勝!

収録時にも、「この日は優勝している筈です!」と仰っていましたが、その通りになりました!いや正に有言実行!痺れました。

実は収録日に、現場のTBSに、鮮やかな黄色いご自分の所有する新しい日産フェアレディZでお越し頂いており、地下の駐車場で、クルマを見せて頂きました。GT-Rに代わって去年からマシンがZになり、昨年は悔しい思いをしただけに今年に掛ける想いは一段と強い、と、お話しいただいていただけに、感無量になってしまいました。

  • 通算24勝目を挙げたNISMO松田次生選手 (写真:GTアソシエイション)

GT500クラスに関して、これまで私は特に、特定のチームやドライバーを応援しておらず、その闘い自体を楽しみ、有る意味、全チーム・全ドライバーを応援していたとも言えます。

しかし、今年の2月に、あるイベントで松田選手のトークショーのMCを担当させて頂き、市販の愛車、GT-RやZに対する想いやマニアぶり、そして運転モラルや、自動車に対する考え方に完全に共感。その上、自分の番組にSUPER GT開幕直前というタイミングでの御出演を快諾して頂いた事も含め、俄然、応援させて頂く気持ちになったのです。

勿論、以前から折に触れ、トークショーなどで御世話になっており、そのマニアぶりは存じ上げてはいましたが、やはり番組でじっくりお話を伺うと、より深く、松田さんの「想い」を知る事が出来て、益々、クルマに掛ける情熱や知識、思想に至るまで、共感が増しました。

特に、私が感銘を受けたのは、普段は本当に温厚で、人に優しく、気を遣い、誰からも好かれる性格の松田さんが、レースになると、アグレッシブになる所です。

しかもアグレッシブとはいえ、ダーティーな走りではなく、常にクリーンなバトルを正々堂々とする、という人間性にも惚れました。番組では収録が終わった後もクルマ談義が続き、私が自分の次の仕事に遅れそうになった程でした(笑)

そんな事もあり、今年のGT500クラスは完全に松田次生選手/ロニー・クインタレッリ選手のZを応援させて頂いている、という次第です。

GT300クラス

  • 18号車 NSX GT3/ TEAM UPGARAGE

  • GT300クラス優勝 TEAM UPGARAGE 小林崇志選手/小出峻選手(写真:GTアソシエイション)

そしてGT300クラスでは番組絡み、という意味で松田さんにも御出演頂いた、TBSラジオ「ガレージ・ヒーローズ」という番組のスポンサーである、UP GARAGEさんのチームを勿論ずっと応援しています。

そのTEAM UPGARAGEのUPGARAGE NSX GT3を駆る、小林崇志選手と小出峻選手がなんと!予選総合18位からの大逆転優勝!これにも興奮しました。

前述しましたが、雨で大荒れになったレースで戦術も含めて見事なレース運びで、速さだけでは無い、強さを発揮しての勝利となったのです。

映像で、お二人が歓喜の雄叫びを上げる姿を見た時には、感動を禁じ得ませんでした。お二人とも普段は、あまり感情を表に出すタイプでは無いので、尚更です。

UPGARAGEさんは番組のスポンサーをしてくださっているだけでなく、会社で主催している富士スピードウェイでの走行会にもご招待いただいたり、時間が有る時は会長(TEAM UPGARAGEの代表兼監督)や社長が収録に立ち会ってくださったりと、「スポンサーと番組」という枠を越えて御世話になっているだけに、こちらも感無量でした。

この二つで、すっかりボルテージが上がっていたのにも関わらず、日本時間の16日(日)夜20時スタートのWEC(詳しくは以前のコラムをご参照下さい)、第2戦ポルティマオ6時間レースをテレビで観戦し始めてしまったのです。

寝られるわけがないWEC観戦

  • 8号車 GR010 HYBRID /TOYOTA GAZOO Racing(写真:トヨタ自動車株式会社)

そう、20時スタート、という事は6時間レースですのでレースが終わるのは翌17日(月)の午前2時…。

次の日は午後からのお仕事でしたが、その前に事情があり、割と朝早い時間に病院で検査をしなければならなかった為、レースの途中で就寝しようと思っていました。

しかし…、予選でTOYOTA GAZOO Racing GR010の8号車(ドライバーはセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮 選手)が、見事なポールポジションを獲得!

7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス 選手)もフロントローで続いていただけに(第一戦のポールはフェラーリ)レースが始まってしまったら、中々、ベッドに行く気になれません。

8号車ははじめ、7号車と更に後ろから来たフェラーリにも抜かれ、3位にまで後退しますが、すぐに2位を奪取。これはTOYOTAのワンツーフィニッシュか!?とワクワクしてしまい、益々、テレビから離れられません…。その後、8号車が前に出て、8号車→7号車の順番に。

しかし1時間20分が過ぎた辺りで、7号車のドライブシャフトに付けられたセンサー(性能を監視する為のもの)が異常をきたし、走行には問題は無いもののドライブシャフトごと交換しなければならなくなり、クラス最後尾に後退する事になってしまいました。マシントラブルではないだけに、これは本当に残念でしたが、仕方がありません。

8号車は快走を続けます。やはり寝られません…。

スタートドライバー、ブエミ選手から平川選手に交代、見事な走りで2番手のフェラーリに更に差を付けます、、、寝られる訳がありません…。

他のクラス、LMP2、LMGTE Amは接戦で、こちらも違う意味で見逃せません。

個人的には、LMGTE Amクラスの女性3人のドライバーチーム、アイアン・デイムス(ピンクの!ポルシェ911 RSR-19)が、正に鬼神の走りを見せ、ずっと3位以内を走っていた為、こちらからも目が離せなくなり、完全にハマってしまいました!

気は焦りますが、時間は刻々と過ぎていきます。しかし、24時を回る頃には開き直ってきました。

寝不足で検査を受けるのは、明らかに良くない事でしょうが、これは仕方がありません。気になって眠れない可能性もあるので、と自分に言い訳をして、最後まで観戦する事にしました。隣には翌日、学校を控える長男、という強い?味方もいます。

途中まで、長男に早く寝るよう促していた妻も、私と長男の姿を見て、諦めた様です。父としては、学校での居眠りを阻止するためにも、早く寝かせる義務があると分かっていても夢中になっている長男に「寝なさい」とは言えません。

二人で覚悟を決めました。

お互いに遅刻と居眠りだけはしないように堅く誓い、観戦を続けたのです。

  • 左からセバスチャン・ブエミ選手、平川亮選手、ブレンドン・ハートレー選手(写真:トヨタ自動車株式会社)

でも、その甲斐は有りました。結局、最後までTOYOTA GAZOO Racing 8号車は首位を守りきり、見事なポールtoウィンを飾りました!

これでTOYOTAはマニュファクチャラーズ・ランキングでトップを守り、ドライバーズ・ランキングでは8号車の3人がトップ、7号車の3人は3位につけています。

そしてLMGTE Amクラスの女性ドライバーチーム、アイアン・デイムスも見事に3位表彰台を獲得。

7号車は9位と残念な結果になりましたが、マシンに問題がある訳ではありませんので、これからのチャンピオンシップは、TOYOTAの2台の争いになるであろう事は推測できます。

これは今後が益々、楽しみです。

それにしても、この週末、モータースポーツに酔いしれました。しかも、私にとっては殆ど考え得る最高のリザルトだっただけに、興奮のまま僅かの時間ですが眠りにつきました。私の翌日の検査も無事、終わり、長男も遅刻・居眠りはしなかった、との事です。一応、ご報告させて頂きます(笑)

しかし、モータースポーツは素晴らしいですね!あとは如何に日本での認知度を高めていくか。楽しんでばかりではいられません。何とかしないと。という思いも強くした週末でした。

安東弘樹

(写真:株式会社GTアソシエイション、トヨタ自動車株式会社)

MORIZO on the Road