ファミリーカーの概念が多様化する中で、カローラの立ち位置を再定義【60年目のカローラ/6代目、7代目、8代目】
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6代目カローラ
1966年11月に初代が発売されて以来、多くの人に愛され続けるトヨタ カローラ。これまでに12世代が世に送り出され、派生モデルも数多く登場しています。そしてカローラは日本の、そして世界のベーシックモデルというコンセプトはぶらさずに、時代が求めるニーズを巧みに取り入れながら進化してきました。2025年11月に誕生から60年目を迎えるカローラの歴史を6回にわたって振り返っていきましょう。
FF化と高級化が進む1980年代の大衆車
クルマという製品が一般的なものになると、ユーザーは「より良いもの」を求めるようになります。これは至極当然なこと。その一つが「小型車でも車内がより広いものを」というニーズでした。
日産 サニーは1981年10月のフルモデルチェンジでFF化して居住性を高め、発売翌月の国内登録台数首位を奪還しています。ホンダはFFハッチバックの2代目シビックがヒットモデルに。シビックには3ドア/5ドアハッチバックだけでなく、セダン、さらにワゴンモデルであるシビックカントリーもラインナップされていました。
カローラはライバル車よりやや遅れて、1983年に登場した5代目モデルがFFに大転換を果たし、ヒットモデルとなりました。一方でカローラのスポーツモデルは開発コンセプトや体制を鑑みて、あえてFRのままフルモデルチェンジされたのもトピックでした。この時のAE86(カローラレビン/スプリンタートレノ)は今なお伝説のクルマとして語り継がれ、中古車相場も高値で推移しているのはみなさんご承知のとおりです。
高級路線に舵を切りスポーツモデルもFF化した6代目(1987年~1991年)
そして1980〜90年代は、人々のニーズや趣味、価値観などの多様化により、さまざまなクルマが登場。中にはかなり実験的なモデルも世に送り出されました。価値観の多様化のひとつの方向性が、高級志向です。「ハイソカー」と呼ばれるスポーティかつラグジュアリー仕様なモデルが誕生し、若者をターゲットにしたモデルでも「デートカー」と呼ばれるプレミアム感のあるモデルが人気になりました。
もちろん、この時代もハッチバックや軽自動車は大衆車の定番として庶民の生活を支えていました。大衆向けの小型セダンであるカローラはハッチバックとの差別化をしつつ、人々の高級志向にどう応えるか。その答えとなったのが1987年5月に登場した6代目カローラおよび兄弟車であるスプリンターでした。
開発テーマは「新しい車格の創造」。クラスを超えた世界のハイクオリティーモデルとしてデビューしました。6代目カローラの翌年に登場した80系マークIIを彷彿とさせる伸びやかなスタイリングが特徴で、5代目より全高を低くして全幅を広くしたワイド&ローなボディに仕立てられました。
6代目カローラの高級志向を強く感じさせるのがインテリアでした。ボディサイズの拡大で広くなった室内をフルトリム化し、表面をスムーズにして触感をよくしています。シートも厚みのあるものを採用し、座り心地の良さが高められました。
前席用のカップホルダー、シートベルトのショルダーアンカー位置を上下にスライドさせられるアジャスタブルショルダーベルトアンカー、上下それぞれ3段階の調整が可能なチルトステアリング、電動格納ミラー、文字盤がクリスタルホワイトに浮かび上がるクリスタルリングメーターや、GTにオプション設定されたパノラミックデジタルメーターなど、装備類もこれまでにないほど充実したものになりました。
エンジンは新開発の1.5L「レーザーα5A16バルブ」(5A-F型)を筆頭に、計6機種を用意。5A-F型は1.5Lクラスキャブレター付きエンジンとしてトップ(当時)となる最高出力85ps、最大トルク12.5kg-mを発揮しました。
セダン以外のボディタイプは、カローラが3ドア/5ドア、ハッチバックのカローラFX、2ドアクーペのカローラレビン、そしてワゴンとバンを用意。スプリンターは2ドアクーペのスプリンタートレノと5ドアセダン(リフトバック)のスプリンターシエロが用意されました。
5代目では走りにこだわったFRモデルだったカローラレビンとスプリンタートレノですが、この世代でついに他のカローラシリーズ同様にFF化されました。また、3ドアハッチバックは廃止され、2ドアクーペに一本化されました。
搭載エンジンは2種類の1.5Lと2種類の1.6L。1.6Lの上級グレードであるGT-Zには4A-GEにスーパーチャージャーを搭載した4A-GZEが搭載されました。GT-Zはボンネットの大きなエアインテークが特徴。一方でこの世代のレビン/トレノは、ホンダ プレリュードをはじめとするデートカー人気も意識したモデルでした。
6代目カローラシリーズはヒットモデルとなり、1990年の車名別年間新車販売台数で30万8台を記録。この数字は、2010年の3代目プリウス(31万5669台)まで、20年間も抜くことができなかった驚異的な記録でした。
高級化路線の頂点に達した7代目カローラ(1991年~2002年)
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7代目カローラ
カローラシリーズ/スプリンターシリーズは1991年6月に7代目へとフルモデルチェンジ。この世代でも、人々の多様性に応えたハイクオリティーな小型車として開発されました。開発コンセプトは「新時代を見すえた次世代基準の創出」です。
外観はどちらのシリーズも6代目よりも丸みを帯びたスタイルになり、柔らかさを感じさせるものになりました。2ドアクーペのカローラレビンとスプリンタートレノも流麗なスタイルになりました。
インテリアも曲線を多用したデザインに。ATのシフトノブも握った時に自然に手に馴染むデザインが採用されました。コクピットの圧迫感も軽減され、運転時の視界の広さや操作性の良さが際立ち、ライブサウンドシステムや運転席パワーシートなどの快適装備も用意されました。
また、後席もよりゆったりとした空間を確保するために、室内長、室内幅、室内高を全て拡大、フロントシートの形状や取り付け方法を変更することで足元のスペースにも余裕が生まれている。
こうしたさまざまな「豊かさ」を与えることで、この7代目はシリーズで最高の高級感が演出されています。
ステーションワゴンブーム到来。安近短のレジャーにマッチしたカローラワゴン
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カローラツーリングワゴン(6代目)
この世代で注目したいのは、セダン・クーペより3ヵ月遅れて登場したカローラワゴンです。
1989年2月に登場した、スバル レオーネの後継モデルであるレガシィツーリングワゴンが空前の大ヒット。以前からワゴン車は日本にさまざまな種類がありましたが、どこか「ライトバンの乗用モデル」というイメージが拭えなかったのも事実。
しかしレガシィが大ヒットしたことで日本にステーションワゴンブームが到来。各社がワゴンとしてのユーティリティ性はもちろん、デザインや走行性能を高めたモデルが登場しました。
カローラワゴンはレガシィツーリングワゴンより一回り小さなワゴンですが、十分な居住性と積載性が与えられました。そしてセダン同様に曲面を多用したボディにより、スタイリッシュなイメージで登場しました。バックドアには3次元曲面ガラスが採用され、立体感を際立たせています。
ステーションワゴンだとレガシィツーリングワゴンを筆頭に、2Lクラスだとトヨタ カルディナ、日産 アベニール、ホンダ アコードワゴン(排気量2.2L)、マツダ カペラカーゴ、三菱 レグナム(1996年〜)などが人気で、一回りコンパクトなステーションワゴンだとカローラワゴンの他に三菱 リベロ(1992年〜)、日産 ウイングロード(1996年〜)、ホンダ オルティア(1996年〜)などが注目を集めました。また、トヨタ クラウンワゴンのほか、トヨタ セプターワゴン(1992年〜)、三菱 ディアマンテワゴン(1993年〜)、日産 ステージア(1996年〜)といった大排気量のワゴンも支持を得ていました。
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SUBARU レガシィツーリングワゴン(左上)、日産 アベニール(右上)、ホンダ オルティア(左下)、日産 ステージア
カローラシリーズは1995年5月に8代目へとフルモデルチェンジしましたが、ワゴンはこの世代を継続販売。2002年の販売終了まで数度のマイナーチェンジを行い、パワーウインドウをはじめとする装備の充実はもちろん、4WDの設定(1995年)、1.6Lエンジンを搭載するBZツーリングの設定(1996年)、デュアルエアバッグの標準装備(1997年)、ディーゼルエンジンの排気量アップ(1998年)などで商品力を高めていきます。
カローラはファミリーカーのイメージが強いブランドですが、カローラワゴンはテレビCMに若手の人気タレントを起用して若者たちからの支持も集めました。
1991年のバブル崩壊以降、人々のレジャーは「安近短」と呼ばれた、近場であまりお金をかけずに余暇を楽しむというものに変わっていきました。そこにマッチしたのが80年代後半から人気のあったRV車であり、ステーションワゴンでした。そして1994年にホンダが初代オデッセイを発売してからは、ミニバンも注目を集めるようになりました。90年代は人々のクルマ選びの志向が3ボックス型から、荷物がたくさん積めて便利に使える1.5ボックスや2ボックス型に変わっていった10年だったと言えるでしょう。
また、この時期にはクーペスタイルのスタイリッシュなセダンであるカローラセレス/スプリンターマリノも登場しました。
コンパクトセダンとしての原点に回帰した8代目(1995年~2002年)
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8代目カローラ
カローラは1995年5月に8代目へとフルモデルチェンジ。この世代は先代までの高級志向から方向転換し、オーソドックスなコンパクトセダンになりました。開発テーマは「ベストコンパクトカーの創造」。もう一度カローラとしての立ち位置を見つめ直したモデルと言えるでしょう。
コンパクトカーの本質を追求し、基本コンポーネントは先代から引き継ぎながらも、コンポーネント自体の構造や材質を再検討し、ボディへの取付け構造や取付け要素の見直しなどを行うことで先代より約50kgの軽量化を達成しました。
デザインはシンプルで清潔感のあるスタイルに一新。インテリアはメーターの文字を大きくしたり、スイッチ類を運転席に寄せることで視認性や操作性が高められています。オーソドックスなコンパクトセダンになったとはいえ、ユーザーが求める快適装備などはしっかり備わっています。
一般的にクルマはフルモデルチェンジをすると質感が向上したり装備が充実したりするため、車両価格は先代より上がる傾向にあります。しかし8代目カローラはほぼ全グレードで希望小売価格が先代よりも安くなったのが特徴です。これはバブル崩壊後にユーザーが求めるものが変わったことによるものでしょう。
高級路線からベーシックコンパクトセダンへの回帰。この時代のカローラからは人々の志向が垣間見えてきます。
(文:高橋満<BRIDGE MAN> 写真:トヨタ自動車、SUBARU、本田技研工業、日産自動車)
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