670psのコルベットからBEVピックアップまで、ロサンゼルスモーターショーで見えたアメリカの自動車事情

「デトロイト」や「ニューヨーク」そして「シカゴ」など、年に幾度ものモーターショーが開催されるアメリカ。中でも、国際的に注目度の大きいイベントのひとつがロサンゼルスモーターショー(正式名称はLAオートショー)。

なぜ、注目されるのか? それは、西海岸のロサンゼルスが、歴史的にアメリカンブランド以外のメーカーも多く受け入れている地域であるため、海外のブランドもモーターショーに多く参加するからです。

つまり、ロサンゼルスモーターショーをウォッチすれば、アメリカの自動車事情がわかるというわけ。今回は、11月17日から26日にかけて開催されたロサンゼルスモーターショーから、「アメリカ自動車事情の今」を見てみましょう。
<関連サイト>LAオートショー

日本ブランドはインプレッサの新型を初公開したスバル。トヨタはBEVのコンセプトをお披露目

アメリカには、日本メーカー・ブランドのクルマがたくさん走っています。だから、日本よりも先にアメリカで世界初公開されるクルマも。2022年は、スバルが「インプレッサ」の新型を世界初公開しました。

  • ここ10年ほどで北米での販売台数が大きく伸びたスバル。降雪地域などで人気が高い(写真:LAオートショー)

新型インプレッサで驚いたのは、これまで展開していたセダンをやめて5ドアハッチバックに一本化されたこと。アメリカではセダン離れが進み、中でも小さなセダンはホンダ「シビック」など一部の定番モデルを除いて壊滅的な状況となっているのが現状ですから(ユーザーはコンパクトSUVに流れた模様)、新型がハッチバックだけに絞られたのも、自然な流れなのでしょう。

なお、搭載されるエンジンは2.0Lと2.5Lの水平対向4気筒自然吸気。春から夏にかけての発表が噂されている日本仕様も、ハッチバックだけとなる可能性が高そうですね。

もう1台、ロサンゼルスモーターショーで世界初公開となった注目の日本ブランド車が、あります。トヨタ「bZコンパクトSUVコンセプト」というBEV(電気自動車)です。「bZ4X」などに続くbZシリーズとして、コンパクトかつスポーティなフォルムとしているのが特徴。果たして日本でも発売されるのか、楽しみですね。

  • トヨタも市販を見据えた電気自動車の新しいコンセプトモデルを公開(写真:トヨタ)

トヨタ「プリウス」は、世界初公開こそ日本だったものの、海外でのお披露目はロサンゼルスモーターショーが初(もちろん、左ハンドルの北米仕様)。新型プリウスは、従来型からガラリと変わったスタイルが話題ですが、このデザインに関しては北米でも反応がいいようです。

  • 新型プリウスのデザインはアメリカでも評価が高い(写真:LAオートショー)

ロサンゼルスモーターショーに欠かせないものといえば、スポーツカー

ロサンゼルスモーターショーはアメリカの、もっと言えば世界のスポーツカー好きからも注目されるイベント。

なぜなら、新型車として発表されたり展示されたりするスポーツカーの数が、ほかのアメリカのモーターショーと比べて断然、多いからです。背景には、ロサンゼルス近郊ではスポーツカーを好む人が多く、また富裕層が住むエリアでもあるため、世界的なスーパーカーのマーケットとなっていることがあります。

2022年も、会場で飛び切りの新車がお披露目されました。まずは、アメリカンブランドのシボレーが発表した「コルベットZ06」。コルベットの高性能仕様で、新開発した排気量5.5LのV8エンジンは670psを発生。0-60mph(=0-96km/h)加速は、わずか2.6秒だといいますから、とんでもないモンスターですね。

  • 「コルベットZ06」。エコカーとは真逆といえるハイパワーモデルの登場は、清々しささえ感じる(写真:ゼネラルモーターズ)

また、ポルシェも毎年、ここロサンゼルスで新型車を発表しています。2022年のニューモデルは「911ダカール」。911をベースに車高を50mm上げたリフトアップ仕様で、「ダカール」という名前はかつてパリ・ダカールラリーにおいてポルシェ初の優勝をもたらした「ポルシェ959」のラリーマシンにちなんだもの。

  • いくらクロスオーバーSUVがトレンドとはいえ、まさか車高を上げた911が市販される日が来るとは!(写真:LAオートショー)

当時の姿を知る筆者としては、かつてのラリー参戦車両をイメージしたエクステリアも用意されているのが、なんとも胸アツです。

アメリカンブランドもBEVを続々投入。ついに主力のSUVやピックアップトラックまで

アメリカに電気自動車が普及する時代は来るのか――。

少し前まではそう言われていましたが、テスラをはじめとするBEVの拡大は、現地に行くとちょっと驚くレベルです。そして、BEV化の流れが急拡大しそうなのが、「2035年以降、州内でのガソリン車の販売をハイブリッドまで含めて禁止する」という法案をカリフォルニア州が2022年夏に発表したこと。そうなれば、さすがにアメリカンブランドだって本腰を入れないわけにはいきません。

今回、アメリカンブランドでもっともBEVへの勢いを感じさせたのはシボレーでした。コルベットZ06を発表した一方で、「エクイノックス」「ブレイザー」、そして「シルバラード」という売れ筋のSUV&ピックアップトラックにBEVモデルを用意し、正式に発表。いずれも、ガソリン車とは異なるエクステリアとしているのも興味深いところでした。

  • 「エクスノックス」はコンパクトSUV。シボレーは一気にSUVのBEV化を進めてきた(写真:ゼネラルモーターズ)

  • 「ブレイザー」のEVモデルは都市部で人気になる可能性を秘めている(写真:ゼネラルモーターズ)

  • 「シルバラード」はピックアップトラック。時代を見据えてBEVが用意された(写真:ゼネラルモーターズ)

実用モデルからハイブリッドカー、高性能スポーツカー、そしてBEV……と、ロサンゼルスモーターショーでは今回もさまざまなニューモデルがお披露目されました。

一部、「BEV祭り」的に取り上げていたメディアもありましたが、実際にはBEVだけではなくいろいろ注目すべき車種が登場しており、その多様性こそが今のアメリカの自動車業界をよく表していると言えるのです。“アメ車”のイメージが、さらに変わっていきそうな予感のする、2022年のロサンゼルスモーターショーでした。

(文:工藤貴宏/写真:LAオートショー、トヨタ自動車、ゼネラルモーターズ/編集:木谷宗義 type-e+ノオト)

[GAZOO編集部]

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