モータースポーツには子供の可能性を伸ばす力がある・・・寺田昌弘連載コラム
中嶋一貴選手や小林可夢偉選手をはじめ、現在レーシングドライバーのほとんどが、幼少期からカートに乗り、フォーミュラにステップアップしSUPER GTで活躍しています。例えば、㈱オートバックスセブンと鈴木亜久里さんによるARTAプロジェクトのカートよるドライバー育成で、福住仁嶺選手、阪口晴南選手、宮田莉朋選手、佐藤蓮選手などトップカテゴリーで活躍するドライバーを輩出しています。
SUPER GT開催期間中、GTアソシエイションが小学生にモータースポーツに興味を持ってもらうことを目的に、小学生を対象としたカート無料体験会が実施されています。通常は、アクセル、ブレーキ、ステアリング操作をゆっくり走りながら体験してもらうのですが、より本格的にモータースポーツを体験してもらうために「SUPER GTキッズカート走行体験会」が開催されました。
カートコースでインストラクターを追いかける
会場は、埼玉「フォーミュランド・ラー飯能」。ここは、現在GT500で活躍する塚越広大選手が父親とともに運営するカートコースです。ちなみに、オープンは1993年5月15日、その日は塚越選手が初めてレーシングカートに乗った日です。つまり彼がレーシングドライバーへの道を切り開いたコースなのです。
今回参加した小学生は男子11名、女子4名の15名。ツインリンクもてぎや富士スピードウェイでキッズカート走行体験会に参加したことのある小学生たちですが、初めて見るレーシングコースにみな緊張気味。今回の特別講師は小柄でかわいらしい三浦愛選手なので、子供たちも徐々に緊張が和らいできます。三浦愛選手は、今シーズンFormula Regional Japanese Championshipやスーパー耐久シリーズに参戦し、スーパーフォーミュラでピットレポーターとしても活躍しています。
ドライバーズミーティングは、塚越広大選手の父親、塚越一浩さんがしてくださり、小学生たちはもちろんお父さん、お母さんも真剣に聞き入っていました。その後ヘルメットを選んでピットロードに並んだカートに乗り込みます。
すべてフォーミュランド・ラー飯能のインストラクターがマンツーマンで先導し、子供たちが追走するスタイルで走ります。
挑戦する気持ちが子供たちを強くする
最初はゆっくり走ってコースを覚えてもらいながら、途中コース上にいるインストラクターの指示でブレーキングの練習を何度も繰り返します。慌ててアクセル踏みながらブレーキを踏んでしまったりするので、しっかりブレーキとアクセルの踏み方を体で覚えていきます。コースを5周したら、一度ピットに戻り、次の子供たちと交代します。カートから降りると、ドキドキの体験を親に楽しそうに話しています。
2回目の走行前は、三浦選手が一人一人に走り方を教えたり、緊張を和らげたりと1回目より速く走れるようにスタート前にアドバイスをします。インストラクターはそれぞれの子供のスキルにあわせてペース配分を伝え、乗り慣れてきた子供たちのペースは徐々に上がります。するとバイザー越しに見える子供たちの瞳の力が明らかに強くなってくるのです。3回目の走行時はさらにペースアップ。すると、コーナーでスピンする子供も。それでも怖がらず、挑んでいく姿に感動してしまいました。
子供たちのあとは、お父さん、お母さんがコースをカートで走ります。やはりカートを好きな子供の親だけに、走るのが上手い。フリー走行なのにコース上では親どうしのバトルもあり子供たちは少し心配そう。でも、親の走りが自分たちより速いのを観て、明らかに尊敬のまなざしです。モータースポーツを通じて親を思う子供の気持ちが伝わってきてほっこりした気分になります。
ストレートの先に見える未来
イベント後のアンケートを見ると、みな楽しく走れたことで満足していました。一方、満足できていない子は、「もっと速く走りたい」と、今回の自分の走りに満足がいかなかったようす。このような負けず嫌いの気持ちをもつことが子供たちを成長させてくれると思います。子供たちはストレートの先に見える未来を、力強くキラキラした瞳で目指そうとしています。やっぱり「モータースポーツには人を成長させてくれる力」があると、強く実感できた一日でした。
(写真:文/寺田昌弘)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
[ガズー編集部]
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