【連載全9話】第4話 いすゞ・アスカ(NAVI-5/電子制御式MT)・・・日本発の技術やアイデアのあるクルマ

工業製品として時代の先端を行く自動車は、さまざまな技術を生かしてつくられています。今回は、なかでも日本発祥のアイデアやテクノロジーが注がれた、注目すべき日本車を週替わりで紹介します。

いすゞ・アスカ(NAVI-5/電子制御式MT)

かつてのフェラーリのF1マチックやアルファ・ロメオのセレスピード、BMWのSMG、最近ではスズキのAGSなどに代表される、「AMT」あるいは「シングルクラッチ式AT」、「ロボタイズドMT」などと呼ばれる変速機。これら、伝統的なMTをベースとしつつ自動変速が可能で、2ペダルのためAT限定免許でも運転できるという機構を初めて量産車に採用したのは、日本のいすゞである。

車種はアスカ。フローリアンの後継モデルであることから正式名称をフローリアンアスカといい、1983年にデビューした。当時いすゞはゼネラルモーターズ(GM)の傘下だったことから、初代ジェミニに続いてGMのグローバルカー構想により生まれた中型サルーンで、オペル・アスコナやシボレー・キャバリエなどと基本設計を共有する。ただしジェミニとは違ってボディーはいすゞ独自のものだった。

翌1984年、そのアスカの2リッター直4 SOHCエンジン搭載車に設定されたNAVI-5は、「ベテランドライバーの運転技術と感性をプログラムされたロボットが変速操作を行う」ことをコンセプトに、5段MTの変速およびクラッチ操作をコンピューターと油圧アクチュエーターで制御して自動変速を行い、マニュアルシフトも可能という、世界初の電子制御自動5段変速機である。

NAVIとは“New Advanced Vehicle with Intelligence”の略であり、MTのダイレクト感とATの安楽さを兼ね備え、トルクコンバーターを用いないため高効率で好燃費とうたわれたNAVI-5。状況によっては変速操作がギクシャクしたり、クリープがないのが不便といった批評もあったが、改良を加えながら採用モデルを増やしていった。しかし、アスカが1989年に生産終了し、翌1990年には弟分のジェミニからもモデルチェンジに伴い設定モデルが消滅。その後は中型・大型トラック用として発展していった。

[GAZOO編集部]

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