ロータリーで世界に挑んだ意欲作 サバンナRX-7・・・懐かしの名車をプレイバック
第2次オイルショックや度重なる排ガス規制という、スポーツカーにとって逆風のなかで登場した「マツダ・サバンナRX-7」。ロータリーエンジンだからこそ実現できたパッケージングや特徴的なデザインは、本格スポーツカーと呼ぶにふさわしいものだった。
日本が生み出したスーパーカー
「サバンナRX-7」と呼ばれた初代RX-7(SA22C型)が誕生したのは、1978年春。そのニュースに初めて触れたのは、当時の自動車雑誌を介してのことだった。まずはその中身や性能よりも、美しいボディーラインに一瞬で魅了されたことを覚えている。
1978年といえば、時は日本中を席巻したスーパーカーブームが勢いを弱め始め、スーパーカーを追い求めた少年たちが、冷静さを取り戻した頃でもあった。社会的には1970年代中盤に世界を襲った石油危機の影響で、日本でスーパーカーブームが頂点を迎えていた頃にその主役だったブランドの多くはすでに瀕死(ひんし)の状態。ガソリンを湯水のように使う大排気量のスーパーカーは、いわば反社会的な存在であったといってもよかった。
そこに登場したのが初代RX-7である。これは日本が新たに生み出したスーパーカーと呼んでもいいのではないか。雑誌の記事だけでは物足りなくなった少年の私は、たまらずマツダのディーラーへとカタログをもらいに自転車を走らせた。クルマなど、ましてやRX-7などという最新のスポーツカーを買えるわけもない中学生に、果たしてマツダのディーラーはカタログなどくれるのか。
結果は見事にイエスだった。しかもそこにあるカタログなら、どれを持って帰ってもよいという。今にして思えば、こういう原体験があってこそ、ブランドとカスタマーの絆というものは生まれるのかなとも考える次第だ。
ロータリーだから実現したパッケージング
RX-7のカタログをもらって家に戻った私は、まさに紙に穴が開くような勢いで何度もそれを読みあさった。メインのキャッチコピーは、たしか「Designed by Rotary」だったと記憶している。
Rotary=ロータリーとはどうやら、エンジンの形式らしい。これまでV型12気筒やV型8気筒、水平対向6気筒といったエンジンにはなじみはあったが、ロータリーというのはここで初めて聞くエンジン形式だった。後にマツダは、RX-7の前身ともいえる「サバンナGT」(RX-3)でも、ロータリーエンジンを採用していたことを知るのだが、残念ながら当時はそこまで詳しくはなかったのだ。
そうした知識のもと、ロータリーエンジンの仕組みを知るのは簡単ではなかった。おぼろげに理解できたのはエンジン(12A型2ローター)の内部にあるローターが回転して、それによってコンパクトで軽量、かつ高回転型のエンジンをつくることができるということだった。参考までに当時のスペックによれば、最高出力はグロス値で130PS。実際の排気量は1300cc相当だから、その効率は相当に高いと評価できる。
滑らかなロングノーズのデザインも、前後で50.7:49.3という理想的な重量配分やパッケージングも、このエンジンのコンパクトな設計がなければ実現しなかっただろう。例のカタログに掲載されていた透視図でも、それは簡単に理解することができた。
ターボを追加し最高出力は160PSに
スーパーカー少年だった自分にとって、さらにうれしかったのは、RX-7がスーパーカーライト、すなわちリトラクタブルヘッドライトを採用していたことだった。それは紛れもなくスーパーカーの証し。なんの脈絡もない単純な条件だが、1970年代のスーパーカーブームの時には、このような話さえ真剣に交わされていたのだ。
ロングノーズ・ショートデッキの美しく流麗なボディー、ロータリーエンジンという自分にとっては未知のメカニズム、そしてそれが実現するだろう軽快な走り。RX-7はマツダが世界のスポーツカーに挑んだ野心的なモデルともいえた。
サバンナRX-7はデビューから数度にわたってマイナーチェンジを受けるが、運よく自動車メディアの世界に身を置くことができた自分に、RX-7のステアリングを握るチャンスが訪れたのは1980年代になってからだった。
1982年に追加設定された「GTターボ」がそれで、最高出力がグロス値で165PSに向上していた。車重は1020kgで、パワーアップされたぶん、その運動性能がさらに向上していることは容易に想像できた。スタイリングにおいてもボディーと一体になったようなエアダム付きバンパーを装備したことなどによって、さらに空力性能を高めている。
ハンドリングは当時の最高レベル
試乗の舞台となったのは、当時はまだ高速サーキットとして名高かった宮城のスポーツランドSUGOだった。なめるように細部を観察したあと、「これが昔から憧れていたRX-7なのか」と感慨深くもコースインすると、たしかにその軽さとターボエンジンの強力なパワーフィールに圧倒される。
まずは当時の国産車では最高レベルじゃないのかと思わせるフロントミドシップのハンドリングを楽しみながらインラップを終える。直進安定性も問題ない。エアロダイナミクスは0.34というCd値が物語るように、まるで路面に吸い付くような素晴らしいフィーリングだった。
そしてこいつは何をやっても素直な動きに終始すると勝手に思い込み、調子に乗って走り続けた数ラップ目。やりすぎてしまいました。当時の未熟なドライビングスキルでは突然のオーバーステアに対応することができず、クルマは完全なスピンモードに突入した。
運よくクルマには一切ダメージはなかったのだが、同行していた編集長に延々と説教されたのは言うまでもない。今ではほとんど街なかで見かけることもなくなったが、初代RX-7の話題になると、そのサーキットでの苦い記憶が脳裏をよぎる。そうした個人的にも多くの思い出がある、日本が誇る本格スポーツカーであった。
(文=山崎元裕)
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