【東京オートサロン2019】1JZをスワップしてFR化!ナンバー取得を画策中のドリフト仕様インプレッサ WRX STI
東京オートサロン会場には、メーカーやショップがカスタマイズしたデモカーがディスプレイされているだけでなく、全国各地のイベントでアワードを受賞したユーザー車両の展示も行われている。
これらの車両の多くはオーナーがそれぞれのコンセプトに合わせて長年かけて作り上げてきているのは当然。そのため、メーカーやショップデモカーとは異なるアプローチが盛り込まれているため、見どころも十分すぎるほど凝縮されている。
そんな中から『ハイパーミーティング2018 in オートポリス』でドレスアップコンテスト最優秀賞に輝いた2008年式インプレッサWRX STIをご紹介しよう。
低く構えたスタイリングとワイドフェンダーでマッシブボディを強調するフォルムはここ数年のトレンドのひとつ。しかし、目を引くのはそんなスタイリングだけでなく、搭載されているエンジンが水平対向ではなく直列6気筒ターボという目を疑う光景だ。
そもそもインプレッサWRX STIは、スバルの世界戦略車でもあるインプレッサの最上級スポーツモデル。ラリーでも活躍したレオーネの後継として1992年から発売され、このGRBは3代目として初めてWRX STI専用ボディが与えられているのが特徴だ。
もちろんエンジンはスバルのこだわりでもある水平対向4気筒EJ20を搭載し、ターボや可変バルブタイミング機構を備えることで最高出力は歴代最高の308psに設定。そのハイパワーを支えるAWD機構を備えたことから、ラリーなどのモータースポーツを中心に世界的に注目を集めるモデルへと進化しているのだ。
そんなインプレッサWRX STIのアイデンティティとも呼べるEJ20をあっさりと捨て、かつAWDからFRドライブへと駆動方式を変更したのはなぜか?その答えは『ドリフト競技への参戦』という目的のためである。
一般的にドリフト競技を楽しむのであれば、選ぶ車種はシルビアやツアラーシリーズのようなFRマシンが第一候補に上がるはず。しかし、できるだけ高年式で2.0Lターボエンジンを搭載する車種に候補を絞ったところ、GRBが目に留まったというわけだ。
「GRBはちょうどいい車体サイズに加えてツアラー系よりもホイールベースが短く、シルビア系よりも長いため、ドリフトするのにも取り回しがいいんですよ。購入当時はまだGRBが新車販売されていたため、なるべく新しい車体でと考えたらGRBがイチバン理想的だったんですよ」と語るのはオーナー。
もちろん購入1か月後にはフロントのドライブシャフトを抜いてFR化を決行。当初はEJ20のままドリフトを楽しんでいたものの、通勤から競技までハードな扱いに音を上げたエンジンは、ヘッドガスケット抜けやタナ落ちが頻発してあえなくブロー。そこでさらにパワー耐性のあるエンジンへのスワップ計画が持ち上がったという。
狙いをつけたエンジンは、トヨタの名機と呼ばれる1JZ-GTE。JZX100から流用したエンジンは、内部がノーマルのままでも400psオーバーに対応するため、パワーアップと耐久性の向上を目指すのにはベストな選択だ。
載せ換えに必要となるエンジンマウントなどはすべて新規で製作。タービンなどもHKS・GT3037を組み合わせることで大幅な出力アップを実現している。
また組み合わせるミッションもパワーへの耐久性と値段を考慮して日産のフェアレディZ(Z33)から流用。ワンオフのアダプターを利用してエンジンとミッションをドッキングすることで、最高出力450psのFRマシンに作り変えてしまったのである。
ちなみに、オーナーはこのインプレッサを仕上げるためにTIG溶接も覚え、インテークパイプなどもすべてオリジナルで製作したという。もともとカーショップのメカニックという職業ではあるが、愛車を仕上げるために様々なスキルを磨いていったことは、好きこそものの上手なれ、というわけだ。
現在はドライブシャフトがGRB純正のままのため、パワーに対して強度が足りていないのが課題。GT-R系のデフやドライブシャフトを流用することで解決を目指し、さらにハイパワーで遊べるドリフトマシンに仕上げる予定なんだとか。
ちなみに高年式のGRBに低年式の1JZをエンジンスワップすると排ガス規制の相違からナンバー取得は不可能といわれている。そのため現在は競技車両と割り切ってサーキットでの走行でのみ、そのパフォーマンスを楽しんでいる。
しかし、今回の東京オートサロンで出会った公認車検専門店にさっそくナンバー取得の方法を相談するなど、車検取得を諦めずに目指しているのだという。
それは、単なる思いつきだけで無茶振りカスタマイズを行ったのではない証拠。2019年はサーキットだけでなく公道復帰も目指した異色マシンとしてさらに進化を果たしそうだ。
(テキスト:渡辺大輔 写真:平野 陽)
[ガズー編集部]
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