【東京オートサロン2019】オリジナル再現だけでなくレストモッドも人気! 旧車レストアの最新事情とは

ここ数年で高まりを見せている旧車ブーム。その要因は単なるノスタルジーによるものだけではなく、技術の進化によって旧車趣味に対するハードルがより低くなったことも影響している。
例えば、ひと昔前の旧車ならエアコンやパワステといった快適装備がないのは当たり前。むしろ「無理にそういった装備を追加することでエンジンの調子を崩してしまうくらいなら必要ない」と割り切らなければ乗れないとまで言われていた。
しかし、現在の技術を取り入れて仕上げた旧車なら、快適装備の搭載はもちろん、これまでとは比較にならないほどハイクオリティな車両を作ることも可能となっているのだ。
こういった手法は『レストア』と『モディファイ』をかけあわせて『レストモッド』と呼ばれ、旧車ブームとともに注目を集めている。
そのほかにも、さまざまなアプローチで製作された旧車が数多く出展されていた東京オートサロン会場で、気になる車両をピックアップ取材した。

ボディもエンジンも現代の技術でリメイク【スターロード】

ボディ外板をリフレッシュしてパッと見をキレイにしてレストアと呼ぶお店もあれば、フレームまで徹底して作り込んだうえに内装やエンジン内部までしっかりと手を加えなければレストアと呼ぶことはできないと考えるショップもある。
『旧車のレストア専門店』として国内外から高い人気を得ているスターロード(東京都江戸川区)に関して言えば、ズバリ後者であることは間違いない。
隅から隅まで徹底的に作り込まれた展示車両のハコスカとフェアレディZにも、そのこだわりが存分に現れていた。

「現在の道路環境の中で旧車で快適に楽しみたいなら、フレームから作り直すことは必須ですね。特に現行車と同等の速度域で走るとなると、補強追加による剛性アップによって安心感は別物になります。旧車だからゆっくり走らなければいけないと妥協するのではなく、旧車でも現行車並みに快適に使えることを前提に作り上げることが、スターロードが考えるレストアですね」と語るのは代表の井上さん。
その言葉通りに、フルストリップから作り上げられたボディは、すべての要素において新車以上のコンディションへと引き上げられる。

純正でも製品誤差が大きいGノーズは、すべてのパネル同士のチリ合わせまで徹底して行われる。それと同時に室内の遮音と遮熱に関しても徹底的に対策。気持ち良いエンジン音を響かせながらも、車外からのロードノイズや外気温などはシャットアウトされている。熱や音といった疲れを助長する要因をカットすることで、快適さを向上させているのだ。

また、フルノーマルやオリジナルへと戻すことに固執するのではなく、必要なパーツについては現代の技術でアップデイトすることも重要と考えている。
特に足まわりの設計思想は当時と現在では大きく変わっていて「今の技術を取り入れることで、乗り心地と操作性を兼ね備えた芯のあるしなやかさも実現可能になるんです」とのこと。
展示されていた2台にも、車高やマシンスペックに合わせてセッティング可能なオリジナル車高調キットを核に、ホイールなども現行製品を組み合わせている。
当時ふうのルックスを維持しつつ、現行車なみのボディ剛性やサスペンション性能に引き上げるマシンメイクによって、究極の旧車ライフをサポートしてくれるというわけだ。

安心して乗れる『旧車レプリカ』をイチから創る【ロッキーオート】

古い車体を修復するのではなく、現代の技術によって新たに旧車を作り上げる…そんな夢のようなアプローチで名車トヨタ・2000GTを蘇らせたのが、ロッキーオートの『R3000GT』だ。
「旧車に乗りたいと考えている人の価値観やライフスタイルは人それぞれに違っています。手がかかるけどフルオリジナルを望む人もいれば、普段から気軽に乗って楽しみたいという人もいますよね。旧車だからこうでないといけないというのではなく、それぞれのニーズに応えられるように、選択肢を増やすことを考えて作り出したのがR3000GTです。デザインは2000GT開発に携わった細谷氏の協力を得て完全トレースしたうえで、設計から中身はすべて現在のスペックで製作しています。手がかからず安心安全、気軽に雰囲気を楽しめるのは最大の特徴ですね」と語るのは代表の渡邊さん。

ひとことで説明するなら2000GTを模したレプリカマシンなのだが、その内容は単なるレプリカとはワケが違う。
ボディは完全オリジナルで製作され、搭載されるエンジンは現在も名機と呼ばれるトヨタの2JZ。オートエアコン、パワステ、パワーウインドウも完備しながら何不自由なく現行車両と並走できる。そのスペックは、本質的な旧車とは違っていても、理想の旧車と呼べる存在なのである。

ボディだけでなく、現在ではパーツとして存在していないガラスやモール類、さらにダッシュボードやシートといったすべてを新規製作。現車から採寸し金型を起こして生産している。
特にフレームは、既存の車体をベースにするのではなく、2000GTの設計思想を完全再現しながら、現代のユニットを組み合わせるためにイチから設計されたもの。もちろん日本の公道での走行を可能にするための基準も満たしている。まさに新車製造を行うのと同様のプロセスを経て製作されているというわけだ。

オリジナルの2000GTはもはや市場に出回ること自体が皆無。もし仮に手に入れることができたとしても、普段から乗り回すことは難しい。現行車と同じように普段から気軽に街乗りできる性能を備えた3000GTは、旧車のあり方を大きく変える存在といえるだろう。
ちなみにロッキーオートブースには、BNR32スカイラインGT-Rをベースにケンメリルックに仕上げた車両も展示され、そちらも話題となっていた。

目で見て、手で触って仕上げるレストア技能の伝承【トヨタ東京自動車大学校】

東京オートサロンには、メーカーやプロショップだけではなく、多くの専門学校ブースも出展している。そんな中で目に留まったのがTA22セリカを展示していたトヨタ自動車大学校だ。
ダルマセリカ特有の美しいボディラインが再現されていて、搭載する2T-Gエンジンもフルオーバーホール済みだ。

「このセリカは生徒6名によって7ヶ月の期間で仕上げた作品です。生徒たちはこの作品を製作する過程で、ハンマリングやパテによる面修正など、鈑金を基本から学びました。また、旧車の場合は塗装を剥いだら修復痕があったりしますよね。こういった部分の地金を出して修復していく技術など、より実践的な手法も教えていきました」と語るのは担当講師の綿引さん。

製作当初はプレスやキャラクターラインもパネルごとにバラバラだったというが、それぞれの面をしっかり確認し、手で触りながらパネルの曲線を認識することで、少しずつ形が整うようになっていったという。
レストアに限らずクルマ業界での技術職として鈑金職人は引く手あまた。そんな鈑金職人としての基礎をしっかりと学んだ成果が、このダルマセリカに集約されているというわけだ。

また、トヨタ自動車大学校では、2年のカリキュラムで2級整備士の資格を得ることができる。その整備スキルの向上を目指し、エンジンも生徒たちが完全に分解したうえで、各部の計測を行いながら再度組み付けをおこなったという。
そのほか、フジツボ製のエキマニなど一部には社外カスタムパーツが使用されているものの、基本的には新車当時のスペックを目指して組み立てられている。
鈑金やオーバーホールの基礎を学ぶ専門学校で、授業の一環として製作されたこの1台は、来場者からも多くの注目を集めていた。

[ガズー編集部]

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