【2018トヨタ博物館クラシックカー・フェスティバル in 神宮外苑】ドイツからアメリカを経て日本へフォルクスワーゲン・タイプ2と家族と過ごす11年

国内では『ワーゲンバス』という愛称で知られるフォルクスワーゲン・タイプ2(T1)。タイプ2という名称は、1950年に初代ビートル(タイプ1)のシャシーをベースに製造されたことから付き、その汎用性の高さから貨物・乗用問わず様々な仕様が作られる人気車種となった。1965年に製造されたこのタイプ2のカタログネームは、フォルクスワーゲン・トランスポーターの『デラックスマイクロバス・21ウインドウ』とのことだ。

『2018トヨタ博物館クラシックカー・フェスティバル in 神宮外苑』の人気投票で3位に選ばれたこの車両のオーナーさんは東京都在住の55才。内外装にはほとんど手を加えずに購入状態を維持しているというが、製造から半世紀以上経った車体だというのに驚きなのはそのコンディションの良さ。
自らドイツ本国のメーカーへの照会や、過去の取引書類などを調べることで判明したこのタイプ2の歴史は、製造後すぐにアメリカへ輸出され、1996年までの約30年間カリフォルニアのオーナーによって所有されていたということ。その後日本人オーナーの手によって国内へ持ち込まれ、2007年に現オーナーが購入、そして現在にいたる。
ドイツで製造されたクルマが一度アメリカの地へ渡り、紆余曲折を経て日本へ渡ったという歴史はオーナーとして一層愛着を感じる部分でもある。展示の際にバンパーに小さな星条旗を追加しているのはこの理由からだ。パステルカラーの鮮やかさや、21ウインドウというルーフにまで設けられた窓から差し込む日差しはまさに西海岸を感じさせ、このタイプ2のイメージにふさわしいものでもある。

マイクロバス仕様でウォークスルーが設けられ、ルーフまで開閉する21ウインドウタイプ。現在ではキャンピングカーとして人気で見かける姿も多くなったタイプ2だが、このサンバと呼ばれる最上級モデルは日本にほとんど例を見ない車体。そのため、この車体を手に入れるまでの苦労はよっぽどのことかと思いきや、きっかけは意外にもあっさりとしたものだった。
「子供が2人生まれたのが最初のきっかけですね。家族で休日に出かけられる凝ったクルマが欲しくなって、そのころ読んだ雑誌でタイプ2の存在を知って『こんなクルマがあるのか』と。それで何も知らないままフォルクスワーゲンの専門店に電話をしてみたところ、紹介されたのがこのタイプ2でした。まさに自分の理想に近い仕様だったので、ほとんど即決という状態でした」
乗れば乗るほど愛情が湧くというのがこの年代のクルマの良さでもある。家族4人と愛犬と荷物がゆったり乗れるタイプ2はキャンプや家族旅行に大活躍。エアコンはなくても天気が良ければ味わえる開放感は格別だし、前オーナーが内装を張り替えたソファーの座り心地も悪くない。選択時の絶対条件だったウォークスルーもお気に入りのポイントだ。

それに、今日のようなイベントにも参加できて注目されるのも休日の楽しみのひとつになる。タイプ2のかわいらしい見た目は特に子供からも人気の的で、タイプ2のミニカーのコレクションを並べているのも、子供たちに喜んでもらうため。ドアの寸法とぴったりに特注したケースを作るほどのこだわりなのだ。

このように家族サービスからイベント出展まで活躍しているタイプ2。そして今後はよりイベントでいろんな人に見てもらうときのカッコ良さも重視して行きたいという。
すでにその方向性でカスタムを施しているのがタイプ1と共通のRRレイアウトで置かれている1493ccの水平対向OHVエンジンだ。中身は純正のままだが、注目してほしいのはプーリーやヘッドカバーなどの金属系パーツの輝き。このタイプ2の整備を担当する都内のショップに依頼したそうだ。

徹底的に磨かれた金属系パーツや整理された配線の美しさといった普段隠れた部分までカスタム要素のひとつとする、アメリカのショーカーのような出来栄えを目指していきたいというオーナー。いずれは床に鏡を置いた状態で見せられるほどに車体の下回りも同様に磨き上げたいとのこと。
そのように一見可愛らしい外見とのギャップを感じるカスタムも、このタイプ2がアメリカに渡っていた過去を知れば、かえってこのクルマだけが持つ歴史を引き立てる要素としてぴったりに思えてくる。

(テキスト:長谷川実路 / 写真:市 健治)

[ガズー編集部]

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