【ノスタルジック2デイズ】より速いL型マシンを追い求め、ハコスカから乗り換えたのはフェアレディZ

旧車の祭典『ノスタルジック2デイズ』では、多くの日産系旧車が会場を賑わせていた。特に旧車の王道とも呼ばれるハコスカとフェアレディZは、様々なカスタムアプローチのマシンがディスプレイされ、その1台1台からオーナーの主張と気迫が感じられる。
そんな王道とも呼べるモデルの中でも注目を集めていたのが、美しいエンジンルームが特徴の1977年式S31フェアレディZだ。
このフェアレディZのオーナーさんは、若い頃にL型エンジン車でドラッグレースを楽しんでいたという人物。その後、家庭環境の変化などで一旦は手放したものの、落ち着いたところでまたL型に乗りたいと考えるようになったという。
そんな時に仕事先で見かけたハコスカに一目惚れし、L型エンジンに対する熱が再燃。すぐに4ドアのハコスカを購入し、カスタマイズを進行しながらドラッグレースにも復活を果たした。しかし、ハコスカでは車両重量や剛性などの面からタイムアップの限界を感じ、さらに速いクルマを求めて辿り着いたのが、このフェアレディZだった。

ちなみに1969年から1978年に製造されたS30系と括られる初代フェアレディZは、大きく分けて2つの世代に分けることができる。
主に前期、中期と呼ばれるデビューから1975年までの世代にはS30の型式が与えられ、昭和51年度排ガス規制の実施に合わせて変更が与えられた1976年以降のモデルはS31という型式になっている。
このフェアレディZは、排ガス規制が厳しくなり出力が絞られた時代に生産された後期モデルである。

そんなフェアレディZの美しく磨き上げられたエンジンルームに搭載されていたのは、愛情をたっぷりと注がれていることが伝わってくるL28改3.1Lエンジン。
新たに結晶塗装を施したヘッドカバーをはじめ、キャブレターもソレックスのパイ50をリフレッシュして装着。エンジン内部もピストン交換による排気量アップに加え、カムやコンロッドなどL28カスタマイズのセオリーに従ったメカチューンを実施しているという。
また、点火系などは信頼と実績を持つMSDを利用することで最高出力は310psまで高められている。

ちなみに、このエンジンは長く乗っていたハコスカから総移植しているため、長年かけて育て上げてきた愛情もそのまま継続している。
しかし、同じエンジンを搭載していても、やはり車体重量や重量バランスの違いは大きな差を生む。ハコスカとZを比べると前後の重量配分が大きく変化するほか、各ボディパーツをファイバー製に変更することで車両重量は1トンを切るまで大幅に抑えられている。
加速性や動きなど、狙っていた通りに格段のパフォーマンスアップを実現したというわけだ。

同型とはいえエンジンの積み替えは大掛かりな作業でもある。そのためどうせ一旦エンジンを降ろすなら、とインナーフェンダーやバルクヘッドなどに開いた不用な穴や凹凸は、エンジンを降ろしたタイミングで一掃することを決意。さらに艶やかなペイントを施し、配線なども極力隠すことで美しいエンジンルームを構築している。
オーナーの思い描いた『速くて美しいマシン作り』は、L型エンジンを際立たせることを重視したカスタムワークも見どころのひとつというわけだ。

前述の通り、ボディパネルなどはファイバー製に変更されているが、これらの多くは友人でもある前オーナーが手を加えたポイント。ペイントなどそのままでも十分にコンディションが良かったことから、大きく手を加える必要はないと判断している。
いっぽうで、前期のワンテールを装着したかったため、リアパネルは交換をおこなったとのこと。

また、ダッシュボードもファイバー製パーツを取り入れることで軽量化を実現している。現在ではS30系のパーツは内外装ともにかなりの種類がリプロダクトされているため、リフレッシュに限らず軽量化といった用途でも選択肢が広がっているんだとか。
こういったアフターパーツを気軽に手に入れて、ボディの軽量化などを進められるというのも、フェアレディZを選ぶ理由のひとつだったというわけだ。

「なんだかんだ言って、このフェアレディZは完成までに2年以上かかってしまっています。というのも普通の会社勤めなので土日などの休日を使って仲間たちと作業を行っていたことから、一気に作り進めることができなかったんです。エンジンルームの塗装などは板金屋さんにお願いしていましたが、戻ってきてから組み付けやセッティングなどを行って、でき上がったのは昨年の12月です。だから、まだそれほど走らせてはいないんですよね」とオーナーさん。
普段の街乗りはもちろん、ドラッグレースでのタイムを狙って作り上げられたフェアレディZ。現在はシェイクダウンを兼ねて参加するイベントをチェックしている最中だという。
自分で作って走らせる。しかも現代のモデルにも負けないタイムを目指す。その計画を立てているこの時間もまた、オーナーさんにとって至福のひとときなのだ。

(テキスト:渡辺大輔 / 写真:堤 晋一)

[ガズー編集部]

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