【お台場旧車天国2018 愛車紹介】4ドアセダンの受注生産ラリー競技ベース車両はクルマ好き家族の理想のファミリーカーだった。ニッサン・ブルーバードSSS-R
1987年に発売がスタートしたU12系は、ニッサン・ブルーバードの8代目。今はなきダットサンから始まった4ドアセダンの基幹車種として53年の歴史を持つブルーバードのなかでも、ニッサンのフルタイム4WDシステム『アテーサ』が初採用された、セダンながらも走行性能が特に強調されたモデルである。
同時に、ブルーバードの歴史を語る上で欠かせないのがSSS(スーパー・スポーツ・セダン/サルーン)というグレード。他車種ならいわゆる『GT』などに当たる歴代ブルーバードの最上位モデルを指し、そのなかでもこのブルーバード『SSS-R』は、ラリー競技用ベースとしてオーテックジャパンがメーカーからの公認を経て1987年から販売された特別な受注生産モデルだった。
「結婚して子供ができることを考えて、4ドアの4人乗りで家族全員が乗れるクルマとして買いました。受注生産だったので納車まで3ヶ月もかかってやっと手に入ったんですが、納車1週間後に1人目の妊娠が分かって、嬉しい反面、最初に考えたのは『お腹が大きくなると、楽しみだったこのクルマが自由に乗れなくなる!』ということでした」と話してくれたのは、ご夫婦で所有するこのSSS-Rの名義人である奥さんだ。
発売当初は1.8LのCA18型エンジンが積まれ乗車定員が2名だったSSS-Rだが、後期のSR20DETエンジン搭載モデルが登場すると後部座席が追加され4名乗車となった。そのタイミングで「これなら家族が増えても大丈夫」と当時、ご夫婦の愛車だったいすゞ・ピアッツァから乗り換えたという。この経緯を聞くだけでも、ご夫婦が相当なクルマ好きだということが分かってもらえるだろう。
ちなみに旦那さんがその当時に乗っていたのは1960年代に生産され現在も愛好者の多い旧車ダットサン・フェアレディのSR311型。当時は後期型で現在は67年式の前期型を所有し、全日本ダットサン会に加盟しているメンバーの一員だという。
そんなクルマ好きご夫婦が共有する愛車として、このSSS-Rは4ドアセダンの居住性と収容能力を活かして、日常から休日のツーリング、夏の海水浴や冬のスキー旅行までファミリーカーとして長い間大活躍だった。
他グレードのU12型ブルーバードに採用されていたパワーウインドウも、競技ベースのSSS-Rでは手回し式に簡略化されていた部分。娘さんが教習所に通っていた際に「『教官から窓を開けて』と言われたけど、初めてパワーウインドウのスイッチを見てどうすれば開くのか分からなかった」という笑い話も、このSSS-Rがどれだけ家族から愛されていたかを知るエピソードのひとつである。
SSS-Rの室内を見て独特なのは、市販車でありつつも競技車さながらのロールケージが備わっている部分であろう。後部座席も左右にサポートが追加されたこのモデルだけの特別仕様となっていて、さながら4名乗車でラリーに参加できそうなホールド性を兼ね備えている。ウィランズの4点式シートベルトは後付けで、子供がチャイルドシートで育ったのち、より安全に乗れるようにという親心から装着したものだ。
外観ではラリー競技ベースということがひと目で分かる、グリルに追加された大型のフォグランプが特徴。しかし、SSS-Rの標準装備かと思いきやオプションパーツとして設定されていたようで、これを追加するだけで当時20万円の費用がかかったのだという。「でも、せっかくSSS-Rに乗るのにフォグランプがなければ意味がない」と思い、追加した装備だそうだ。
同様にコーナーランプは灯火機能を省いてスモーク化されたものが純正装着されていて、フェンダーマーカーも点灯しないように作られている部分が通常のブルーバードと異なる部分。
フォグランプを細かく見ると通常のバンパーを手作業でくり抜いて後付けされていることも分かり、こういったところにも受注生産モデルならではの特別さが感じられる。
当時、このSSS-Rを購入した際に納車後1週間でディーラーの1000km点検を受け「ここまで早く1000km点検をした例はない」と車両を買ったディーラー店舗から言われたというのも、ぜひ紹介したいエピソードである。
「その当時は相模原に住んでいたので、厚木ICから東名に乗り愛知まで行って、小牧から中央道へ乗りついで、大月ICで降りたら河口湖へ行って、そこから箱根神社でお祓いを受けて、最後は小田原厚木道路で帰ってきました」
お祓いした甲斐もあって納車した翌年にひとり目の子供となる息子さんを無事出産、先ほどの娘さんと4人家族となり、いまは二人とも成人を迎えた。イベント当日娘さんも一緒に来場していたし、聞けば息子さんも父に似た立派なクルマ好きに育ち、現在はローレル(C33)を所有してカスタムを楽しんでいるそうだ。
こういったクルマのイベントで取材している最中にも「スポーツカーに乗っていた友人が、家族と子供ができてワンボックスカーに乗り換えた」という話をよく聞く昨今。
このオーナーご夫婦がそうならなかったのは、家族で乗れる4ドアセダンながらもクルマ好きの心を十分に満たしてくれるSSS-Rがあったおかげと言えるかも知れない。
(テキスト:長谷川実路 / 写真:堤 晋一)
[ガズー編集部]
「お台場旧車天国2018 @お台場」の記事
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