6人家族だからこそ、トヨタ アルファードと歩んでいく。たとえ型遅れになっても

トヨタ アルファードをある種の筆頭とする「Lサイズミニバン」というジャンル。それは今、SUVと並んで大人気のジャンルであると同時に、毀誉褒貶もそれなりに激しい存在ではある。

「傍若無人な運転をする輩が多い」というのが、Lサイズミニバン否定派の主な意見だろう。

確かに――もちろんごく一部のドライバーに限定された話ではあるが――30年前のバブル期に黒塗りの高級輸入車で下品な運転をしていた人種と同類のドライバーが、Lサイズミニバンで似たような運転をしている光景を見ないわけではない。

だがそれは前述のとおり「ごく一部のドライバーの問題」でしかない。大半のLサイズミニバンユーザーは“それ”を普通に必要とし、ささやかかもしれないが大切な日常を送るための道具として、相棒として、静かに愛用しているものだ。

例えば神奈川県川崎市に住まう6人家族、山浦さんご一家である。

ともに薬剤師である山浦 卓さんと妻・綾乃さんは約20年前に結婚。独身時代はそれぞれBMW Z3やフォルクスワーゲン ゴルフワゴンなどに乗っていたが、第1子が生まれた時点で初代トヨタ プリウスに乗り替え、約6年をともにした。

そして第2子を授かったタイミングで2代目プリウスへと乗り替えた山浦夫妻は、プリウスという車に満足すると同時に、手狭であるとも感じていた。なぜならば「子どもは3人、あるいは4人ほしい」と考えていたからだ。

「僕が一人っ子だったということもあって、自分の子どもには兄弟姉妹が大勢いる人生をプレゼントしたいな――と思いましてね」と言う卓さん。そして綾乃さんも「限られた時間のなかでもしも生めるのであれば、3人目・4人目を生みたい、育てたい」と考え、夫妻は“大家族”への道を突き進むことを決意。

だが当然、そうなると2代目プリウスではさすがにいろいろキツいため、夫妻は2012年、3列のシートを擁するミニバンに乗り替えることに。そして車種は、秒殺にも近い形で先代の――当時はバリバリの現行モデルだった――トヨタ アルファードに決定された。

「いや秒殺といっても、もちろんほかのミニバンもいろいろ検討しました。トヨタ党なのでトヨタ車が中心でしたが、他メーカーの車種も見てみましたよ。でも、トヨタで言うエスティマとかノアとかは『なんだかんだ言って、4人家族がゆったり乗るための車だな……』というのが正直な印象だったんです」

4人家族であれば、3列目は「たまに使う」といったニュアンスになるため、5ナンバーサイズのミニバンでも特に問題はない。むしろ、取り回しに優れる5ナンバーサイズのほうがいいのかもしれない。

だが、3列目を「たまに」ではなく「常に」使用する想定の山浦夫妻にとっては、やはりアルファードぐらいのサイズがどうしても必要だった。そして、そういったサイズを有するミニバン各モデルのなかでは、アルファードこそがベストだと判断できた。

そういったもろもろの検討の結果として山浦家にやってきた2012年式トヨタ アルファード 240S。それは想像どおり、いや想像以上に、山浦家の面々に「移動する歓び」を与えてくれる車だった。

「僕も独身時代はBMWのZ3に乗っていたようなタイプですから、運転自体はけっこう好きなんです。なので、最初はこういった形状の車に自分が乗るということに『う~ん……』みたいな気持ちもあったのですが(笑)、実際乗ってみると杞憂でしたね。もちろんスポーツカーみたいな走りができる車ではありませんが、操縦感覚がすごくしっかりしているので、いち車好きとしての不満みたいなものはさほど感じていません」

そう語る卓さんとともに、綾乃さんも言う。

「正直、スライドドアって偉大だと思いましたね。主人みたいな車好きの人は、ミニバンに対していろいろ思うところもあるのかもしれませんが、でも実際、プリウスみたいなドア(筆者注:ヒンジドア)の車に子どもを複数人乗せるのって、ほんと大変なんですよ。子どもたちが隣の車に“ドアパンチ”しないように気をつけながら、荷物を出したり積んだりするのって……」

そのように、実は常に神経を張り詰めながら乗っていたヒンジドア車からスライドドア車に替わったことで、綾乃さんの心と身体は格段にラクになった。そして子どもたちも、母のピリピリとした感情に影響されることなく、アルファードならではのゆったりとした後部居住空間を満喫するようになった。

「というか、この子たちが物心ついた頃からウチの車はアルファードなので、この子たちは『車とはこういうもの』ぐらいにしか思ってないかもしれませんが(笑)」

と笑う綾乃さんではあるのだが。

そしてアルファードが納車となった頃はまだまだ小さかった子どもたちも、今や長女が高校2年生で次女が小学5年生。三女は小学1年生になり、その下の長男は保育園の“年中さん”になった。

つまり歳月が流れたことで、2012年式のトヨタ アルファードは必然的に“老朽化”しているはず。……ほかの車や、2015年に発売された現行型アルファードなどへの買い替えは考えなかったのだろうか?

「それがね、実は考えたんですよ。昨年の4月頃、『ウチのアルファードもそれなりに古くなってきたし、3列シートのSUVに買い替えるのも悪くないよね』なんて話しながら、妻とふたりで某3列シートの輸入SUVを見に行ったんです」

そう語る山浦 卓さん。しかし卓さんは、いや夫妻は、某3列シートの輸入SUVよりも「走行7万kmを超えた型落ちアルファードのほうが上」と判断した。綾乃さんが話を続ける。

「いや、もちろんその輸入SUVはとってもステキで、特に運転席と助手席はかなりカッコよくて、思わずうっとりしちゃうぐらいだったのですが、2列目と3列目が、我が家にとってはちょっと……という感じだったんですよね」

卓さんが補足する。

「そうなんですよ。もしも自分1人で乗るならぜんぜんアリかもしれませんが、やはりSUVだと3列目はどうしても“取ってつけた感じ”になりますし、2列目も、アルファードと比べてしまうと十分とは言えない。そのため――あくまで“ウチの家族の車”としては、ですが――多少古くなってきてはいるものの、まだまだ普通か普通以上に走ってくれて、僕たち全員を幸せな気分にしてくれる型落ちのアルファードのほうが『適任だな……』って思えたんですよね」

実は山浦夫妻は2015年、現行型アルファードがデビューしたばかりの頃にも一度、買い替えを検討するためディーラーに赴き、30系と呼ばれる現行型アルファードをチェックしている。だが、食指は動かなかった。

「もちろん外観は新型のほうがステキだとは思いましたが……」と綾乃さん。

「うん。特に3年ぐらい前にマイナーチェンジを受けたやつの外観は、なかなかステキだよね」と卓さん。

しかし夫妻は声をそろえて言う。

「でも車内の作りや乗り心地に関しては、『これはもう新しいやつに絶対乗り替えたい!』と思うだけの差はなかった。というか、『今のやつで十分かもね』という確認にしかならなかった」と。

4人の子を育てながらも薬剤師としてフルタイムで働く綾乃さんの通勤車として、そして主に週末の家族の外出のお供として活躍している先代アルファードの走行距離は、そろそろ8万kmに差し掛かろうとしている。

だが不具合は特に発生しておらず、前述のとおり(山浦さん夫妻いわく)現行型と比較してもなんら遜色のない各種パフォーマンスを発揮してくれるこの車を手放すつもりは、今のところ「さらさらない」と言う。

「やっぱりね、僕らみたいな家族だと、移動は車が圧倒的に便利なんですよ。特に旅行をするとなると、子ども4人を連れて電車や飛行機に乗って、荷物も持って……というのはかなり大変ですし、チケット代もはっきり言って痛い。でも車なら、というかアルファードなら、僕らは自由に、そして快適かつ割安に、どこへだって行けるんです。もちろん交通法規と道路の有無の範囲内で――ですけどね」

旅行好きな山浦家の皆さんは、妻であり母である綾乃さんの実家がある九州・宮崎県にもこれまで2回、トヨタ アルファードで行っている。

「もちろん川崎から宮崎までフルに運転するのは大変ですから、夜中に走って早朝大阪に着くようにします。そしてなんばや道頓堀あたりで名所やグルメを楽しんだら、夕方出発のカーフェリーで、ひと晩かけて九州に向かうんです。子どもたちは『アルファードでの道中』と『大阪の街』、そして『フェリーでのお泊り』という3種類ものおたのしみが宮崎に着く以前にあるため、かなり喜んでくれてますね」

昨年はコロナ禍の関係で叶わなかったが、今年か来年ぐらいの夏には、茨城県の大洗から出港するカーフェリーにアルファードと子どもたちを乗せ、北海道の雄大な大地を見せてあげたい――と、山浦さん夫妻は考えている。

(文=伊達軍曹/写真=阿部昌也)

[ガズー編集部]

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