リターン・バイカーが、スバル レガシィ アウトバックで愛機を引っ張る理由

  • スバル・レガシィ アウトバック

20代前半だった頃に打ち込んでいたオフロードバイクによるエンデューロ(耐久レース)に、40代にして再び参戦することを決意した。約20年ぶりに大人の財力でもって購入した競技用バイクは北欧の名門・ハスクバーナのFE250。

だが技術的にも体力的にもブランクが長すぎたか、購入から1時間後にはオフロードコースで派手に転倒していたという浜野健太郎さんだったが――

それはそれとして一般的には、競技用のオフロードバイクをコースまで運搬するための車は「四駆のトヨタ ハイエースが最適」と言われることが多い。

だが浜野さんがハスクバーナを運搬するために使っているのは、先代のスバル レガシィ アウトバックと、競技用バイクを乗せる軽自動車登録のトレーラーだ。

なぜハイエースに代表される箱型のバンではなく、クロスオーバーSUV+トレーラーなのか?

浜野さんが再びエンデューロに挑むことになったいきさつとともに、尋ねてみることにしよう。

  • スバル・レガシィ アウトバックとバイク用の牽引車

少年時代から車とバイクは大好きだったが「車は高くてちょっと手が出ない」ということで、バイクに熱中した。そして大学を卒業すると、そのままバイクを中心とする大手発動機メーカーに就職した。

だが工学部で機械を専攻していたはずの浜野さんが配属されたのは、なぜか新型バイクの実験と評価を行う部署だった。

「学生時代、バイクで走ることにはそれなりに熱中していましたが、とはいえ素人レベルで舗装路を走っていただけです。それがいきなり“評価”も行う部署で、超上手い人たちと一緒に土の上も走らなければならないことになり……正直、焦りましたね」

しかし配属されたからには焦ってばかりもいられず、浜野さんは自社のモトクロス競技用オートバイを購入し、練習に励んだ。

そして「どうせ練習するなら何かレースにも出てみよう」ということで、中部モトクロス選手権やエンデューロなど、さまざまなレースにエントリーした。

「まぁ『中部選手権に出ていた』というと聞こえはいいですが、僕が参戦していたのは高校生から出られるクラスです。そしてそこで、高校生たちにガンガン抜かれていたわけですが(笑)」

まぁとにもかくにも20代前半だった浜野さんは、業務とともにオフロードバイク競技に打ち込むという若き日々を送った。
競技用バイクを運搬するために使っていたのは、18万円で購入した中古の日産 バネットだ。

  • ハスクバーナのオフロードバイク

だがその後、転職とともにオートバイとは無縁の業務に忙殺されまくる日々を送ることになり、気がつけば、“本気のオートバイ”からは完全に離れていた。

オフロード走行とは別に熱中していた「山スキー」は続けていたし、そのために19万円で(!)中古のトヨタ RAV4を購入したり、5年前には、今乗っているスバル レガシィ アウトバックを購入したりもしていた。
またオートバイも、公道用のものを常に1、2台は所有していた。

しかしそれら公道用の二輪車はおおむね15年間、駐車場でホコリを被り続けていた。

そしてそんななか、やってきたのがいわゆるコロナ禍だった。

完全リモートワークとなり、マネージャー職である浜野さんには早朝から深夜までほぼ絶え間なく、オンライン会議が分刻みで入ることになった。
自宅のデスクに張り付いたまま食事をとる時間もなく、気がつけば体重は7kg減っていた。

「げっそりやせ細った自分を見て、そして何の楽しみもない毎日を繰り返している自分を顧みて、『これはマズい』と思いましたね」

さすがにマズい事態であると自覚した浜野さんは、とあるプロジェクトが一段落したタイミングで1カ月の有休を取得。そして1カ月間、毎日3~4時間の徹底的な肉体トレーニングに励むことにした。

なぜか? もう一度バイクに乗るためだ。

より具体的には、快適なツアラータイプの大型オートバイで舗装路を走るためではなく、「もう一度エンデューロに出場するため」である。

競技者としてのブランク期間は20年近くに及び、浜野さん自身の年齢も40代半ばを迎えようとしていた。それでも、「もう1回“自分”をやり直したい」と思ったのだ。

ハスクバーナのオートバイを取り扱っている知人業者から前述のFE250という競技車を購入し、そしてこれまた前述のとおり、購入からわずか1時間後に大転倒した。

「……まずは身体を作らないことには走ることすらままならん!」と痛感した浜野さんは前述の1カ月間で肉体改造を行い、現在も毎日1~2時間は自宅で筋トレに励んでいる。

で、ここへきてやっと「しかしなぜ、四駆のハイエースとかではなくレガシィ アウトバック+トレーラーなのか?」という主題に到達する。

  • スバル・レガシィ アウトバックで引く牽引車にハスクバーナを乗せる浜野さん

オフロードバイク趣味を復活させるにあたり、なぜ浜野さんはアウトバックから箱型のバンに買い替えなかったのだろうか?

「便利か便利じゃないかで言えば、4WDのハイエース バンのほうが絶対に便利なんですよ。でも、僕にとって『どちらが心地よいか?』と問われたなら、レガシィ アウトバックで軽自動車登録のトレーラーを引っ張るほうが、断然快適なんですよね」

浜野さんが言ったのはこうだ。

オフロード競技用のバイクは、コースを走れば当然のように泥だらけになる。そしてそんな泥だらけのバイクを箱型の車に収めようとすると――
便利で簡単ではあるのだが――

泥まみれのバイクを車に積み込み、
バイクを洗える場所まで持って行って再び降ろし、
着替えを済ませた普段着の状態で泥だらけのバイクを洗い、
車の荷室スペースを掃除し、
洗車が終わったバイクを積み込み、
洗車時に汚れてしまった普段着をまた着替える

――という一連の流れがどうしても必要になる。

「でもトレーラーだと、このままの状態で泥まみれのマシンに水をぶっかけて洗えちゃうんですよ。そこが、自分にとってはとっても心地よいんですよね。もちろん、トレーラーにはトレーラーならではの面倒くさい部分もあるわけですが……」

トレーラーの面倒くさい部分とは、まずは単純に「置き場所の問題」がある。レガシィ アウトバックを駐車しているスペースにトレーラーも置くことはできないため、アウトバック用とはまた別に、1台分の駐車場を確保しなくてはならないのだ。

そして第2の面倒くさい話として「お金の問題」もある。このサイズのトレーラーは軽自動車扱いであり、任意保険はレガシィ アウトバックにかけているものを適用できるため、保険は自賠責保険だけで済む。

そのため、安いものといえば安いものではあるのだが、ハイエース1台で済ます場合よりは余計なコストがかかり、2年に一度は車検を受ける必要もある。そして高速道路料金も、トレーラーを牽引している際は中型車の料金が適用される。

だがそんな「トレーラーならではの面倒くさい部分」を勘定に入れたうえでなお、浜野さんは「箱型の車に買い替えるよりもアウトバック+トレーラーという方式のほうが、あくまで僕にとってはですが、断然いいんです」と言う。……なぜ?

「理由は簡単です。なぜならば、トレーラーであれば『切り離す』ことができるからです」

  • スバル・レガシィ アウトバックと牽引車の接続部分

競技用のオフロードバイクを運搬するのに大変便利な箱型の車は、バイクを降ろした後であっても「箱型の車」でしかない。

しかしアウトバック+トレーラーであれば、トレーラーさえ切り離せば、シュアな走りを身上とするクロスオーバーSUVであるスバル レガシィ アウトバックという車に瞬時に戻れる。

それが、浜野健太郎さんが競技用オフロードバイクを約20年ぶりに購入したとき、四駆のハイエース バンを買おうと思えば買える状況であったにもかかわらず、「レガシィ アウトバックにトレーラーをくっつける」という選択をした理由なのだ。

「相変わらず山にも行ってますから、『山道を楽しく走ることができ、そして山スキーで疲れ切った帰り道は運転支援システムに助けてもらえる』

そういう意味でも、運転支援システムが付いていない箱型の車より、アイサイト付きのクロスオーバー車であるレガシィ アウトバックのほうが僕には向いてるんです。

そしてレガシィ アウトバックは後席を倒せばほぼほぼフルフラットになって、山で前夜泊するときも足を伸ばして寝ることができますしね」

  • スバル・レガシィ アウトバックのメーターパネル
  • スバル・レガシィ アウトバックをフラットにした状態

オフロードバイクには今年3月に復帰したばかりだが、早くもレースに出場し、今後も月に1回ほどのペースで大会に出場していくつもりだと、浜野さんは言う。

「まだまだ“勝つ”ことを目標にできる状態ではありませんし、今後も、トレーニングを重ねたところで勝てる保証なんてどこにもありません。

でも……『今までできなかったことができるようになる』というただそれだけで、そして『自分にはまだまだ伸びしろがある』と確認できるだけで、心底楽しいんですよ。

山岳会のほうでご一緒している諸先輩の例を見る限りでは、どうやら人間の身体能力って65歳ぐらいまでは『トレーニング次第でまだまだ伸びる』ということでもあるようなんです。

ですから僕の場合はあと20年……別に世界一になりたいわけでもレースで勝ちたいわけでもなく、『今までできなかったことができるようになると、とにかく俺自身が楽しいから!』という理由だけなんですが、練習と挑戦を続けていきたいんですよね」

  • ハスクバーナで水たまりも躊躇なく進む浜野さん

浜野健太郎さんの挑戦、というか「挑戦を続けることによって、自分自身が歓びを感じる」という一連のサイクルをサポートするための車は、何も「絶対にスバル レガシィ アウトバックじゃないとダメ!」ということもないだろう。

だが、この「きわめてタフではあるが、運転自体がファンな車でもあり、抜群のユーテリティ性も備えている」という、他にありそうで実はあまりないスバル レガシィ アウトバックという車ならではの特性が、浜野さんの再挑戦を影日向に支えていることは――おおむね99.9%の確度で間違いないだろうと、筆者としては断言したいのだ。

  • ハスクバーナにまたがり笑顔を見せる浜野さん

(文=伊達軍曹/撮影=阿部昌也/編集=vehiclenaviMAGAZINE編集部)

愛車広場トップ