アウトドアブランドとのコラボから手作りコンセプトカーまで! 自動車メーカーも新たな楽しみ方の提案に真剣!!
東京オートサロン2022では、自動車メーカーのブースでもアウトドアカーライフを意識したカスタムカーや展示スペースが来場者の注目を集めていた。そこで今回は、ホンダ、三菱自動車、ダイハツの3社が展示していた車両について、開発コンセプトやそこに秘めた想いなどを伺った。
【ホンダ N-VAN】釣り好きデザイナーが手作りしたトレーラー風カフェ仕様
ホンダブースでアウトドア感あふれるスペースに展示されていたのはN-VANとN-WGN。共通するのはそれぞれシンプルでベーシックな素性の良さを持つ軽自動車であり、カスタムすると個性を生かした世界観を自分で作ることができる拡張性も持っているという点だ。
この2台はそれぞれその素性の良さを生かしながらも違った形でアプローチをされていた。
まずはステンレスの風合いが目を惹くボディにキッチンカーのような内装カスタムが施されたN-VANカスタム。
お話を伺ったのは、本田技術研究所デザインセンター オートモービルデザイン開発室BEVスタジオのデザイナー佐藤さん。
「僕の趣味は釣りなんですが、最近はテレワークで在宅仕事が多くて、例えば朝早く釣りに行って、帰ってきてまた仕事して夕方もう一度釣りにいきたいと思ったときに、クルマの中でパソコン仕事ができたらどんなにいいだろうって思いまして。そういう視点から“仕事と趣味を両立するクルマ”をコンセプトにしてみました」
そんな佐藤さん自身の経験をもとに理想を体現したN-VANカスタムのポイントは、その“簡易性”にある。
「外装は古き良きトレーラーハウスをイメージしたラッピングなんですけど、1本2万円くらいのロールを買ってきて自分で貼って、最後に紙やすりでステンレスっぽい風合いに仕上げ、リベットっぽくシールも貼ってみました。
中のテーブルはホームセンターで買える木材をカットして作ったもので、上から載せるだけで完成です。『良いものを長く使っていこう』という世の中の流れも考慮して、DIYで車体に穴を開けるなどクルマを傷つけるようなことなくカスタムできるように工夫してみました」
自動車メーカーのデザイナーさんが自らDIYで作りあげたというだけでなく、これだけの内装カスタムがクルマ側には無加工で実現できるということにも驚かされた。ちなみにテーブルの設計図はホンダのウェブサイトでダウンロードすることもできるようになっている。
【ホンダ N-WGN】ピクニックが楽しくなる純正アクセサリーの提案
ホンダの純正アクセサリーメーカー『ホンダアクセス』が提案するN-WGNカスタムのコンセプトは「WEEKEND PICNIC FOR YOU.」。お話を伺ったのは、ホンダアクセス商品企画部デザインブロックアシスタントチーフエンジニアの大西さん。
「週末にちょっと近場の公園にクルマで行って、好きなものを広げてくつろいで夕方には帰ってくる、あくまでキャンプではなく気軽に楽しめるピクニックをするのにちょうどいいカスタムを提案してみました。僕自身も山登りが趣味なので、こういう風にできたら楽しいだろうなって考えました」
あくまでお休みの日などにクルマで公園や河原にピクニックにでかける気軽なアウトドア仕様というわけだが、このカスタムのポイントはクオリティはもちろん機能性やデザインなども商品化も見据えた完成度で仕上げられている点だ。
「鉄板やガラスなど元のボディは一切イジらずに、アフターパーツとして追加できるコンセプトを表現しています。エクステリアはライト類やグリルなどに優しく楽しい印象を与える丸いパーツを多用し、インテリアもダッシュボードはホンダアクセスとしてもともとあるアイテムの素材感を変えたものです。
シートエプロンは汚れたらすぐに洗えるので便利ですし、革製の有孔ボードは固定位置を変えることでティッシュペーパー入れやハンガーなどいろいろな用途に使えます。テーブルは折りたたんでそのまま収納し荷物ボードとしても使えるようになっているんですよ」
ホンダブースに展示されていたコンセプトカーは、それぞれアウトドアカーライフを意識してカスタムされていたが、各々の立場からのアプローチの違いが明確に現れている2台だった。
【三菱 ミニキャブ・ミーブ/デリカD:5/アウトランダー】ファンの心をくすぐる老舗ブラントとのコラボ
三菱自動車ブースでピックアップするのは、ミニキャブ・ミーブとデリカD:5、そしてアウトランダーの3台。もともとアウドドアへのアプローチに強い三菱だけに、3車3様のアウトドアカーライフの提案の仕方をしていたのがポイントだ。
最初に目を引いたのはクロスオーバーSUVアウトランダー『OUTLANDER Wild Adventure Style』。なんと、1914年創業の老舗アウトドアブランド『ogawa』とコラボレーションした『キャンピングパッケージ』を純正アクセサリーとして製品化しているのだ。
お話を伺ったのは三菱自動車 用品開発部の宇野さん。
「私自身がキャンプ好きというのがあり、多くの方にクルマと一緒にアウトドアを楽しんでもらう形として、クルマをベースに拠点が作れるカータープが最適だなと考えました。もともとアウトランダーは行動範囲の広さが特徴の車種なので、コンセプトにも合うことから、まずはこの車種の純正オプションとしてカータープとワンタッチサンシェードのセットを展開することになりました。
さらに、メッシュテーブルとローチェアも製品化したので、デイキャンプやバーベキューでもさっと用意できてすぐ片付けられるライトな楽しみ方ができると思います。カータープはメッシュウインドウ部分を5角形にして開放感を高めたり、オリジナルの配色にしたりと独自のこだわりも加えているんですよ」
軽商用EVのミニキャブ・ミーブ『MiniCAB MiEV B-Leisure Style』は、EVならではの機能を活用し、パソコンやケトルなどを使いながら部屋で仕事しているような感覚で使えるというイメージを具現化。もともとフラットなフロアにクッションを敷き、カーテンなども装着することで快適性を高めるなど、ユーザーが使い方をイメージしやすいような展示となっていた。
オールラウンドミニバンとして人気のデリカD:5『DELICA D:5 Tough × Tough』は、今後市販予定のラリーアートアクセサリーやクロスカントリーテイストを強調するアフターパーツによって、タフさを強調し世界観を広げてくれるコンセプトカー。
実際に市販が決定しているパーツやアクセサリーで実現可能なカスタムモデルを提示してくれるところが三菱自動車の特徴といえるだろう。
【ダイハツ アトレー】「お風呂」と「オフロード」!?遊び心が生んだ仰天マシン
最後は、ここ数年の東京オートサロンにユニークなコンセプトモデルを提案してきたダイハツだ。今回も期待を裏切らず『世界最小の4LDK』というコンセプトのもと、モデルチェンジをした新型アトレーデッキバンベースのカスタムを展示。その開発背景を語ってくださったのはダイハツ工業 デザイン部第一デザイン室SEグループ主任の米山さん。
2017年から東京オートサロンに向けた企画とデザイン制作を一手に担ってきた企画開発の柱というべき方だ。
「今はコロナの影響で在宅仕事の方が多いですよね。実際僕も今はほとんど在宅なんです。だけど、コロナ前に家を建てたから自分の部屋がない…世の中にそんなお父さんがいっぱいいるはずです。そこで新型車であるアトレーデッキバンをベースに“世界最小の4LDK”というコンセプトのカステムにしてみました。
4LDKとは運転スペースと荷物スペースと寝るスペース、で後ろにお風呂、Kは軽自動車のKです(笑)。この1台で私が部屋がわりにのんびりできるという趣旨なんです」
キャンピングカーにシャワーはあるが、お風呂が備え付きというのは驚きだ。しかも取り外し可能だという。
「僕がアトレーデッキバンを見たときにピンときたのが『これ、お風呂になるじゃん』ということ。車高を上げてオフロード、お風呂…みたいにダジャレも絡んでいるけれど、クルマ自体は真面目に作っていますよ。
自分のスペースってやっぱり欲しいじゃないですか。お風呂に入って自分だけの景色を楽しむとか。アトレー自体も第3の居場所みたいなのを訴求しているので、そういうのを表に出せるんじゃないかと思ったんです」
ちなみにお水は電気で温めることが可能だという。こういったオリジナリティあふれるアイデアに目を奪われがちなデッキバンカスタムだが、それ以外にも米山さんならではのこだわりもしっかりと反映されているところも見逃せない。
「僕はもともとデザイナーなので、造形とかもめちゃくちゃこだわっているんですね。例えばフロントのフォグランプは本当はもっと下の位置なんですが、車高を高く見せるために上に持ってきていて、さらに純正っぽく作っています。同じようにリヤのロールバーも純正の取り付け穴を利用して違和感のない形状に変更しているんです」
車内はシートカバーやマットなどは純正オプションをそのまま使っているため、運転席周りだけだと普通のクルマとイメージは変わらない。しかし後ろのスペースは、椅子をたたんで部屋にして、キャンプ道具を置いたりする荷物スペースとして様変わりしているのがいい。またカラーリングは森も中でも目立つようにとオレンジベースとなっているそうだ。
「僕は『ダイハツは楽しい』とお客さまに思っていただきたいと考えています」という米山さん。今回はそれがたまたまアウトドア向けの提案だったということだが、他とは一線を画す実用性とアイデアの詰まった独特なスタイルは、見た人をワクワクさせてくれる提案だったのは間違いない。
コロナ化で空前のアウトドアブームとなっている今、各メーカーがそれぞれのクルマの特徴を生かして実際にクルマを使ったアウトドアライフを具体的に提案してくれるのは、ユーザー側からするととても魅力的だ。これらを参考にすることで、私たちのカーライフの楽しみ方がより充実するのは間違いないだろう。
そして、お話を伺った担当者さんが、みなさん揃って笑顔で、溢れ出すお話が止まらなかったのがとても印象的だった。
(文:西本尚恵/撮影:土屋勇人)
[GAZOO編集部]
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