「車内だと娘との会話も弾むんです」。家族の思い出を乗せて走るアベンシスワゴン

  • トヨタのアベンシスワゴン

「家族が増えて2シーターのスポーツカー1台では不便になったから、仕方なくファミリーカーに乗り換えた」など、“家族のために仕方なく好きなクルマに乗るのを諦めた”というフレーズを見かける機会は少なくない。
荷物がたくさん詰めて大人数で出かけられるクルマを購入することは、家族連れにとっては実に理にかなっている選択のはずだけれど、どこかそれを嫌がる風潮があるのは否めないだろう。

しかし、今回取材した岩下さんは「家族みんなで出かけられるクルマが1番いい」と語ってくれた。そして、スポーツカーやクロカン四駆など、様々なジャンルのクルマを10台乗り継いできた結果、見つけた答えが現在の愛車である“アベンシスワゴン”だったという。

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「免許を取って35年になるんですけど、所有してきた愛車はアベンシスワゴンが11台目になります。僕らが若い頃はホンダ車が人気やって、インテグラから車歴が始まり、バブル期は4ドアセダンハイソカーのアコード、その後にインスパイア、アコードワゴンと乗り継いできました」

いろいろなクルマに乗りたいという理由から、頻繁に愛車が入れ替わっていたという岩下さん。なかでも特にお気に入りで「乗り換えた後に後悔したのははじめてでした」というのがアコードワゴン。
スキーやキャンプに行く際に、大人数で快適に過ごせる車内。同乗者の荷物を沢山積めるなど、アウトドア好きな岩下さんにとってアコードワゴンは最適なクルマだったと、感じたのだという。

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「アコードワゴンとは、阪神・淡路大震災を一緒に乗り切ったというのもそう感じた理由のひとつかもしれません。あの日は僕の誕生日で、どっか神戸にでも食べに行こかって話してたんです。そしたら、まさかの大震災で大変なことになってしまって。

当時はまだ交際中だった妻が、自宅から20kmくらい先にある神戸市内の病院で看護師をしてたんです。『こういう時にこそ絶対に出勤せなあかん』と、ママチャリに乗って病院に行くと言うんです。震災直後は、そういう人が沢山いててね。2号線沿いの線路が、これはあかんわっていうくらい崩壊してたから、みんなリュックを下げてママチャリや徒歩で仕事に行ってました」

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「1月の寒い時期やったし、何があるか分からんから心配でたまらなくて。僕の都合がつく時は、妻を送り迎えしたりもしました。その時に、通勤用の自転車を積む機会が多くて、こういう事が出来るステーションワゴンを買って良かったとしみじみ感じたのを覚えています。

ほかには、病院の前に給水車が来るから、ポリタンクに水を入れて運ぶのにも大活躍してくれました。アコードワゴンがおったからこそ、乗り切れたといまでも思っています」

岩下さんご夫婦はこの年の末にお互いの両親に結婚の承諾を得て、翌年の秋に入籍したという。震災の被害により、結婚式場がどこも建替え工事中、ホテルなども復興作業に従事している方の宿泊施設として使用されていたため、式場探しに苦労したのは今となっては良い思い出だそうだ。

「僕がいろいろなクルマに乗れるのは妻のおかげなんです。クルマが大好きということを知ってるから、短期間の所有でも乗り換えたいと相談すると『ええんちゃう』と。お陰様で、嫌なことのガス抜きができていると改めて実感しています」

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そんな岩下さんが、アベンシスワゴンに乗り換えるキッカケとなったのは、その前に乗っていたZZT231セリカが事故により廃車になってしまったためだという。

「次に乗るクルマはどないしよかとなっている時に、アコードワゴンのようなステーションワゴンに乗りたいと、ふと思ったんです。すぐさまステーションワゴンについてネットで調べていると、アベンシスワゴンが目に止まりました」

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正面ちょっと上から見たときのフェンダーが張り出したワイド感、同クラスのステーションワゴンで1番広いと思えるカーゴルーム、ベージュのレザーシートで明るくゆったりした室内など、尖ったスタイリングではなく、どこかゆったりとした欧州っぼい雰囲気が気に入ったそうだ。

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こっそり施しているカスタムは、セダンと同じくらいちょっと下げた車高と、インチアップしたディッシュタイプのホイール。純正だと黒くて見えなかったマフラーは、延長してしっかり見えるようにしているという。TRDステッカーは、スポーティーさを演出するためにセリカに貼っていたものを引き継いだそうだ。

2000ccで遅そうだと思っていたが、踏むと力強く走るところや、ロールが少なくコーナーリングがスムーズなこと。ゴツゴツした乗り心地も無いところも気に入っているという。

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「後期になると、ヘッドライトが今のトヨタの顔になるんです。C-HRみたいな、とんがっている面持ちというかね。僕の選んだ中期は、90年代風で、クラッシックで優しい顔やなぁと思ったんです」
外観を眺めていると、アベンシスワゴンは、どことなく岩下さんと同じ匂いがする。優しく諭すような口調や表情、クルマに関するエピソードは、自分とクルマではなく、家族の話にまつわることばかりだったからかもしれない。

例えばこうだ。
奥様と長女はロールの大きいクルマはクルマ酔いしてしまうので、そういうクルマは好まないこと。
家族旅行の時に4人分の荷物がしっかり積めて、家族が静かな室内でゆったりドライブを楽しめるのがベストなこと。
長女がイギリス留学に向かう際には、大きなスーツケースを持って電車移動させるのが心配なのでイギリス生まれのアベンシスで送迎したこと。

屋根を支える柱のように家族を守っている優しい岩下さんの顔が、ほっと落ち着けるアベンシスワゴンのフロントデザインと、共通の何かを感じるのだ。

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「クルマでの送迎は面倒臭いなぁ~と思う時もありますよ。昨日も『スマホの機種変更するから連れてって~』とか言うてきて。え、今から!?みたいな(笑)。あとは、娘がよく使っているJR神戸線がよう止まるんですけど、『〇〇駅まで来たから迎えに来て~』と。めっちゃ遠い駅やんそれ…みたいなね。やから、うかつにお酒も呑めない (笑)。

それでも送って行くんはね、娘2人は自宅だと必要最小限しか話してくれないんですけど、クルマの中では会話が弾んで、進路やら仕事やら、時には彼氏の事も相談されたりで、めっちゃ頼られてる父親やん!と、嬉しくて。2人とも成人しても免許を取ろうとせんから、当面はクルマの中が会話が弾む空間になりそうです」

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子供達と過ごせる車内は、岩下さんにとってもかけがえのない空間になっているという。

「僕の父親が亭主関白やったんで、絶対そうなりたくない!と思ってるんです。もちろん、良い所もたくさんありましたけどね。やから、自分はなるべく感情的にならないように、主観で物事を判断せず聞く耳を持つことを大切にしてるんです。

時にはイライラすることもありますけど、そういう時は好きな音楽を聞いて運転すると、静かで冷静な気持ちになれます。また、自分のことを客観視することもできるようになる。車内は、僕にとってマインドフルになれる空間で、大切な場所です」

「家族の話が多いのは、アベンシスワゴンが家族全員の物で、家族とのちょっとした思い出が、クルマと共に思い出されるからです。思い出す度に“ほっこり”するし、思い出を増やしたいから、まだまだ乗り続けますよ」と、優しい顔で話してくれた。

今後の夢は『チャイルドシートを後席に取り付けること』だという岩下さん。次は、お孫さんをやわらかな愛情で包み込むのだろう。

取材協力:大蔵海岸公園

(⽂: 矢田部明子/ 撮影: 平野 陽)

[GAZOO編集部]

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