「どうせ乗るならカッコいいクルマがいい!」高回転サウンドもボディカラーもすべてがお気に入りのタイプR

  • GAZOO愛車取材会の会場で道の駅 あきた港 ポートタワーセリオン イベント広場で取材した2008年式のホンダ・シビックタイプR(FD2型)

    2008年式のホンダ・シビックタイプR(FD2型)

クルマに対して“好き"というよりも“病気"という表現がしっくりくるくらい、クルマ無しでは生きていけないと話す俵さん。愛車は2008年式のホンダシビックタイプR(FD2型)だ。
冬になると秋田は雪が積もるため、お世辞にもそういう土地に適しているとは言えないクルマだそうだが、それでも乗っている理由はいたってシンプルで“カッコいい"からだという。では、なぜカッコいいクルマに乗りたいのか?というと、そこにはしっかりと俵さんのポリシーがあった。

先代モデルであるEP3型の生産終了から2年後、それまでの2ドアから4ドアとなり、ボディも3ナンバーサイズへと大きくなるなど、使い勝手も向上した3代目シビックタイプR(FD2)。
搭載されるエンジンは先代と同じK20A型だが、吸排気系の見直しなどを行うことでパワーアップが図られていて、足まわりも(かなり)硬めのセッティングになっているなど、特に手を加えずともそのままサーキット走行ができるくらい走りに特化したモデルだ。

さらに、ホンダのタイプRといえば『チャンピオンシップホワイト』というイメージが強いが、俵さんの愛車のボディーカラーは『プレミアムディープバイオレットパール』という球数の少ない貴重な個体。
実はこの色は“俵家のシンボルカラー"なのだとか。なんでも、お母様が紫色が好きで、俵家のクルマは紫色だと決まっているのだという。
「0歳の時からクルマが好きだったのは、間違いなく母の影響です。実は、母もシビックのマニュアル車に乗っていたんですよ。僕が産まれて降りてしまったんですけど、その後に初代ムーヴのマニュアルを購入したのは、シフトチェンジの際に引っ張れるという理由でしたから(笑)」

おぼろげに覚えているのは、お母様がシフトノブをガチャガチャしながら色々な場所に連れて行ってくれたことだそうだ。カスタムの方向性や、部品の話など色々な相談に乗ってもらうことも多いほか、息子である俵さんが昔乗っていたシビックを購入したということで、拝借してドライブに行っているのをたまに見かけるという。
「就職して1年目記念にシビックタイプRを購入しなければならない」と、 こじつけの理由をご両親に話した時、実用性のないクルマを買うなと猛反対するお父様の傍で、大絶賛してくれたのがお母様だったと笑いながら話してくれた。

こうして、一悶着ありながらも愛車として迎え入れたシビックタイプRは、間違いなくカッコいいクルマだったという。ポイントとしては純正リアウイングと、ボディカラーに合わせて塗装してもらった無限のフロントスポイラーとのこと。スポーツカーの象徴と言えるこの箇所に惹かれてしまうのは、スポーツカー好きの性というものだろう。

「前の愛車のCR-Zは結構イジっていたんですけど、今は何もしないようにしているんです。ノーマルデザインが美しいと思うから、イジればイジるほど世界感を壊しちゃうかなぁって…けど、もうちょっとマフラーを大きくした方が良いんじゃないか? とか、サイドは何もしなくて大丈夫だろうか? とか、ついついやりたくなっちゃうんですよね。ダメだ! やっちゃダメなんだ…!」

納車から約5年が経ったというが、外観はGPスポーツ製 マフラーと無限 フロントスポイラー“のみ”で、走行性能に関しては プロジェクトμ製の ブレーキパッドとジェイズレーシングのサスペンション“しか”イジっていないと、隣にいた新婚ホヤホヤの奥様に褒めてくれと言わんばかりに説明していた。奥様の「ねー」という空返事が宙を舞ったのは、呆れて? いや、諦めているからだそうだ。
「自分が運転している動画を撮ってくれと頼まれるんですよ。その動画を何に使うのかと思ったら、夜な夜な見返して音が良いだの、ステアリングの切れ方がどーのこーのって語り出すんです。結構キテルと思うんですよね」と同意を求める奥様に、そうですねとは言えず何とかやり過ごした。

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そんなエピソードにも現れているように、俵さんはとにかく運転が好きなのだという。
何がそうさせるのかというと、例えば、背中がぎゅーっとシートに押しつけられる感じや、加速するにつれて変わるエンジン音、スピードにあわせてギヤを変えていく気持ちよさ、そして自分の運転の仕方によって如何様にでも走れるところだという。モットーは助手席の人の頭が動かないくらいスムーズな運転をすることで、適切な場所でブレーキを踏み、ハンドルを切るという操作を常に研究するのもまた面白いそうだ。

  • GAZOO愛車取材会の会場で道の駅 あきた港 ポートタワーセリオン イベント広場で取材した2008年式ホンダ・シビックタイプR(FD2型)の運転席

    2008年式ホンダ・シビックタイプRの運転席

「手首の力で、シフトをスパンスパン変えていくのが好きなんですよ。なんというか、操っているという感じがするでしょ? あとは、VTECエンジンの独特な走り味が良い!  普通のエンジンよりも高回転まで回るし、そんなに回さなくても音が切り替わってパワーが出始めるのが伝わってくるんです。あの独特な走りは、1度味わったら癖になっちゃう人が多いんじゃないかなぁ?」

高回転用と低回転用の2種類のカムプロフィールを使い分けることで、スポーツ走行のみならず日常使いも快適にこなせるHONDA伝家の宝刀である可変バルブタイミング・リフト機構『VTEC』。俵さんは、これにハマってしまっているのだ。そして、ハイカム領域内でパワーをフルに引き出しつつ、シフトアップを繋いでいくためにトランスミッションは専用の6速MTが組み合わされている。

「僕は、高回転型NAエンジンを搭載した個体が良かったんです。ターボじゃなくて、あえてNAなことが重要でした」
ターボエンジンと比べてより高回転域まで回る特徴があるNAエンジンは、甲高いエンジン音がするとのことで、この“NAサウンド"に酔いしれたかったと話してくれた。

「こういう話をしていると、自分にとってはじめてのマニュアル車だったCR-Zのことが頭に浮かびますね」
今でこそ運転を楽しむ余裕ができたというが、最初はそれどころではなかったことを思い出すのだそうだ。
というのもCR-Zを購入した当時は同年代の友達にクルマ好きがおらず、マニュアル車の良さを理解してもらえないことが多かったという。「やめとけば?」と言われ、意固地になって啖呵を切って購入したCR-Zだったが、納車後の家路で、その想いと自信は見事に打ち砕かれたと話してくれた。
「思った以上に運転が難しかったんですよ。ディーラーを出ていきなり右折、そのあと大通りに出て、坂道が待ち構えていたんです。で、極め付けは前がパトカー…今でもよく覚えていますよ。みんなの前であんなにカッコつけたのに、全然うまく乗れないのかよ…ってなっていました(笑)」
それから人知れずに練習をして、今のように運転を楽しめるまでになったと得意気な顔をした。運転の楽しさだけではなく、シビックタイプRを購入するまでの7年間、クルマいじりの大変さや楽しさ、カスタムの方向性など、色々なことを学ばせてもらったという。

そして、シビックタイプRは、クルマ好きの友達と繋いでくれたという。それまではクルマに関することを話せる友達がいなかったため、1人でドライブに行ったり、何をするにも自己完結することが日常だったという。もちろん、それがつまらないというわけではなかったが、誰かと相談しながら決めるのも楽しいだろうなと思うこともあったという。
「SNSで“今ここら辺に何人かでいるよー。来ないー?"というDMがきたんです。複数人でいるということだったから、何かあったら怖いと感じて、最初はお断りしていたんですよ。それでも誘ってくれて、今度は断るのが怖くなっちゃって(笑)。勇気を出して会いに行ったら、すっかり仲良くなりました」
色々な人の意見を聞くことで、クルマに対する知識も増えていったし、価値観も変わっていったという俵さん。ただ、スポーツカーに乗り始めてずっと変わらないのは…カッコいいから乗っている、という理由らしい。

「秋田って、見ての通り田舎なんですよ。公共交通機関もあるにはあるけど、全域に渡って充実しているというわけではないから、クルマは絶対にないといけないものなんです。だけど、わりと道も空いているし、景色が良い場所も多くて、クルマにとっては最高の環境だったりするんです。せっかくそんな場所にいるのだから、ただの移動手段としてクルマに乗るんじゃなくて、自分がカッコいいと思うクルマに乗ると、その時間がすごく楽しくなるじゃないですか。それって、人生においてすごく大事なことだと思うんです。だから、僕はカッコいいスポーツカーに乗り続けます」
清々しい笑顔が、サンサンと輝く太陽の光にあたってさらに眩しい。

“若者のクルマ離れ"なんて、一体いつから言われるようになったのだろうか。俵さん、そしてそんな俵さんと共に86ライフを楽しむ奥様のような若い世代にも、クルマの魅力は脈々と受け継がれている。

取材協力:道の駅 あきた港 ポートタワーセリオン イベント広場(秋田県秋田市土崎港西1-9-1)
(⽂: 矢田部明子 撮影: 堤 晋一)
[GAZOO編集部]

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