ソアラ(JZZ30)が見せてくれる未体験ゾーン。50才からの新たな挑戦

  • ソアラ JZZ30

一度きりの人生で、自分を輝かせてくれるものに出会える機会はそうそうない。愛車のトヨタソアラ(JZZ30)は、それまで体験したことがない新しい世界へと誘い、生きがいを与えてくれる素敵な相棒だという。遅咲きながらドリフトを楽しんでいるという。

「10年ほど前に、クルマ好きな友達に誘われてサーキットでドリフトするクルマの横に乗せてもらった時に、すごく楽しくて『私もドリフトをやってみたい!!』って思うようになったんです」
そう笑顔で話してくれたのはトヨタ・ソアラ(JZZ30)に乗る沖縄県在住の前川里子さん(55才)。
何の知識もない方が初めてドリフトを生で目にすると、モクモクのタイヤスモークやスキール音が織りなす迫力のパフォーマンスに圧倒されることだろう。前川さんも、同乗走行でその楽しさに触れたことで「自分でもあんな走りをしてみたい」と憧れ、このソアラを購入するに至ったという。

「昔からドライブは好きでしたね。運転免許を取って最初に乗った愛車は見た目のカッコよさに惹かれたランサーで、結婚してからはクラウンやラウンドクルーザーやタントエグゼなどに乗っていました。でもこんなにクルマにハマったいちばんのキッカケは、やっぱりドリフトの同乗だと思います。私には36才の長男と、34才と27才になる娘がいるんですけど、ドリフトをはじめたい!って思いはじめた頃にちょうど下の娘が免許を取るタイミングで、免許を取ったら私の乗っているエグゼをあげると約束していたので、せっかくなら次はドリフトできるクルマに乗り換えようと探すことにしたんです」

こうして2016年に前川さんが購入したのが、1996年式のトヨタ・ソアラ(JZZ30)。
排気量2.5Lの直列6ツインターボエンジン1JZを搭載したハイパワーなFRクーペだが、ラグジュアリー志向のため車両重量があり、MT車が少なかったこともあってドリフトシーンではマイノリティといえる。
ドリフトで人気の車種といえば日産のシルビア&180SXやトヨタのマークIIやチェイサーなどが王道と言えるが、あえてソアラを選んだのはなぜだったのだろう?

「日産180SXとソアラが乗り換えの候補にあがっていたんですけど、私はクルマ自体にはあまり詳しくはないので、娘ふたりに『どっちがいい?』と聞いたらソアラのほうがいいというので、それにしました。選んだ理由は見た目だと思います。『これ、カッコいいじゃん』みたいなそんなノリで(笑)」

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至ってシンプルな理由だけれど、この『カッコいい!』という直感は、愛車としてとても大事な要素なのは間違いない。
実際、前川さんにソアラの一番好きなところを伺うと「見た目のカッコよさが最高ですよね!」と満面の笑み。購入して7年が経った現在、前川さんも愛車のルックスにベタ惚れなのだ。

「このクルマは私がはじめてドリフト同乗させてもらったお友達の糸洲さんがオークションで見つけてくれたものなのですが、購入してすぐに『さあ、ドリフトするぞ!』とはいきませんでした。というのも仕事の都合で週末に休みが取れなくて、ドリフトを始めたのは5年前くらいからで、とりあえずクルマはノーマルのままドリフト練習をスタートしました。その後は糸洲さんにアドバイスをもらいながら車高調、LSD、それからオーバーヒート対策にラジエターを交換しました」

「今でも年に3、4回くらいサーキットに行ければいいかなという状態ですが、それでもサーキットでドリフトするとすごくスッキリするし楽しいんです。それに出勤時などの街乗りでも、乗っているだけで『このクルマって最高! 気分がいい』って思えるんですよ」

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「もともとはクリーム系のホワイトだったんですけど、買ってから2年くらい経った頃に一度オールペンしてこのホワイトにしました。また色を変えたい気持ちもあって、水色とか、最近は赤もいいなと思いはじめたんですけど、なかなか決められなくて (苦笑)」
爽やかなボディカラーに加え、購入時に装着したというボルクレーシングのホイールもスポーティな雰囲気に一役買っている。また、車内に目を移すと運転席にはレカロ製バケットシートが装着され、ステアリングもナルディのパンチングレザータイプに交換されていた。

「私がこのクルマで一番気に入っているのが、ヒップスタイルです。なんかお尻が、すごくいい。このユーロテールは買った当時から装着されていたものなんですが、JZA80スープラっぽくてすごく気に入っています」

「私は初心者なので上手い人が走り込んでいると最初は気がひけるんですけど、コースインしたら夢中で走っていますね! よく行くのは山原サーキットです。自宅からはマルチフィールド沖縄のほうが近いんですけどコンクリートの壁が近いのが怖くて(苦笑)。サーキットに練習に行く時は糸洲さんと一緒に行ってアドバイスをもらっています。『何回同じこと言ったらわかるんだー!』って怒られながら(笑)」
ドリフトについて話している時のとってもイキイキした前川さんの表情から、ドリフトを心の底から楽しんでいるのがよくわかる。

現在は、ソアラと軽自動車を状況に応じて乗り分けながらカーライフを楽しんでいるという前川さん。
「このクルマで走るのは本当に気持ちがいいんです。だから、どこかに立ち寄る用事がある時は軽自動車だけど、寄り道のない時は『ソアラに乗って行っちゃおう〜』ってこともあるし、1人でドライブに出かけることもあります」

ちなみに、ふたりの娘さんたちはこのクルマについてどう思っているのかも気になるので伺った。
「長女はそれほどクルマに興味がないのですが、次女は『カッコいいよね! エンジン音とか最高!』って言ってくれるし、ドリフトの同乗走行などもしたことがあります。前にサーキットで練習している動画を送ったら、次女は「おー!」って感じで、でも長女は「どこが楽しいの?」という反応でした(笑)。ちなみに息子もクルマ好きです」

そして、そんな前川さんにはドリフトする上で密かな目標があるという。
「50才からはじめたドリフトはまだまだ練習の途中なんですけど、ちゃんとできるようになると最高に楽しいんだろうなって思います。だから、小さな規模でもいいので大会に出場するのが今の目標です。なかなか難しいですけど」

最後に、今後のカーライフについての考えを伺った。
「私、このクルマを購入した時にSNSに『4人目の子供として、大切に乗っていきたい』って投稿したんです。その言葉通り、ソアラをずっと大切にしていきたいですね」

年齢や性別を理由にモータースポーツの世界に飛び込むことを躊躇する人を見かけることは少なくない。いっぽうで、自身の気持ちに正直にチャレンジすることで、かけがえのない生きがいを得られたというオーナーさんにも、これまでたくさん出会ってきた。
その勇気ある一歩を踏み出し、ソアラとドリフトという楽しみを得た彼女のカーライフは、これからも輝き続けるに違いない。

取材協力:オリオンECO 美らSUNビーチ

(⽂:西本尚恵 / 撮影:土屋勇人 / 編集:GAZOO編集部)