屋根が開かないなんて考えられない!? オープンカー4台持ちの爽快ライフ

  • GAZOO愛車取材会の会場で山形駅前の『やまぎん県民ホール イベント広場』で取材したアバルト124スパイダー(NF2EK)

    オープンカーのアバルト124スパイダー(NF2EK)

「世の中には屋根の開くクルマとそうじゃないクルマの二択しかない。なら、なぜ屋根の開かない方を選ぶ必要がありますか? 屋根を開けば風の匂いや気温を感じながら乗れるし、オープンカーは目的地に行くまでも楽しめるんです」
そうニコニコと話してくれたのは、アバルト124スパイダー(NF2EK)のオーナーである神吉 大さん(46才)だ。

ご自身の運転するスパイダーに息子さんを乗せ、さらにファミリーカーのニュービートルヴィンテージを運転する奥様と共にフルオープン&コスプレ姿で取材会場に来てくださった神吉さんは、とにかくインパクト抜群だった。
クルマから降りるなりハイテンションで「お会いできて嬉しいです~! 今日はよろしくお願いします!」と握手しながら満面の笑み。そう、この強烈なキャラクターを持つ神吉さんは、とにかく太陽のように明るい方なのだ。
さらに神吉家はこのスパイダーとニュービートル以外にも2台のコペンを所有し、山形県でオープンカーフェスというチャリティーイベントを主催するほど、オープンカーをこよなく愛する人物でもある。

免許取得後最初に買ったクルマはセリカGT-Rだったものの、この頃はまだバイクに比重を置いていたという神吉さん。そんな彼がクルマ好きになったのは、カナダでオープンカーの楽しさを知ったからだという。
「20才の頃カナダに1年半住んでいて、そこで1970年代のTバールーフのフォードマスタングを15万円で買ったんですけど、オープンで走るのがもう楽しくて楽しくて。日本に帰ってきたその年にコペンが発売されたので早速試乗に行ったら、心を撃ち抜かれました。でも、当時は本当に貧乏で…毎月5000円とか1000円とか貯金してコペンの名前の口座まで作って、少しずつ貯金して9年後にやっと前期の赤いコペンを新車で買えました。ただ、コペンは納車の日まで前の妻には内緒にしていたんですが『あんた4人家族なのに何考えてんの』と言われ、コペンに乗せることなく離婚されました…」

その後、神吉さんは彼の“悪影響”を受けてコペンを購入してオープンカーの虜になった現在の奥様と5年前に再婚。その新婚旅行で北海道を一周することになった際、困ったことにコペンでは荷物がほぼ載らない…ということで購入に踏み切ったのが、このアバルト124スパイダーだったという。
「スパイダーなら必要な荷物を積むことができたんです。本当はND型のロードスターを買うか迷ったんですけど、アバルトとマツダのコラボ車は今後また発売されることはないだろうし、全世界で5000台、国内でも2500台と特別感もあるので、人とあまり被らない“クセ強”なスパイダーを選びました」

2016年にアバルトブランドで販売を開始したアバルト124スパイダーは、マツダのND型ロードスターをベースに生産された、2ドアFRオープンカー。ND型ロードスターとは主にエクステリアデザインや搭載エンジンが異なるものの「スパイダーはイタリアで造った部品をマツダに送って生産されているから国産車みたいなものですし、ND型ロードスターに付くパーツは大体スパイダーに付くんです。僕のクルマもいろいろと移植しているんですよ」と神吉さん。

そんな神吉さんのNDスパイダーは、ホワイトボディに映える赤色のパーツが挿し色効果を発揮し、とてもスポーティでおしゃれな印象に仕上がっている。
「ミラーは『ソウルレッドクリスタルメタリック』のロードスター用ミラーを移植して、フロントリップもそれに合わせて塗っています。ホイールはアドバンレーシングのTC-4で、買ったら偶然色が合った感じですね。幌はスパイダーだと黒のみしか選べないので、ロードスター用のレッドトップに交換しました。僕はマツダのソウルレッドほど美しい赤はないと思っているので、最終的にはソウルレッドに全塗装するつもりです」

さらに、内装はダッシュボードも含めてロードスタのホワイトセレクション用を移植。外装と同様に挿し色として赤色を取り入れつつ、後ろの風避けやヘッドレスト裏のメッキカバーなど細部にもこだわってカスタムを楽しんでいる。
そして、補強パーツによって車体の捩れを抑制したり、足まわりは状況に応じて硬さを自動調整してくれるテイン製に交換したりと、より楽しく快適に走れるよう性能面にも手を加えているという。

これだけ124スパイダーにこだわりを持って仕上げている神吉さんだが、実は「ND型ロードスターの美しいボディが世界一だと思ってます」という。
「スパイダーってフロント周りに突起物があるから風の抵抗を受けて虫がつくんです。一緒に走るNDには全然つかないのに…。それにNDの方が100万円も安いのに内装がめっちゃ豪華だしパーツもいっぱいあるんですよ。だけどスパイダーの方が珍しいし、スパイダーのドッカンターボは走っていて楽しい。それに現行のNDロードスターが2025年でちょうど販売期間が10年になるので、そのタイミングでなにかオプションが付いたファイナルバージョンが出ると予想しています。で、奥さんがそれを買うためにマニュアル免許も取って準備しているんです」
現在の愛車たちに加えて、いずれはND型ロードスターも手に入れるべく計画を立てているというわけだ。

そんな神吉家のファミリーカーはというと、この日奥様が運転してきたフォルクスワーゲンのニュービートルヴィンテージだ。
「どうしても4人乗りのオープンカーに乗りたいと、最初ミニクーパーSコンバーチブルに乗っていたんですけど、車重が重くて乗り心地も僕的にイマイチで。ちょうどその頃に奥さんがマニュアル免許を取って練習車が必要になったので、ミニクーパーを売ってマニュアル車のハスラーをプレゼントしたんです。そのあと、子供ができて『3人でオープンカーに乗りたいね』となったけど、やっぱり屋根の開かないクルマはいらないな〜ということで買ったのが、このニュービートルヴィンテージなんですよ」

そんなファミリーカーの車内に目をやると、ヘッドレストにパンダの被り物を発見。
「これは冬のドライブ用の被り物ですね。エルモだったりミッキーだったり色々とあります。暖かいし冬は家族3人で被り物をしてオープンで走ってます。ちなみに夏は朝5時から屋根を開けて走って、陽が昇ったら一旦屋根を閉じて女優帽を被って乗っています。で、夕方にはまたオープンにしていて。みんなからは女子みたいってよく言われます(笑)」
可愛い被り物で寒さを凌ぎ、さらにオープンカーの楽しみ方に変えてしまうところが、さすが神吉さんといったところ。

となると気になってくるのが奥様だ。素敵なコスプレ衣装に身を包んだ奥様は、愉快な旦那さんやオープンカーへのこだわりをどう思っているのか?
「大ちゃん(神吉さん)の影響でコペンに乗って、私もオープンカーの楽しさにハマっています。大ちゃんと息子と3人でオープンカーに乗るのはおもしろいし、戸惑いはなかったですね」と、一緒にオープンカーライフを満喫している様子。ちなみにコスプの衣装は息子そら君の衣裳も含めてなんと奥様の手作りだとか。
そんな奥様に対して神吉さんも、お互いに感謝しあっている様子がとても微笑ましかった。

とにかくオープンカー愛に溢れる神吉さんは、自分が楽しむことだけにとどまらない。
「とにかくみんなにオープンカーに乗ってほしいし、山形の良さも知ってほしいと思って、昨年『山形オープンカーフェス』を主催してみました。日本全国オープンカーフェスをやっているけれど、山形はやっていないから僕がやろうって。初開催だったんですけど、参加台数264台、参加人数500人も集まってもらえました」
また神吉さんの本業は美容師で、お客さんの中にも彼の“悪影響”を受けてオープンカーに乗る方が増えてきたのだとか。
「彼氏に振られた人には『彼氏はいなくなるけどクルマはいなくならないよ。オープンカーならならどこにでも連れてってくれるし道中も楽しいよ』と。また子連れのお客様には『子供が喜ぶよー』って(笑)」
心からオープンカーを愛する神吉さんの言葉はまっすぐで、だからこそ相手にもしっかり届くのかもしれない。

そんな神吉さんは、今後のカーライフについてもオープンカーに乗り続けるという姿勢は一切ブレない。
「奥さんのオートマ車のコペンはいずれNDロードスターを買う時には売る予定ですが、赤いコペンとファミリーカーのニュービートル、それとこの124スパイダーと未来のNDロードスターの4台に乗り続けたいと思っています。うちのクルマに便利さはいらないし屋根が開けばそれでOKなんです。オープンカーってスポーティーなイメージだし2シーターが多いから家族が多いと辛いかもしれません。でもコペン2台のオープンカー友達もいるので、好きなら乗り続ける方法はいくらでもありますから」

神吉さんは、どれだけ楽しくクルマに乗れるのかを突き詰めた結果、彼にとって最高に楽しいオープンカーに乗り、被り物やコスプレなどでさらに楽しさを倍増させている生粋のエンターテイナーだ。
そして、そんな彼のオープンカーへのまっすぐな愛情は周りにも伝染し、彼の周りはご家族をはじめいつも笑顔溢れる仲間が集まるのだ。取材会当日も会場に仲間が集まり、撮影後は福島県まで一緒に出かけるのだと盛り上がっていた。
山形にオープンカー乗りが増えたとしたら、ひょっとすると神吉さんが影響を与えている…かも!?

取材協力:やまぎん県民ホール(山形県山形市双葉町1丁目2-38)
(⽂: 西本尚恵 撮影: 堤 晋一)
[GAZOO編集部]

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