憧れだった“ダークレッドのセドリック”を、大好きなベイシティ刑事仕様に!
かつて憧れた1台。しかし当時は様々な事情から乗ることができず、それでも忘れられずに数十年後に購入し、今はそれがかけがえのない愛車となっている…取材をさせていただいていると、そんなオーナー様によく出会う。
この日産・セドリックV20ツインカムターボ ブロアム(Y31)を所有する宮城県在住のtaropapaさん(55歳)も、そんなオーナーのおひとりだ。
お父様の影響で小さな頃からクルマが大好きだったというtaropapaさんは当時から大のセダン好きで、大学生になって最初に購入したクルマはトヨタ・マークII(MX41)だったという。しかし、このマークⅡを買ってすぐに登場した日産のY31型セドリックに心を奪われてしまった。
「このセドリックのCMが心に残ってすぐに発表会に行ったのですが、その時に見たこのボディカラーのセドリックがすごくカッコよくて。ただ、当時は大学2年でまだマークⅡを購入した直後でしたし、さすがに手が出ませんでした(苦笑)。このカラー番号624のダークレッドパールマイカというボディカラーは前期型の2年間しか販売されていなかったので、その後就職してクルマを買い替えようと思った時にはもう新車では手に入れることができず、結局クラウンを買うことにしたんです」
その後、子育てでクルマ趣味から離れていた時期も挟みつつ、好きな旧車を中心に乗り継いできたというtaropapaさん。
「20年くらい前に再び41型マークⅡを買って、その後にMS112型のクラウン、250型プレジデントと乗り継ぎました。その後は10年くらい旧車から離れていたんですが、今も持っているクレスタを買ったのをキッカケに旧車熱が再燃して、欲しかったけど乗れなかった“ダークレッドのセドリック”を思い出して探し始めたんです」
しかし30年前のクルマで、なおかつこのボディカラーのセドリックはなかなか見つからず、3年間にわたって中古車情報を探し続けたところでようやくtaropapaさんの息子さんがネットオークションでこのクルマを発見したという。
「息子がこのクルマを発見した時は、すでにオークション終了の30分前でした。終了時間ギリギリまで悩みましたが…結局買っちゃいましたね。落札価格は30万円くらいでした」
こうしてtaropapaさんが手に入れたのが、恋焦がれたダークレッドパールマイカの1988年式セドリックV20ツインカムターボ ブロアム(Y31)。しかし、納車時は傷や凹みなどが多く、あまり状態が良くなかったのだとか。
「バンパーは傷だらけでドアにも凹みや傷が結構あって、正直実物を見た時はちょっとガッカリしたんですけど、納車前にクルマのイベントに向かう途中で立ち寄った栃木県の中古車ショップでエンジン違いの同じグレードのセドリックを見つけたんです。そこで相談をしたら部品を譲ってくれることになったので、2週間後に納車されたセドリックに仮ナンバーを付けてすぐにそのお店に向かい、運転席以外のドアを3枚交換して帰りました。その後にもフェンダー2枚を交換して、おなじボディカラーで全塗装しました。それ以外にも部品を集めたり整備したりと1年がかりでいろんなところを純正の状態に戻して、そこから3年乗って今に至ります」
こうしたtaropapaさんのコツコツと積み重ねた努力の甲斐もあり、取材時に姿を見せたセドリックはとても美しい状態。そのポイントは、何といってもオーナーさんが好きだった知る人ぞ知る刑事ドラマ『ベイシティ刑事』の劇中車両仕様にしているところだろう。
「『ベイシティ刑事』の劇中車はV30ブロアムVIPだったので『VIP』や『Brougham V30TURBO』のエンブレムはその姿に近づけるための“なんちゃって仕様"ですね(笑)。外装はほぼ完コピ状態です。内装もハンドルを交換すれば同じ仕様になりますよ」と嬉しそうに教えてくれた。また、この日はたくさんのコレクションを持っててくださったのだが、その中には劇中で使われていたものと同じジャンバーも。taropapaさんが羽織った姿も実に様になっていたのが印象的だ。
「ホイールは一時期BBSを履いていたこともありましたが、純正のアルミホイールに戻しました。買った当初は9万5000kmで今は10万3000kmですが、これまで3年間ノントラブルです。エアコンも動くようにしましたし、最初から装備されている冷蔵庫も健在で今も結構使っていますよ!」
大きな改造をせずカタログのような純正スタイルを維持しながら、お気に入りのプチモディファイを楽しみ、かつ性能面で不足を感じた部分のみ手を入れているのが、taropapaさんのセドリックなのだ。
現在は普段乗りとして通勤にN-BOX、休みの日はハリアーに乗っているというtaropapaさん。このセドリックはクラシックカーイベントに行く時だったり、天気の良い日にストレス解消をしたい時に乗っているのだとか。
「これまでいろんな旧車に乗ってきましたが、このセドリックは想像以上にいいクルマだと感じています。とくに走りとエンジン性能が気に入っていて。当時ツインカムターボというセドリックにふさわしくないエンジンを積んだからか、加速する時に後ろが沈み込む姿が大好きです」
そんなtaropapaさんは、好きなものにはとことんこだわって深くまで突き詰める研究者的な側面もあるようで、この日持参してくださった彼のコレクションは、愛車への造詣の深さが垣間見えるものが盛りだくさん。
「カタログをはじめとしたセドリック関係の広報資料はすべて集めました。他に今日持ってきたのはこの金色のシガレットケースとミニカーですね。残念ながらおなじボディカラーのセドリックはなかったので、ダークレッドのグロリアを買って、さらに白いセドリックのミニカーも買いました。2つ合わせて1つですね(笑)」
また、セドリックより前に購入して現在は休眠中というクレスタ関連のコレクションも、CMに出演していた俳優の山崎努さんのサイン色紙や人形、カタログやサービスマニュアル、さらにはクレスタ発売開始当時に購入案内の招待状が送られた人だけが商談時にもらえたという盾など、目を惹きつけられるマニアックなコレクションが多数。ちなみにこのクレスタもtaropapaさんはとても大切にしていて、カーマガジン『ハチマルヒーロー』にも何度か掲載され、ベストセダン賞を受賞したこともあるのだとか。
そしてtaropapaさんの興味は、車両や関連グッズのコレクションだけに留まらない。というのも、当時の日産の内情がわかるドキュメンタリー本などにも気になったものはすべて目を通しているのだという。
「勢いのあった当時の日産の裏側がわかる本を読んで研究するのも好きで、図書館で借りたりもしています。セドリックとクラウンの違いとかすごくおもしろいですよ!」と、嬉しそうに笑った。
「今後は現状維持というか、この姿を守って動体保存していきたいですね。息子がこのクルマを気にしているので、貸しておいてもいいかな」というtaropapaさん。
30年前には高嶺の花だった“ダークレッドのセドリック”は、これからも彼や息子さんの元で大切に乗り続けられていくことだろう。
取材協力:やまぎん県民ホール(山形県山形市双葉町1丁目2-38)
(⽂: 西本尚恵 撮影: 堤 晋一)
[GAZOO編集部]
GAZOO愛車広場 出張取材会in山形
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