ホンダS660 憧れだった2シーターミッドシップスポーツカーでカーライフを満喫中

  • GAZOO愛車取材会の会場であるポルトヨーロッパで取材したホンダ・S660(JW5)

    ホンダ・S660(JW5)

「全日本GT選手権のビデオを買って、それを擦り切れるまで見ていたくらい子供の頃からすごいクルマが好きでした。高校生の時にトヨタ・MR2(AW11)が発売されたときにすごいカッコよくて、ホンマ興奮して立ち尽くしましたもん。2シーターミッドシップはすごくいいって雑誌にも書いてあって、それ以来、私の中では『スポーツカーといえば2シーター』というのがずっと頭の中に残っていたんです」

話し始めたとたん、その勢いに思わず圧倒されてしまうほど元気いっぱいの朋子さん。
彼女の愛車はホンダS660(JW5)。2015年に発売開始された2シーターの軽自動車であり、直列3気筒のターボエンジンをミッドシップに搭載し、ミッションは6速MTのみという走りを楽しむために生まれたようなクルマだ。
そんなS660にすっかりハマり、現在はサーキット走行でのタイムアタックなどこれまでで一番充実したカーライフを送られている彼女。これまでもファミリーカーとしてシビックを3台乗り継ぐなど大のクルマ好きだというが、その中でもこのS660は「今の自分に合ったこれまでで最高の1台」なのだという。彼女にとってこのS660はなぜそんなにも魅力的なクルマになったのか、お話を伺った。

「大人になって子供ができて、2シーターは難しいけど何かスポーツカーに乗りたいって思ったんですね。そこで最初に1.3Lのミニを買ったんですが、これがトラブルだらけで…趣味で乗るぶんにはいいけれど、ファミリーカーとしては乗り続けられないなと思って、AE111型のカローラに乗り換えました。これがめっちゃいいクルマで、ストラットタワーバーをつけたらさらにコーナリングが良くなったりして、このクルマに乗ってチューニングの楽しさに目覚めましたね。荷物も乗るし長距離も走れるので、旦那と息子とスキーに何度も行きました」

そして、そんなカローラでのカーライフも長くなってきた頃に、彼女がひと目惚れしたのが、発売されたばかりのホンダ・シビックタイプR(EK9)だっという。

「黄色のタイプRを見て『ぜったいこれが欲しい!』と思って買ったんですが、それまでAT車にしか乗っていなかったのでマニュアル車の運転を思い出すところからのスタートでした。子供の幼稚園の送り迎えでシフトアップとダウンの練習をしたり、近所をめっちゃ走ってクラッチを繋ぐ練習をたくさんしましたね」

こうしてシビックタイプRでのカーライフをスタートしたのは良かったものの、2度の盗難被害に遭うなど、順風満帆とはいかなかったという。
しかし、気分を入れ替えるべく次に購入したEP3型シビックタイプRに3年半ほど乗り「ファミリーカーとしてだけではなく、クルマ好きの兄に誘われてサーキットにも2回行きましたね」と新たな景色も見ることができたそうだ。

そして、そんなタイミングで今度はFD2型のシビックタイプRが発売終了になることを知り、そちらに乗り換えることを決意する。しかし、それはこれまでの『自分が乗りたい』という気持ちとは別の理由があった。

「FD2を買った時は長男が高1で、遠足をサボって納車に付き合うくらい本人が乗りたがっていたんです。私はFD2を自分で乗りこなせるはずもないと思っていたので、長男に譲る前提で購入して、息子には『100万円で売ったるで』て言ったんです。その後、自衛隊に入った息子はジュース1本買うのも我慢して1年でシッカリ100万円貯めたので、約束通り譲り渡しました」

そして、シビックタイプRを3台乗り継いだことですっかりホンダ車好きになった朋子さんが、FD2を息子さんに譲ると決めた時点で、次に乗るクルマに選んだのがこのS660だ。

「子供が手を離れてファミリーカーにする必要がなくなったこともあって、乗るなら好きなホンダ車で1番乗りたかった2シーターミッドシップ車のS660がいいと思ったんです。カッコいいしミッドシップレイアウトだし、次世代を意識したホンダの意向も感じたし、なによりこのくらい小さいサイズのクルマが欲しいなって思いましたね」

こうして彼女は、小さい頃から憧れていた“2シーターミドシップスポーツカー”のホンダ・S660(JW5)を2019年に新車で購入したのだ。

「ミッドシップだけあって、実際に乗ってみたら後ろからエンジンの回転が上がる音が聞こえてくるし、自分がクルマの真ん中にいるというのがすごい不思議な感覚でしたね。エンジンを背中に背負ったような一体感があって、特にコーナリングがすごいおもしろい。本当に、よくこんな楽しいクルマを作ってくれたなという感じです」

街乗りはもちろん、このクルマでサーキット走行も本格的にチャレンジしたいと考えた彼女は、バケットシートや追加メーター、ホイールなどの装備も導入。スタビライザーを変更したり、冷却対策のダクトを追加したりと、少しずつカスタムを楽しんでいるという。

そして、そんなお母さんのカーライフを支えているのが、FD2を譲り受けた息子さん。クルマ関連の仕事がしたいと、自衛隊を辞めてモータースポーツ専門学校に入学し、そのあいだにアルバイトをしていた大阪府のチューニングショップ『トライアル』で現在も働いているという。

彼女がS660でサーキット走行に行く際は、FD2がサポートカーとなり、息子さんが専属メカニック兼アドバイザーとして帯同してくれるのだ。
「クルマのメンテナンスからチューニングまで息子やショップがサポートしてくれるから、安心してサーキット走行なども楽しめるんです」と語る彼女の言葉には、愛車について話す時とはまた違った温かさが含まれているように感じた。

ちなみに、この取材会にも同行していただいた旦那さんはというと、バイクを乗り継いだり現在はインプレッサに乗っていて「車中泊に行ってみようか」と話していたりと、お互いを尊重しつつそれぞれが楽しむスタイルだという。

「自分の好きなクルマに乗って、家族の理解と全面サポートでサーキット走行という好きなことができている今が、本当に幸せですね。とりあえず事故なく目標に向かってやっていきたいな思っています」
そう話してくださる朋子さんからは、本当に今のカーライフが充実していて楽しいという想いがひしひしと伝わってきた。

子育てが落ち着いてから好きなことを楽しもうとする時に、奥さまやお母さんが「好きなクルマでサーキットを走りたい」と言い出そうものなら「危ないからやめたほうがいい」と引き留めるご家族や周りの方もきっと多いだろうし、ご自身が周りの目線や安全面を考慮して諦めてしまうこともあるだろう。

しかしこれだけ全力でサーキット走行を生き生きと楽しんでいる朋子さんをみていると、やりたいなら絶対にチャレンジしてみたほうがいいのだと強く感じた。サーキットライフはのめり込むとお金もかかるし一歩間違えば危険が伴うのも確かだが、マイペースで楽しくステップアップできる趣味でもあるのだ。

「最初に鈴鹿ツインサーキットを走った時は周りが怖くて必死でしたけど、何回か走っているうちにどんどん楽しくなりました。このあいだ兵庫県のセントラルサーキットを走った時には、人生ではじめてほかのクルマをオーバーテイクしたんですよ!」

生き生きと輝いている朋子さんの取材を通し、周りの理解を得て好きなクルマで好きなことをすることが、どれだけ素敵なことなのかを改めて教えていただいた。
彼女のカーライフが、これからますます輝いていきますように!

(文: 西本尚恵 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:ポルトヨーロッパ(和歌山県和歌山市毛見1527)

[GAZOO編集部]