貪欲にサーキット走行を楽しむための相棒GRMNヤリス

  • GAZOO愛車取材会の会場であるポルトヨーロッパで取材した500台限定のGRMNヤリス(GXPA16)

    500台限定のGRMNヤリス

クルマのチューニングをとことんまで突き詰めて楽しむこと。あるいは、自動車メーカーがモータースポーツのノウハウをフィードバックした究極のコンプリートカーを楽しむこと。まさに真逆のベクトルを持つクルマの楽しみ方を、両方一挙に実現することに成功したオーナーさん。ただし、いずれも目的は、ただひとつ。サーキットを走ることだ。

オーナーさんがサーキットで走行することの楽しさに目覚めたのは、今から7年ほど前。当時は日産のR35型GT-Rを所有していたのだが、どうしても純正のシートが身体に合わず、RECAROシートに交換しようと大阪にあるチューニングショップ『トライアル』の門を叩いた。

その時に岡山国際サーキットで開催される走行会に誘われたことがキッカケとなり、人生最大の趣味と出会うことができたのだという。

「最初は下手くそで、走り方もよくわからなかったんですけど、プロドライバーのレッスンを受けるようになって大きく変わりました。横に乗ってもらってリアルタイムに走り方を教えてもらったり、お互いのロガーデータを見ながらどこがどう違っているかを検証したり」

「ブレーキの掛け方やタイヤの使い方を覚えて、ロガーの波形がプロドライバーと近くなるように心がけているうちに、自然とスキルアップしてタイムも出るようになっていきました」

のめり込むと、とことんまで突き詰める性格のオーナーさん。メキメキと上達した自分の腕を試そうと、先代のトヨタ86とスバルBRZで戦われたワンメイクレース『TGR 86/BRZ Race』(現 TGR GR86/BRZ Cup)にも参戦。3年間エントリーし続けて、個人的に目標としていた全戦完走を達成した。

一定の成果を得たことで一旦レースからは離れ、競技車両として使っていた86も売却。だが、その一方で新たにGR86のRCグレードを購入し、現在は自分の力でクルマを速くさせるチューニングに夢中になっている。

「GR86は一度全バラにしてボディ補強を行って、そのままS耐に出られるくらいのレベルまで仕上げてあります。完全にサーキット専用車で、できればタイムアタックにも参戦してみたいですね」

そんなGR86も気になるところだが、今回撮影させてもらったのは、もう1台の愛車であるGRMNヤリス(GXPA16)だ。

GRMNヤリスとは、2022年の東京オートサロンで発表され、その後500台限定で発売されたGRヤリスのフルチューンモデル。モータースポーツ由来の技術やパーツが数多く取り入れられ、フード、ルーフ、リヤスポイラーには軽量高剛性なカーボンパネルを採用。リヤシートは撤去されて、約20kgの軽量化を実現したハードコアな内容を誇っている。

エンジンの最高出力は当時のGRヤリスの272psと同様(最新モデルは304psに向上)ながら、最大トルクは370Nmから390Nmへとアップ。駆動系に強化メタルクラッチやクロスミッション、ローギヤードのファイナルギヤ、機械式LSDを採用し、加速性能と回頭性能を高めている。

「とりあえず予約抽選に申し込んだものの外れてしまってガッカリしていたんですが、キャンセルが出たということで、購入できることになりました。クルマを作る楽しみはGR86の方で満たしているので、GRMNヤリスの方は、トヨタがモータースポーツからフィードバックして開発した完成度をそのまま楽しもうと考えています」

GRMNヤリスには、さらにサーキット走行に最適化した特別装備が与えられた「Circuit package」と、ラリー用のパーツを装備した「Rally package」も設定されていたのだが、オーナーさんが幸運にも購入することができたのは前者の「Circuit package」が装着された仕様。

BBS製の専用18インチホイールのほか、18インチブレーキ、ビルシュタイン製ショックアブソーバー、カーボン製リヤスポイラー、サイドスカート、リップスポイラーなどが備わっている。

「GRMNヤリスを購入して、これまで2回サーキットを走りましたけど、やっぱり市販車とは思えないパフォーマンスです。もともとモータースポーツに惹かれたのは、自分との戦いみたいなところがあるからで、ミスもすべて自分の責任だし、結果もすべて自分に返ってくるというところが性に合っているんだと思います」

「GRMNヤリスに乗っていると、そういう自分との対話というか、とにかく走ることそのものにとことん集中することができます。そうして狙った通りの走りができた時、その結果としてクルマの限界性能を引き出せたり、タイムを縮めることができたりした時の達成感が好きなんです」

GRMNヤリスはサーキットで全開走行を繰り返すと、さすがにクーリングの面で厳しい場面はあるそうで「本当はオイルクーラーを追加したいところですけど、現状のパッケージに価値があると思うので、ノーマルを維持したまま楽しみたいです」とのこと。

ちなみにGRMNヤリスはサイドエアバッグ付きのRECARO製フルバケットシートを標準装備しており、期せずしてオーナーさんがサーキット走行にハマる最初のきっかけになったRECAROシートに、また身を任せる格好となった。

他人との比較よりも、自分との戦いに重きを置き、自分のためになると思えば、どこからでも吸収する貪欲さを持つオーナーさん。GRMNヤリスとの出会いもまた、豊かなサーキットライフのための糧となっていく。

(文: 小林秀雄 / 撮影: 清水良太郎)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:ポルトヨーロッパ(和歌山県和歌山市毛見1527)

[GAZOO編集部]