愛車は自分の個性や想いを表現する大切なパートナー。“懐の深い”真紅のスープラが彩る日常
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トヨタ・スープラRZ(DB42型)
物心がついたころ、夢中になっていたのはタイヤが大きくて無骨なハイラックスのような4WD車のミニカー。中学時代には『ゼロヨンチャンプ2』というゲームにのめり込み、そこでさまざまなスポーツカーの名前を覚えていったという『ムン』さん。
ちょうどその頃に登場したマツダ・RX-7(FD3S型)の未来的で流麗なデザインに一目惚れし『将来は絶対にこのクルマに乗るんだ!』と胸に誓ったが、積雪の多い地元の道路事情や高騰する中古価格を前に、結局その夢は叶わないままだったという。
免許を取得して最初の愛車として手に入れたのは、三菱・ランサーエボリューションⅣ GSR(CN9A型)。当時、2リッター280ps時代の幕開けを飾る一台として話題を集めていたこのモデルに発売前から注目しており「これしかない」と確信。半年以上前から予約した甲斐あって、県内でも3番目という早さで納車されたのだとか。
納車初日にアクセルを踏み込んだ瞬間の感覚は衝撃的で、今でも忘れられない思い出だという。周りのクルマ好きな友人たちもその性能に心を動かされ、次々にスポーツカーにのめり込んでいったそうだ。
しかし、高性能車との付き合いは一筋縄ではいかなかった。このモデルから新たに採用された『AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)』の性能を試そうとしたところ、あえなくスピン…今では「初心者が新車のハイパワー4WDを乗りこなそうとするのは無謀だった」と、苦い経験を振り返る。
それでも、次に手にしたランサーエボリューションⅥ RS(CP9A型)では、自己流ながらカスタマイズの楽しみにも面白さにも目覚めた。
そして、国産スポーツモデルの頂点に君臨していた日産・スカイライン GT-R(BNR32型)を手にする機会に恵まれると、本格的なカスタマイズの世界に足を踏み入れ、全国的にも有名な地元・福井県のチューニングショップ『フェニックスパワー』との出会いも生まれるなど、着々とカーライフの幅を広げていったそうだ。
BNR32ではタービン交換によってパワーアップを果たしたそうで、身体がシートに押し付けられるあの感覚は今でも鮮明に記憶に残っているという。しかし、そのGT-Rが不運な事故によって失われてしまい、さすがに心は折れかけていた…。
そんなとき、再びクルマへの情熱を取り戻すきっかけとなったのがトヨタ・MR2(SW20型)だった。
ミッドシップレイアウトの独特な挙動が魅力のMR2で、ドライビングの奥深さに熱中するとともにドラッグレースにも挑戦するようになり、軽量化なしのナンバー付き仕様で10秒台前半を目指すことに。
その後、フェニックスパワーのデモカーとして仕上げられていた最高速仕様のAT車、トヨタ・86を購入するなど、スポーツカーでのカーライフを重ねていった。
そして、現在の愛車へとたどり着く。2020年式のトヨタ・スープラ RZ(DB42型)は、もともとフェニックスパワーがデモカーとして作り上げ、最高速チャレンジで300km/hを目指すなど、雑誌や動画の企画でも取り上げられた車両であった。
最初はあまり関心がなかったものの、乗ってみてその完成度に一気に惚れ込んだというムンさん。ハイフロータービンやフェニックスパワーのアプリケーションECUによって最高出力約550ps、トルク80kg-mオーバーまで高められたエンジンパワーはもちろん、冷却系にも十分な手が加えられているため、安定してハイパフォーマンスを維持できる点に魅かれたのだと教えてくれた。
電子制御の塊ともいえるスープラだが、そうした特性の理解に努め『クルマと対話しながら走る』感覚を大切にしているというムンさん。
乗り始めて1年で2万kmを走り込み、通勤やワインディング、そしてミーティング&イベント参加など、日常のあらゆるシーンで活躍。トルクフルな特性なので、街乗りや高速移動も苦にならないという。
元はフェニックスパワーが仕上げた完成度の高いデモカーだったが、そこにムンさん自身のこだわりが加わる。フロントタワーバーを追加し、サード製の制震ダンパー、エーモン製ショックレスリングなどを用いて足まわりを自分好みに調律。結果、理想のフィーリングに仕上げることができたという。
「王者よりも王者に噛みつく存在が好き」というムンさんが目指しているのは、高性能な強化パーツが惜しみなく投入され、国内150台限定、車両価格1500万円で抽選販売された『A90 ファイナルエディション』を超える完成度なのだとか。
そういった性能面のブラッシュアップに加え、ハンドメイドによるカスタマイズにも挑戦。エンジンルームの高熱対策として、アルミ板を切り出して自作の遮熱板を装着するなど、工夫を凝らしたカスタマイズも楽しんでいる。必要な道具がなくても、家の壁や柱の角を使ってアルミ板を加工するなど、その情熱はとどまるところを知らない様子だ。
スープラに乗って初めて気づいたデザインの魅力もある。イングス製のエアロパーツをまとった外装のなかでも、とりわけリアフェンダーの造形はお気に入り。洗車をして直にボディに触れているうちに、そのフォルムの奥深さに気が付いたという。そのスタイルを「Zガンダムのキュベレイみたい」と表現してくれた。
そんな愛車を常にキレイな状態に保つために週一での洗車は欠かさず、水シミを防ぐ純水機まで導入。「青空駐車日本一」を目指して、ケミカル選びにもこだわっているという。
ムンさんいわく、このクルマの真価は、かつて乗っていたフルチューン車両のように壊れる不安もなくストレスフリーに速さを楽しめる、安定感と信頼性にあるという。
前の愛車だった86は430psのボルトオンターボ仕様で、その圧倒的なパワーゆえにATを3基も壊すほどだったが、GRスープラではそういった不安が一切ないのもうれしいポイント。
「常に追加メーターをチェックしなければならない緊張感から開放されました」と笑うムンさん。ATをはじめあらゆるパートにクルマを壊さないためのセンサーが張り巡らされており、最新制御でコントロールされているため、運転操作に対して懐の深さがあると感じられるそうだ。
真紅のボディにゴールドのBBS製ホイールという人目を引くそのスタイルは、道行く人々や観光客、特に外国人からも注目の的で「ナイスカー!」と声を掛けられることも少なくないそうで、結婚をしていないこともあって「クルマが我が子みたいなもの」と、目の前に佇む真っ赤な愛車に優しい視線を向けるムンさん。
これまで乗ってきたクルマたちもそうだったが、ただの移動手段としてではなく、自分自身を表現する大切な存在として愛車を所有し、カーライフを楽しんでいるのだということが、その言葉の端々から伝わってきた。
そんなムンさんは、こだわり抜いて仕上げたこのGRスープラとともに、これからも新たな道を走り続けていく。
(文: 石川大輔 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所: 福井大学 文京キャンパス(福井県福井市文京3-9-1)
[GAZOO編集部]
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