オープンカーを欲しかったオーナーが、屋根が開かない『コペン クーペ』を選んだら心がオープンになりました!

  • GAZOO愛車取材会の会場である福井大学 文京キャンパスで取材しダイハツ・コペンクーペ(LA400K型 改)

    ダイハツ・コペンクーペ(LA400K型 改)


軽自動車のスポーツモデル、しかもオープンカーという個性満点のキャラクターで人気を博しているダイハツコペン。その2代目モデル (LA400K)に、クローズドボディの『コペン クーペ』が200台限定で存在していたのをご存知だろうか。
今回ご紹介する大阪府在住の『Coupe』さんは、そんなコペンクーペの唯一無二のスタイリングと存在感に心を奪われ、オーナーになるという道を選んだひとりだ。

テレビゲームの『イニシャルD』やミニカーで遊んでいた小学生の頃からクルマ好きになり、運転免許取得後はマニュアルのスポーツカーやオープンカーに乗りたいと思っていたCoupeさん。最初に乗りたいと思ったクルマはホンダ・S660だったそうだ。

「高校3年生の時にS660が発売されたんですけど、ミッドシップというだけでなく、パワーリアウインドウなどのギミックにも惹かれたんです。維持費も安いし『あれを開けた状態でエンジン音を聴きながら走るって、なんかもう最高やん!』って思いまして。それで18歳で運転免許を取得して、短大卒業後にすぐ働き始めて、S660を買うための資金として315万円を目標に貯めていきました。ちなみに、その間は父親のイプサムを借りていました」

目標額に向け、着実に貯金を増やしていったCoupeさんだったが、23歳の時に予想外の事態が起こる。なんと2022年をもってS660が生産を終了するというのだ。同時に、ファイナルモデルの『Modulo X Version Z』の告知が…。そして、そのファイナルモデルが、自身の好みにピッタリだったのだそうだ。

「S660のファイナルモデルとなる、『Modulo X Version Z』のソニックグレーパールっていう限定色がすごくカッコ良いと思って。直ぐにホンダディーラーに向かいました。しかし、残念ながら既に売り切れていました。さらに、生産終了が発表されたことで、S660の中古車相場が高騰してしまい、泣く泣くS660の購入を断念したんです…」

そこでCoupeさんが次に狙いを定めたのは、S660と同じく軽自動車オープンカーであるダイハツ・コペン。特にコペンGRスポーツが欲しいと思っていたそうだが、そんなときに街中で偶然目にしたのが『コペン クーペ』だった。

「いつものように会社の最寄駅から会社に向かっている途中、今まで見たコペンとは明らかに屋根の形状が異なるコペンが走っていて『なんやろ? あのコペン。屋根が開きそうな感じではないけど…』と不思議に思って調べてみると、限定200台のコペン クーペやったんです。その後ろ姿にすごい惚れて『屋根から流れるこの感じがいいやん、コレにしよう!』と決めたんです」

ただ、Coupeさんが元々こだわっていたのはオープンカーだ。当然「オープンしないクルマを買うのはどうやろ?」という葛藤はあったという。しかし結論としては『オープンカー』というアイデンティティよりも『コペンのクーペスタイル』という個性の方が、彼の中で上回ったのだ。
というのも、彼が購入を検討していたコペンGRスポーツのなかで、唯一好みではなかった点が、屋根を閉めた時の後ろ姿だったのだとか。それに対して、このコペンクーペの流麗なバックショットは、彼の好みにピッタリだったそうだ。

「そもそも僕には自由に乗れるイプサムもあるのに“なぜクルマが欲しかったのか?”そう、原点に立ち返ってみました。そして『自分のクルマを通して、いろんな人達とコミュニケーションを取りたい』と思っていたことに改めて気付いたんです。その点このクルマは200台という限定車なので、クルマ好きな方が声を掛けてくれて、コミュニケーションが生まれやすいのではないかと思ったんです。多くの方と交流することで、このクルマに乗っている自分を誇りに思えるようになれば、自分をもっと成長させることができるんじゃないかって。このコペンなら、屋根はオープンにできないけれど、僕の心はオープンにできるんじゃないかって!」と、ちょっと照れくさそうにしながらも、目を輝かせながらその熱い想いを話して下さった。

心を決めたCoupeさんが中古車サイトを検索していると、都内の中古車店にあったグリーンのマニュアル車がヒットし、無事購入に至ったそうだ。諸費用込みで予算内に収まったことも幸いだったという。
こうして手に入れたのは、2019年式のダイハツ・コペンクーペ(LA400K型 改)。マニュアルミッション車で、購入時の走行距離は僅か20kmという新車レベルの一台が23歳で購入した初めての愛車となった。

そして、実際にコペンクーペを運転してみた時の感想はというと…
「これまで乗っていたイプサムは、ファミリカーなので当然足が柔らかいんですよ。コペンはそれと比べると硬く感じて、道路の継ぎ目などを超える時にガタンガタンってするので、最初はちょっと気になったという程度ですね。一方、マニュアルミッションの運転は楽しかったです!」と、嬉しそうに話してくれた。

コペンクーペの個性を大事にしているCoupeさんは、外装に関しては純正の状態を維持しているが、その一方で内装はボディカラーに合わせたチェッカー柄フロアマットでお洒落に演出。さらに、SDカードに入れた画像を表示できる純正ナビの起動画面に、愛車の写真を設定しているところも見逃せない。その他、自衛のためのドライブレコーダーも追加したそうだ。

そんなCoupeさんに、このクルマの特に気に入っているところを伺ってみた。

「やっぱりクーペならではの、この流れるような後ろ姿が気に入っていますね。それと、このクーペしかできへん技がありまして。ガラスハッチを開けてこうやって中に入ることができるんですけど、これをやるとコペンオーナーの皆さんは笑って喜んでくださるんです。ただ、ハッチを閉められてしまうと中から開けることはできないので、そこは要注意。クーペ専用の取説書にはその注意喚起がされていましたので、絶対に真似しないでくださいね!」

現在は、このコペンクーペで普段使いから仲間とのドライブ、ミーティングやイベントなどにも参加しているというCoupeさん。
乗り始めた当初はコペン仲間が皆無だったというが『愛車を通していろんな人と交流して仲間を増やしたい』という想いが強かった彼は、購入後すぐにSNSを始めたそうだ。

「そこで、2ヵ月に1回、第1土曜日に神戸のポートタワーでコペンの集まりがあるのを知って、自分の想いを叶えるために、思い切って参加してみたんです。そうしたら、クーペだったことで、皆が話しかけてくれて、次回のお誘いもしていただいて、そこからほぼ毎回参加している感じですね」

  • (写真提供:ご本人さま)

そしてこのオフ会での参加をきっかけに、Coupeさんの交流の幅は広がっていく。
「その年、2021年の10月くらいのミーティングで出会った鳥取のオーナーさんが『来年、雪が解けた頃に鳥取でミーティングがあるから良かったらおいで』って言ってくれまして、翌年の5月に鳥取まで出向いたんです。そうしたら、誘ってくれた方はもちろん周りの方からも『時間もお金も使って、遥々来てくれて本当にありがとう』って、お土産まで頂いてしまったんです。その時に『ああ、自分がやりたかったことって、こういうことやったんやな』って実感して。なんかもう、やりたかったことができたっていう喜びで感動しちゃいました」

  • (写真提供:ご本人さま)

自身が愛車と一緒に求めていた一番の目的の達成感を味わったCoupeさんは、その後もSNSで知り合ったオーナーさんの元へ、フェリーに乗って会いに行ったり、コペン仲間とクリスマスツーリングを楽しむなど、積極的に交流を楽しんでいるという。

そしてコペンを通して一期一会を大切にする彼のスタイルを象徴するのが、山小屋の交流ノートを思い起こさせる1冊のノートだ。
そこにはCoupeさん宛のメッセージがぎっしり。これは彼が出会った人たちに『宜しかったら一言ください』とお願いして、書いてもらっているそうだ。仲間や友達と交流することが大好きなCoupeさんの人柄がうかがえる。

「コペンでの交流を通して得られる情報は、自分や周りの方達にも提供できる大切な財産でもあるんですよね。今度はコペンと共に北海道に渡って、向こうのコペンオーナーさんと交流するのが目標です。僕にとってこのコペン クーペは、自分をピュアにしてくれて、解放してくれるスーパーヒーローなんです!」

初対面の瞬間から終始元気良く一生懸命コペン クーペへの熱い想いを語ってくれたCoupeさん。彼は、個性的なこのクルマを選んだことで、最も欲しかったものを手に入れたのだ。そしてきっとこの先も、たくさんの素敵な出会いが待っているに違いない。

(文: 西本尚恵 / 撮影: 清水良太郎)

※許可を得て取材を行っています
取材場所: 福井大学 文京キャンパス(福井県福井市文京3-9-1)

[GAZOO編集部]