憧れ続けた愛車と“無理なく”いつまでも。異色の3人乗りレガシィ・ツーリングワゴン

  • GAZOO愛車取材会の会場である三角西港で取材したスバル・レガシィ シーツーリングワゴン GT-B E-tuneⅡ(BH型)

    スバル・レガシィ シーツーリングワゴン GT-B E-tuneⅡ(BH型)



高校生の頃にスポーツバイク、スズキRG50Γ(ガンマ)を自分流にイジりはじめたことがきっかけで、乗り物の面白さに目覚めたという鹿児島県在住の『ふな』さん。

自動車の免許を取って、初めて購入したクルマは2代目のホンダ・プレリュード。以後、トヨタのMR2スーパーチャージャーやAE86、ユーノス・ロードスターといったスポーツタイプのクルマを乗り継いだという。
そして、周りの友人に誘われサーフィンを始めるようになると、サーフボードを積み込むためにとエスクードに乗り換えることになった。

「ロードスター(NA型)は、リヤのビニール製ウインドがファスナーで開閉できたので、そこからサーフボードを突っ込んで海まで出掛けていた時期もありました。けれど、それではさすがに不便と感じるようになってきたので、エスクードに乗り換えたんです。そこから数年後に結婚が決まり、さらに実用性を高めるべくアコードワゴンに乗り換えました。この時、最後まで購入を迷ったのが3代目レガシィのツーリングワゴンだったんです」

直線基調の引き締まったスタイルに加え、スバル独自の水平対向エンジンにも興味があったというふなさん。シーケンシャルタイプのスポーツシフトやビルシュタイン製のダンパーなどを備えた上位機種の“GT-B E-tune Ⅱ”が第一希望であったが、車両本体価格だけでも300万円台スタートと、完全に予算オーバー…。
別のグレードに変えるという選択肢もあったが、これから家庭を持つ上でクルマ趣味だけにお金を使うワケにはいかないという判断から、総額でも200万円台で収まるアコードワゴンが新たな愛車になったという経緯である。

「アコードも良いクルマでしたが、やっぱり心の片隅にはどこかレガシィへの未練が残っていましたね。その後、子供が生まれてエルグランドに乗り換えたのですが、その時にも“これから先もレガシィに乗る機会は無いんだろうなぁ”と、寂しい気持ちになったのを覚えています」

しかし、出会いのチャンスは予期せぬタイミングで訪れる。歳を重ね、フーガ、BMWミニなど、クルマの趣向も徐々に変化を見せはじめ、あれほどまでに熱を上げていたレガシィへの想いも忘れかけていた頃、何気なく眺めていたインターネットオークションのサイトで、一台のクルマが目に止まる。

そのクルマは言うまでも無く、かつて憧れ続けていたBH型のレガシィ・ツーリングワゴン、しかもGT-B E-tuneⅡグレードだった。

「ブルーのボディカラーには特にこだわりは無かったですけど、仕様的には当時の私が欲しかったクルマそのものでした。パソコンの画面上で見る限りは、内外装の状態も良さそうだったし、この機会を逃すと次はもう絶対に無いだろうと思って、一念発起で入札。そして無事に落札できました」

長い年月を超え、ようやく巡り逢えたレガシィ・ツーリングワゴン(BH5型)。しかし、実車を見ないまま勢いに任せた決断に、徐々に不安を感じるようになったという。複雑な気持ちを抱きつつ引き取りに向かった先は、かつて在住経験があった静岡県であった。

「静岡には11年ほど住んでいましたし、出品者との待ち合わせ場所となったJRの駅は当時私が通勤で利用していた駅。周りの風景は変わっていたけど、駅は昔のままで、不思議な縁を感じましたね。心配していたクルマの状態は前のオーナーさんがしっかりお金を掛けられていたようで、走行14万kmとは思えないほど綺麗でした」

「ただ、この時期のスバルのツインターボ車乗りの間ではお馴染みの、通称『0.5病』を患っていました。これはアクセルを踏み込んでもターボの過給圧が0.5kg/㎠以上掛からないという持病です。出品者さんからも事前に説明を受けていたし、回転を抑えれば普通に走れるので、とりあえず持ち帰ってから修理を行なうことにしました」

いかに見た目の状態が良好とはいえ、生産から20年以上の時間が経過しているクルマだけに、多少のトラブルは想定済み。そのために車両代とは別にある程度の修理費用は工面していたふなさんだったが、0.5病の症状は予想以上に深刻で、当初準備していた修理・メンテナンス用の資金は、たちまち底をつくことに。

憧れのレガシィを手に入れた喜びも束の間『このままではとてもじゃないが、長期の維持は難しいかも』と、いきなりの危機に直面したふなさんは、ひとつの解決策を見出す。

「4ナンバー、貨物車登録です。車検は毎年にはなりますが、ベースとなる税額の設定が低いので、負担は大幅に軽減されます。基本的な整備は自分でやって車検も自分で持ち込むので、維持費の総額でいくと、5ナンバー車の時と比較すると、その金額は大きく変わってきますね」

クルマに詳しい方ならご存知の通り、4ナンバー化を行なうためには単にナンバー変更の手続きだけではなく、貨物車としての規定を満たすため、車両側の構造的な変更も必要となってくる。その最たるものが、荷室容量の確保だ。

これについてふなさんは、まずレガシィ純正の分割可倒式リヤシートの右側2名分を取り外し、3名乗車になることを決意。それに加え、シートを外した部分には荷台となるボードと、積載物の滑り止め用のバーを設置した。

内装の眺めは大きく変わったが、外観的にはリヤゲートに貼られた『最大積載量』を表すステッカーが唯一の識別点となっている。

「ナンバー変更の手続きも自分でやりました。2名分のシートが無くなったけど、家族は3人なので別に不自由は感じていません。それからこれは余談ですが、希望ナンバーにしてもないのに4ナンバー化した時の4ケタの数字が、納車当初の5ナンバーのものと同じだったのにはビックリ! こんなところにも、このクルマとの縁を感じました」

もちろん、節約モード一辺倒ではなく、テイン製の車高調整式サスペンションや、インプレッサ用ブレンボ製ブレーキキャリパー、オークションサイトで手に入れたBBS製ホイールが装着されるなど、レガシィ・ツーリングワゴンGT本来の持ち味である卓越した走行性能についても存分に満喫しているふなさん。たまの休日にはNC型マツダ・ロードスターに乗る幼馴染みと共にオフ会やミーティングイベントにも出かけている。

「パーツ類の入手についてはネットオークションを利用することが多いけど、ブレーキだけは中古だと過去にどんな使われ方をされてきたのか心配だったので、地元のカーショップさんで見つけた履歴が明確な物を選択しました。その他、レガシィは街乗りでも水温が上がりがちなので、ラジエターもコアを増して対策しています。高速道路ではツインターボ独特のフィーリングが良いですね。シングルターボからツインターボに切り替わった時の力強いパワー感は爽快ですヨ!」

5ナンバーから4ナンバーへの変更については様々な意見があるかも知れないが、限られた予算の中で、好きなクルマをできるだけ長く乗り続けたいという気持ちは、このサイトの読者ならきっと理解して頂けるはず。

何より、これほどまでに状態の良いBH5型レガシィ・ツーリングワゴンが、今なお現役で存在し続けていることは、スバル車を支持するファン諸氏にとっても喜ばしい話ではないだろうか。

(文: 高橋陽介 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:三角西港(浦島屋、旧三角簡易裁判所ほか)(熊本県宇城市三角町三角浦)

[GAZOO編集部]

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