良いものを長く大切に使うオーナーが選んだファミリーカーは、GRヤリスのファーストエディション

  • GAZOO愛車取材会の会場である宮崎県林業技術センター/森の科学館で取材したトヨタ・GRヤリス(GXPA16型)

    トヨタ・GRヤリス(GXPA16型)



愛車を手に入れたなら、大小問わず何らかのカスタマイズを楽しみたいという人は少なくない。好みのスタイリングを作るためのホイールや、サスペンションの入れ替えはもちろん、車内での快適性を求めたドリンクホルダーなどもそのひとつと言えるだろう。

2021年式トヨタGRヤリス RZファーストエディション(GXPA16)オーナーの『ずべずだ』さんは、自身の愛車にノーマルでも十分に満足しているそうで「“現段階では”イジるつもりはない」と語る。

2020年にデビューしたGRヤリスは、トヨタがWRCのホモロゲ取得を目指して開発した4WDスポーツ。市販車でも十分なパフォーマンスが備わり、ラリー競技での活躍はもちろん、レースなどでもその実力を発揮している。特にサーキットユース向けには、アフターマーケットで様々なパーツが用意されているため、自分好みの仕様にアップデートしながら楽しむオーナーが多いのも特徴と言えるだろう。

「大学に入学した時に、お祝いとして初代のトヨタ・ヴィッツ クラヴィアを買ってもらったんです。そこから“コンパクトでそこそこ使えるクルマ”が好きになっちゃいました。そのヴィッツはATだったんですが、10年乗ったところでATが壊れてしまい、自分で載せ替えて乗り続けていました。そんなヴィッツが、エアフロの故障でエンジンが掛からなくなってしまったタイミングで、妻に『新しいクルマを買ったら?』と言われ、購入したのがこのGRヤリスになります」

新車購入を考えたタイミングは、まさにGRヤリスが発表された直後。そのため抽選販売となった『ファーストエディションは買えないだろう』と考えていたという。しかし、運よく当選したところで、ふとした迷いが生じた。というのも妻との約束は『家族みんなで乗れるクルマ』なのだが、3ドアのGRヤリスは、ファミリーカーとしてどうなのだろう? と考えてしまったのだ。しかしコンパクトでも4人乗り、しかもノーマルでもパフォーマンスは十分なMT車で、限定となるファーストエディションという魅力には抗えなかったのは言うまでもない。

大切に乗っているというだけあって、エンジンルームを覗いても美しいコンディションをキープしている。これまでの経験から、エンジン系に何らかのトラブルがあった場合は、必ずオイルの滲みや漏れなどといった予兆が見られる。そのため普段からこまめに清掃しながらチェックすることで、問題の芽にいち早く気づいて摘み取ることができ、結果として長く乗り続ける秘訣にもなるという寸法だ。

「昔は軽自動車の耐久レースなどにも参加して、車両の製作もしていました。なので、GRヤリスのエンジンなど、メカニカルな部分にはすごく興味が湧きました。乗ってみるとノーマルでもパワーがあるし、何よりも安心感がある。安心感といった面は新車だから当然なのですが、この状態を維持していけば、長く不満なく十分に楽しめるクルマなんですよね。これまではパーツが寿命を迎えた部分を、修理のついでにアップデートしていましたので、このGRヤリスも乗り続けているうちにダメになった部分を、自分好みにカスタマイズしていこうかなって考えています」

GRヤリスの前に乗っていたヴィッツは今も乗り続けており、そのヴィッツは自分でミッションを載せ換えている。さらに通勤車のスズキ・アルトハッスルではエンジンを載せ替えたり、錆びたボディの修復など、知人の修理工場の助けを借りながらご自身でハードな作業もこなしている。そんな彼であっても、ノーマルのGRヤリスが持つ走りの性能は大満足だったわけだ。

インテリアもノーマルの状態をキープするのがずべずださんの信念。当初はナビなどを入れ替えるつもりでベースグレードの『RC』と迷ったというが、RCにはハーネスが備わっていないという情報から『RZ』を発注したとのこと。フル装備のRZだけに、特に不満なく乗れるのは選択に間違いはなかったと考えている。

走りが楽しめるスポーツ4WDというキャラクターだからこそ、MTを選択している。シフトコンソールに飾られるぬいぐるみは、結婚前に奥さんの友人から頂いたという思い出の品。ずっと車内に置かれているため、ずべずださんファミリーにとっては欠かせない存在にもなっているのだとか。

あくまでもファミリーカーという位置付けのため、家族揃ってのドライブがメインとなる。最近では、10歳になるお子さんが恐竜に興味を持ったことから、熊本にある博物館まで月に1回は通っているのだとか。

片道3時間のドライブは、ずべずださんにとっては楽しいものだというが、そろそろ体も大きくなってきた息子さんにとって、ジュニアシートを搭載したリヤシートは若干窮屈になりつつあるという。そのため、さらに使い勝手の良いトヨタ・サクシードを増車したところ、そちらの方を気に入ってしまったのは、購入時からの懸念が的中してしまったといったご様子だ。

「GRヤリスは、素の状態でも走らせて楽しいクルマなんですよ。だから片道3時間のドライブでも、疲れよりも充実した気分で過ごせます。ですが、やはりリヤシートの息子は狭くて楽しめていなかったのかな。だから最近では家族でのドライブはサクシードがメインになりつつありますね。ただその分、GRヤリスの走行距離があまり伸びない点は、嬉しいような、悲しいような…」

サーキットに持ち込んだりする人が多いGRヤリスだけに、さらに速いクルマに仕上げたいと感じている人も多いと思われる。しかし、ずべずださんはノーマルで十分に満足しているので、カスタマイズする欲求もそれほど湧いてこないのだとか。
また、通勤車が別にあるため、乗る機会が限られていることもあり、たまに乗るからこそ常に新鮮な気持ちで乗ることができるのかもしれない。

GRヤリスのパフォーマンス面に大満足しつつ、そのスタイリングにも惚れ込んでいるのは購入して正解だと感じたポイント。特にスポーティなバンパーや張り出したフェンダーのデザインなど、社外のエアロパーツを取り入れる必要がなく、ノーマルでも飽きないスタイリングも魅力だという。また鍛造ホイールやビッグブレーキ、適度なサウンドを奏でるマフラーなど、使われるパーツも不満はないため、手を加えたくなる欲求がまったく湧かないのだという。

唯一手を加えたのはBピラーに貼られたトミカのステッカー。お子さんがトミカ好きなのかと質問したところ、「クルマは1/1トミカだと思っているので」と、答えたのはずべずださん自身。移動手段であることはもちろん、モータースポーツを楽しんだり、カスタマイズによって自分好みにアップデートできることなど、クルマがあることで遊びの幅も広がる。まるで子供がトミカで遊ぶように、実車を楽しみ尽くしたいという考えを表しているというわけだ。

ちなみに、トミカと言えば収集欲を刺激される人も多いはず。次々と集めてしまい、置き場所に困ってしまう人も少なくない。そんな収集欲を1/1トミカでも実践してしまっているのは、ずべずださんの悪い(?)癖。
はじめての愛車であったヴィッツを筆頭に、歴代乗ってきたクルマは、今もすべて保管しているという、贅沢な大人の遊びを実行されているのだ。

それもこれも、奥様がずべずださんの趣味に対して非常に寛容であるおかげだ。奥様はクルマに興味が深いというわけなく、GRヤリスは「馬力がありすぎるため助手席専門」とはいうものの、過去にはずべずださんが耐久レース用に組んだエンジンのクルマを運転していたこともあるというからうなずける。

「我が家では“ちょっと速いヤリス”といった感覚。スポーツ走行ではなく、普段の買い物やドライブでの使用がメインになっています。だから、納車されて3年経った現在の走行距離は1万km程度で、逆に大切にし過ぎちゃっているのかも…と反省しています。これからは家族と一緒に、GRヤリスでもっと色々なところに出かけるようにしたいですね」

これまでの経験から、幅広いクルマの楽しみ方を知っているずべずださん。だからこそクルマ趣味“だけ”を満喫するのが目的ではなく、あくまでも家族で楽しむために手に入れたGRヤリスは、現段階ではノーマルの状態が最善と考えている。

ファミリーカーとして楽しみ、家族との想い出を紡ぎながら、来たるべき時にはカスタマイズも楽しむ。ずべずださんとGRヤリスの物語は、まだまだ序章に過ぎないのである。

(文: 渡辺大輔 / 撮影: 西野キヨシ)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:宮崎県林業技術センター/森の科学館(宮崎県東臼杵郡美郷町西郷田代1561-1)

[GAZOO編集部]

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