27年17万kmを共にしてなお、磨き込まれた美しき98インテR

  • GAZOO愛車取材会の会場であるジーライオンミュージアムで取材したホンダ・インテグラ タイプR (DC2型)

    ホンダ・インテグラ タイプR (DC2型)



「98 specが出るという噂を聞いて、ベルノ店に直行したんです。現車も見ないまま、その日のうちに契約したんですよ」と、当時を振り返ってくれた『しんてぐら』さん。

この『98 spec』というのは、3代目ホンダインテグラの高性能グレードとして追加されたインテグラ タイプR(DC2型)のなかでも、1998年にマイナーチェンジを受けて発売されたモデルのことを示す呼び名である。

いくら『欲しい!!』と思えるモデルであったとしても、実物も見ぬまま新車購入の契約をするというのは、なかなかできることではないが、そこまでして手に入れたインテRは、しんてぐらさんの期待を裏切ることはなかったという。その証拠に、手に入れてからこれまで25年以上に渡って98インテR一筋のクルマ人生を送っていらっしゃるのだ。

しんてぐらさんに98インテRに乗るまでの愛車歴を伺うと、バラードスポーツCR-Xと、初代カローラFXを乗り継いでこられたとのこと。

「CR-Xに乗るまでは、実はクルマにあまり興味がなかったんです。でもバイト先の先輩がCR-Xに乗っていて、興味が沸いて自分もCR-Xに乗るようになったんですよ。とにかく軽さが魅力で、乗るのがすごく楽しいクルマでしたね」
このCR-Xでの経験が『軽量なボディとパンチのあるエンジンの組み合わせが楽しい』という価値観を植えつけたようだ。

しかし「中古の安い固体を買ってしまったので、ボディの状態が悪くて…。乗り換えることにしたんです」と、CR-Xとのカーライフはそれほど長くは続かなかった。そしてCR-Xと同じような楽しさを期待して “テンロクFF”のカローラFXに乗り換えたものの、しんてぐらさんが望む乗り味ではなかったそうで、CR-XもモデルチェンジでCR-Xデルソルになってしまっていたことから次の愛車候補には上がらなかったという。

そんなしんてぐらさんの、初代CR-Xに乗ったことで築かれた『軽量な車体に元気の良いエンジン。そして気持ちよく曲がる2ドアクーペ』という価値観にマッチするかも? と思わせてくれたのが『98インテR』であったというわけだ。

1998年2月に納車された新たな愛車は、しんてぐらさんの期待を裏切ることはなかった。
「ステアリングを切った時の反応が、CR-Xに負けない、いやそれ以上にクイックなもので、期待以上の乗り味でした」

元々、3代目インテグラには、1.8リッターで180psを誇るB18C型VTECエンジンを搭載する“SiR”というハイスペックグレードが用意されていたのだが、さらに走行性能を重視して作り上げられたインテグラ・タイプR(DC2型)は、エンジン本体やギヤレシオ、足まわり、内外装まで専用のチューニングが施され、圧倒的な高性能を有するスポーツモデルとして仕上げられた。
しんてぐらさんの愛車である98specは、96specからボディ剛性アップや足まわりの仕様変更をはじめ、ホイール&タイヤのサイズ変更に5穴ハブ化、ステンレス製エキマニの採用など、さまざまなアップデートが施されている。

タイプR用にチューニングが施されたB18C Spec Rエンジンは、SiRに搭載されるB18Cのリッターあたり100psに対して、リッターあたり111psとなる最高出力200psを発揮。
そのチューニングの内容とカタログ値は伊達ではなく、アクセルを踏み込めばエンジンは気持ち良く、そして力強く吹け上がり、1.8Lの自然吸気エンジンとは思えない加速を味合わせてくれた。

そんなパワフルなエンジンにも負けない、引き締められた足まわりも特徴的。ストレートでもコーナーでも速く、FFという当時の走り好きからは否定されがちだった駆動方式にも関わらず、多くの腕自慢たちを魅了したのであった。
しんてぐらさんも、まさにそのうちの1人であるといえよう。

また、しんてぐらさんがこだわる“軽さ”に関しても、実際の車重はCR-Xが860kg、インテRは1080kgと実質200kgも重くなっているわけだが『インテRの魅力はボディの軽さ』と、CR-Xの乗り味でクルマの楽しさを知ったしんてぐらさんにも言わせてしまう、絶対的な魅力である軽さがインテRからは感じ取れたのだという。

とは言え、走りに特化した2ドアクーペに長く乗り続けるのはそう簡単なことではない。ライフスタイルの変化で、愛車を乗り換えなくてはならなかったというのは、よくある話である。インテRが納車された半年後に、娘が生まれたというしんてぐらさん。その大きなライフスタイルの変化で、子育てしやすいミニバンなどへの乗り換えという話にならなかったのだろうか?

「確かに乗り降りとか不便なところもありましたが、後ろにチャイルドシートを付けてなんとかなりましたね。二人目を授かっていたら流石に厳しかったかもしれませんが、とくに乗り換えるという話は、我が家では出てきませんでした」

取材に同行してくれていた奥様に、インテRから他のクルマに乗り換えたかったのでは? と質問してみると「他のクルマが欲しいというのはなかったですね。今はほとんど運転しなくなりましたけど、前は私も娘の保育園への送迎でよく運転していました。だから私自身もこのクルマにめっちゃ思い入れがあるんです」というお答えが。
奥様ご自身もインテRというクルマを気に入っていたからこそ、買い替えという話題は出てこなかったようだ。

そして奥様だけではなく、娘さんもインテRがお好きだったそうなのだ。
「娘が小さい頃の話ですが、機嫌が悪く寝ついてくれない時に、インテRでドライブに連れ出すと、すぐに泣き止んで寝てしまうんです。当時は不思議に思っていたんですが、後にホンダがエンジン音の出るぬいぐるみを発売したと知って、科学的にもそういう効果があるんだと驚かされました」

ホンダのウェブサイトによると『クルマのエンジン音には赤ちゃんを安心させる可能性がある』と記されており、しんてぐらさんの娘さんにとっては、インテRのエンジン音がやすらぎの元だったのかもしれない。

そんなインテRとの付き合いは、丸27年。走行距離で言えば17万km弱となる。その時間や距離からすると、しんてぐらさんのインテRは、とてもきれいな状態を保っているので、昨今、大規模なリフレッシュなどを行なったのかと思いきや、そうではないという。
「最近、ホイールはリペアしてもらいましたが、何か特別に綺麗にしたのはそれぐらいです。あとは、乗ったら水拭きしてからボディカバーを描けるぐらいしかしていませんので」とおっしゃるが、例えばボンネットフードの裏側まで、とてもきれいな状態を保っているのだ。

「ボンネットの裏側とか、ホイールの内側とか、そんなところまで綺麗にするようになったのは、5〜6年前にインテRのオーナーミーティングに参加したのがキッカケですね。みんながメッチャ綺麗にしていて、そんなインテRを見てから自分でも細かいところまで綺麗にするようになったんです」

ちなみに今回の撮影でも、取材の順番をお待ちいただいている時間に、ホイールの裏側まで磨いてくれていたんだそう。

「今、装着しているブレーキパッドから、凄くダストが出るんですよ。今朝、出かける時には綺麗だったのに、結構ダストが付いちゃってたので、綺麗にしてやりました(笑)」
ちなみに、ブレーキダストがあまり出ないパッドを既に入手済みだそうで、近い内に交換を予定されているそうだ。

四半世紀以上も同じ愛車に乗り続けるということは、実際にできる人はそう多くはない。
前述したように、ライフスタイルの変化で乗り替えざるを得ないこともあるし、オーナー自身が飽きてしまったり、違うクルマもジックリ味わってみたくなったりと、そのキッカケとなる理由はいくらでもあるからだ。

「今年で丸27年経ちますが、このインテRを超える、乗り替えたいと思えるクルマが現れないんです」と語るしんてぐらさん。
その口調や表情から察するに、新車からワンオーナーで所有し続けるというスタイルを今後も間違いなく続けていってくれそうだ。

(文: 坪内英樹 / 撮影: 稲田浩章)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:ジーライオンミュージアム&赤レンガ倉庫横広場 (大阪府大阪市港区海岸通2-6)

[GAZOO編集部]

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