「やっぱり、コレじゃなきゃダメみたい」一度は手放したアベンシスを“おかわり”して終の愛車に
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トヨタ・アベンシスワゴン(AZT251W型)
『トヨタが作った欧州車』という広告コピーで、ネイティブな国産車とは一線を画したイメージ戦略のもと、2003年に日本デビューしたアベンシス。その触れ込みの通り、同車はイギリス、ダービー州のTMUK(Toyota Motor Manufacturing(UK)Ltd.)で生産が行なわれた正真正銘の輸入車であり、知る人ぞ知る秀作として今なお根強いファンに支えられている。ここに紹介する『ぼゆい』さんも、その中のひとりである。
「元々、ちょっと変わったマニュアル車が好きで、愛車として最初に買ったクルマはプラッツ。初代ヴィッツのセダン版で、現役時代にはそこそこ売れていましたが、大半がAT車でマニュアル車の比率はごく僅か。当時整備士として勤めていたディーラーではプラッツ乗りのお客様から入庫があると、先輩から『ほら、お前の出番だぞ』と声が掛かりましたね(笑)。ちなみに、1500cc版のエンジンの中身は、ほとんど当時のヴィッツRSと同じだったので、自分ではピストンを変えて圧縮比を上げたり、足まわりにも手を加えてオートポリス(サーキット)を走ったりして楽しんでいました」
その後、一時的にオートマチック車のプリウスに乗るが、ホンダ・ビート、スズキ・キャリイ、トヨタ・デュエットなど、ひとクセあるマニュアル車に乗り続けてきたが、左手に腱鞘炎を発症し、AT車への乗り換えを余儀なくされることに。
この時、迷わず選んだのがアベンシスだった。
「実はディーラーの整備士時代から、アベンシスのワゴンに目をつけていたんです。展示用として入って来たアベンシスに乗る機会があって、しなやかだけどコシのある足まわりや、硬めだけれど体にフィットするシートなど、当時の国産車の水準とのギャップに衝撃を受けました。だからATで乗るならコレだなと。ディーラーは退職していたので、知り合いの中古車販売店に探してもらうことにしたんですが、既にアベンシスは生産中止となっていたし、元々販売台数が少ないクルマということもあって、見つかるまで3ヵ月くらいかかりましたね」
こうしてぼゆいさんの手元にやって来たのは、深みのあるダークブルーマイカに彩られたアベンシスの上位機種、Liグレード。
ヨーロッパ生まれの洗練されたハンドリング、疲れ知らずのシート、純正とは思えない上質なサウンドを奏でるオーディオシステムなども装備しており、期待通りの完成度に満足感を覚えつつ、普段の通勤から休日のアウトドアレジャーまで大活躍してくれた。
しかし、所有してから5年ほどが経過し、オドメーターの数字が8万kmを超えたあたりからエンジンオイルの消費量が増加。他にもヘッドライニングの垂れ下がりなど、マイナートラブルが頻発し始める。
「この世代の輸入車に起こりがちな経年劣化と、初期の直噴エンジンにありがちだったトラブルが併発して、最初はなんとか騙し騙し乗り続けていたものの、その症状が次第に深刻化していったんです。とても気に入っていたクルマでしたが、トラブルの度にそれなりの費用を工面するのもなかなか厳しく、悩みに悩んだ結果、修理は諦めて手放すことにしました」
その後は、リフトアップ仕様にカスタマイズしたスバル・XVを経て、ルノー・カングーを購入。余裕のユーティリティや適度な硬さのシートは奥様からも好評だったが、トータルでみると、アベンシスほどの満足感を得るまでには至らなかったそうだ。
2代目アベンシスへの想いは依然として残るものの、さすがに年代的に中古車を探すことも難しく、2011年に発売された若干新しめの3代目アベンシスを代替案として一時検討するも、2代目よりひと回り大きくなったボディサイズを受け入れることができず断念。そんな次期愛車候補を模索する日々が続いていた時、ネットに掲載されていた一台のクルマに目がクギ付けに!
「走行僅か9500kmという、信じられない状態のアベンシスワゴン(AZT251W型)でした。エンジンが2.4リッター化された2007年式、後期モデルのフルノーマル車で、レザーシートが標準装備されている最上級グレードQi。埼玉の販売店の在庫車でしたが、詳しく話を聞いてみるとコンディションは極めて良好とのことでした」
「そのアベンシスワゴンには、東京日本橋のディーラー店名のステッカーが貼られていて、タイヤはブリヂストン・レグノが装着されていました。そんなところからも、クルマを複数台する裕福なオーナーさんがたまに乗るセカンドカー、あるいはサードカー的に保有していたのかなぁ? と勝手に想像しました(笑)。価格も十分リーズナブルだったこともあり、これは2代目アベンシスに乗れる最後のチャンスだと思い購入を決断しました」
こうして、1台目との涙のお別れから長年のブランクを経た後、令和の現代に再びアベンシスとのカーライフをスタートすることとなったぼゆいさん。販売店の説明通り、実車の状態は素晴らしく、差し当たって手を加えなければならない部分は皆無で、唯一、光量が近代車に対して暗めだったヘッドライトだけはLEDに変更したという。
その他、カーゴスペースのスペアタイヤの空間を利用してサブウーファーを追加。幸いカングーが好条件で引き取られたため、車両代とこれらのパーツ代を支払っても十分なおつりがくるほど、無理のない、最高の買い替え計画を実現することができたという。
「年数は経過しているものの、1台目よりも走行距離が少ない上に保管状態にも気を使われたワンオーナー車ということで、乗り味は新車時代を思い起こさせるほど快適です。購入から丸1年で現在の走行距離は1万8000km。私はバイクも趣味で、遠方へ出掛ける時はもっぱらバイクなので、アベンシスの走行距離は思ったほど伸びてはいません」
「これからもメンテナンスを欠かさず、大切に維持して行きたいですね。今、このクルマで行ってみたい場所はオートポリス。と言っても、かつてのプラッツのように激走するワケではなく、ペースカー先導の体験走行。走行後にはメインストレート上にクルマを止めて記念撮影ができるんです。今まで何度か行こうとしたけど、雨だったり雪だったり、なかなか仕事の休みとのタイミングが合わなくて」
ちなみに、現在のぼゆいさんは道路の維持管理のお仕事をされており、毎日のように行き交うクルマに目を配っているものの、同型のアベンシスを見かけることはほとんどないとのこと。
「通行量が大きく増える年末年始でも、今まで数えるくらいしか見たことないです。ごく稀に同じ色のアベンシスを見かけると『あれ? ひょっとして俺のクルマ、盗まれたかも?』なんて不安になったり(笑)」
「実は黒いクルマを買うのはこれが初めてでしたが、これほどまでに汚れに気を使うことになるとは思っていませんでした。私は売却時の査定を考えない主義で、例えばXVとカングーはいずれも黄色を選ぶなど、白、黒、シルバーといった人気の定番色はあえて避けてきたんです。そういった経緯もあって、黒いボディの美観を維持するための気苦労が、このクルマの唯一の欠点(!?)かも知れませんね」
確かに、黒い塗装には洗車の際の拭きキズやホコリ、小雨の跡などが目立ってしまう弱点があるが、その独特な高級感や重厚感、そして流れる景色を映し込む存在感など、他のボディ色では得られないものだ。
いつの日か、ピカピカに仕上げたアベンシスで、オートポリスでの記念撮影を楽しんでくださいね!!
(文: 高橋陽介 / 撮影: 西野キヨシ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所: 大分大学 旦野原キャンパス(大分県大分市旦野原700)
[GAZOO編集部]
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