エンジンが好きだ。どうしようもなく好きだ。4回も載せ替えた、サバンナRX-7
死ぬまでに、もう1度ロータリーエンジンのクルマで街を走りたいと思っていたという「河尻さん」。そんな時に、サバンナRX-7があるという噂を聞きつけ、現物を見ずに購入したそうです。
2017年3月に購入し、実に40年ぶりに公道を走れるロータリー車を愛車として迎え入れたと、興奮気味に話してくれました。
今回は、河尻さん×サバンナRX-7 のお話をお届けします。
――どうして、ロータリーエンジン搭載車に乗りたいと思ったのですか?
独特のエンジンフィーリングとサウンドに魅せられて、って感じですかね。“ロータリーエンジンならでの”という所にハマってしまったんだと思います。
あとは、ルマン24hを制したエンジンでもありますし、エンジン屋としては興味の湧く対象だったというのもあります。
――エンジン屋?ですか?
マツダに勤務していたんですけど、エンジンを専門的に扱う部署にいたんです。毎日毎日ロータリーやレシプロエンジンをオーバーホールして、今まで数百機くらいオーバーホールしてきたんじゃないかなぁ?
ネジを一目見て、このネジは〇〇の部分のネジだと覚えちゃうくらい触ってましたね。
――今も人の手で行なっている作業って何ですか?
細部の組み立てなどの、微妙な調整や技術が要求されるところは人の手でやっていますよ。例えば、寸法測るとか、部品と部品のクリアランスを確認や調整するとかね。
100分の1mm程度だったらマイクロメーターのメモリで読めるんですけど、1000分の1mm台となると計測機械で正確に測らないと分かりません。
――私なんか、1mmを測るのも目がシパシパするのに……。
あはは(笑)。それはもう少し頑張りましょう!何年もやっていくと、1000分の5mm位の違いであれば手で触って分るようになりますよ。僕がすごいとかではなくて、慣れればみんな普通に分かるようになるんです。
ただ、その後にショップのマネージメントを担当する部署に移動になって、直接エンジンを触る機会が減っちゃいましたけどね。
――それは、残念でしたね……。
確かにそうなんですけど、プライベートでエンジンをずっと触っていたから、フラストレーションが溜まるということはなかったです。
――と、いいますと?
今でもモータースポーツに関わっているんです。もちろん、僕はドライバーじゃなくて、クルマを作る方ですけどね!キッカケは、レースに参戦している上司に誘われたのが始まりでした。
とりあえず……という感じでサーキット場に行くと、私が今まで携わってきたクルマとは、次元の違う世界で走っているクルマが沢山いたんですよ。
レースだから、そりゃあ街乗りをするのとはわけが違うんですけどね(笑)。頭では分かっているんだけど実際に見ると、あまりの違いに吃驚するといいますか……。
あのクルマは、何故こんな動きをするんだ?と考えるとワクワクしてきたのを今でも覚えています。それで、レースに勝てるエンジンを作りたいと思い、僕もチームに加わりました。
――どんなエンジンを作ったのですか?
難しい質問だなぁ~(笑)。技術面でいえば、参加するカテゴリーによってチューニングの仕方が変わってくるんだけど、作る上での基本的なコンセプトはどのエンジンも一緒です。
それは、持っている潜在性能を100%引き出すということです。さっき話したエンジンを組み立てるのは、慣れてくれば誰でも出来るんですよ。だけど、潜在性能を全て引き出すというのはなかなか難しいですね。
――普通に組み立てて、何%くらいの力を発揮してくれるものなのですか?
80%くらいかな。残りの20%はポテンシャルをいかに引き出してあげられるかを考えながら、精密に組み立てていくことと、完ぺきなセッティングですね。
――愛車のサバンナRX-7のエンジンは、どうなっているのですか?
今は構造変更登録をして13Bというエンジンを搭載しています。このエンジンはスクラップ品だったんですけど、オーバーホールをすることで息を吹き返したんですよ。
ただ、粗ノーマル仕様で組み立てたので、若干面白みには欠けますけどね。排ガスが触媒をつけることで保安基準をクリア出来る程度に軽くポート加工したのですが、前後ローターの重量をC符号で揃えていないので、Fローターの重量符号がA、RローターがBとなってしまい、前後で18gほど違いが出ちゃったんです。
これは頂けなかったけど、普段乗りではほとんど違いが判らないので良しとしてます(笑)。まぁ~、ダメだったら、また載せ替えれば良いし!
――またってことは、今までも載せ替えをしているのですか?
4回程しています。レース用エンジンのテストと慣らしを兼ねて、もう半分は街乗りがしやすくパワフルなエンジンの方がこのクルマに合うかな~と思い替えてみたって感じですね。
今後はエンジンの制御関係をインジェクションにしてイジっていこうかなと目論見中です。電子制御で上手く作動するようにしたくて。
――それが出来ちゃうのが、すごいです。
快適で、乗って楽しく!というのを大事にしているんです。個人的に、運転が楽しくないクルマは乗る価値がないと思っているので。
そして、僕にとって運転が楽しいということは、使うシーンによって性能を上げて、しっかり曲がって止まるということなんです。
現在、河尻さんは若い世代に、古き良き時代に作られたエンジンの技術の伝承をしているそうです。
「最先端の技術で作られたエンジンもすごいですが、僕たちの世代に作られたエンジンも知って欲しいんです」という一言がすごく印象的でした。
【みんカラ】
apexk27さん
(文:矢田部明子)
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