師匠から譲り受けたマークII。託された任務は、綺麗な状態の維持

  • トヨタ マークII

    トヨタ マークII

昔から旧車が好きで、SNSを通じて旧車友達がどんどん増えていったという「Nさん」。そんなNさんが“師匠”と呼ぶのも、その旧車友達の1人とのこと。

旧車歴が長いお師匠さんは、長年培ってきた経験を活かして、維持の仕方や流用パーツなどについて教えてくれるそうです。そして愛車のマークIIは、もともとお師匠さんの奥様の愛車だったと話してくれました。

今回は、Nさん×マークIIのお話をお届けします。

―――もともとは、お師匠さんのマークIIだったんですね。

厳密に言いますと、師匠の奥様のマークIIです。お子様が産まれて乗る機会が減ったそうで、倉庫で寝かせておくのも可哀想だから乗る?と言われて、僕が譲り受けました。

―――出会いはSNSということですが、お師匠さんは どんな方ですか?

歳が一回り以上離れているんですけど、すごくフランクに話してくださるし、知識の豊富な方です。あとは、なにより温かい人柄が好きですね。

僕は師匠と知り合った時に、マークIIと同じ兄弟車の81クレスタに乗っていたんですけど、初めて年式の経っているクルマを愛車として迎え入れたので、分からないことが多くて……。そんな時に、このパーツを付けたら乗り心地が変わるよ〜などのアドバイスを沢山頂きました。

僕の家から8時間くらいのところにある師匠の家に、クレスタで遊びに行ったんです。そしたら道中で故障してしまって(笑)。うちに部品があるから、取りにおいで!と、助けてもらったこともあったな〜。

―――聞いているだけですけど、すごく良い人そうですね。

でしょ? そんな師匠が奥様のために手入れをしていたマークIIを譲り受けたんです。

譲ってもらう時に約束したのは、子育てが落ち着いたら奥様がまた乗るから、綺麗な状態を維持したまま返すということ。

なので、こまめに掃除するとか、バッテリーが上がらないように1週間に1回は必ず乗る、どこか不調がないかを確かめるようにしています。

―――責任重大ですね!乗り心地はどんな感じなのですか?

ダウンサスが組んであるので車高が低く ふわふわで、眠くなるくらいユッタリ乗れます。

車高以外はダウンサスだけなので、通勤や買い物、ちょっとの遠出もこなせるすごい奴なんですよ。

―――Nさんは、ノーマルが好きなのですか?

どちらかといえば、そうですね。ありのままで乗ってあげたいな、とは思います。このマークIIも、ほぼノーマルだけど。う〜ん、どうだろう……。ノーマルではないのか……?

―――と、言いますと?

実は、純正部品を使って結構いじってあるんです。まぁ、そこが面白くて乗りたいと思ったんですけどね。

―――具体的に、どういうことですか?

内装と外装がチグハグになっているんです。この当時のクルマって、グレードによってシートやハンドルはデザインが違っていて、組み合わせが決まっていたんですよ。

ちなみに、このマークIIは後期グランデ リミテッドというグレードに、最上級グレードの内装が付いた個体となっています。このカスタムは よく見ないと分からない、知っていないと分からないというのが面白いんです。

―――細かな箇所でいくと、どこをどう変えたのですか?

例えば、インパネとグローブボックスを布張りに、シートはパワーシート、シフトレバーをウレタンから本革に、純正のクルーズコントロールを装着、天張は分割ものじゃなくて、1枚ものに変更するなどしています。

―――まさに、間違い探しカスタム……。

あはは(笑)!確かにそうかもしれませんね(笑)。

―――Nさんは、そんなマークIIのどこが好きなのですか?

まずは、黄色のフォグランプが好きなんです。光ると目みたいで可愛いというか♪あとは、ハードトップだから窓枠がない所ですかね。窓枠が無いから、窓を開けた時に開放感もあるし、すごくスタイリッシュな出立になるんですよ。

今は衝突安全のことを考えて、こういうクルマが無くなっちゃったから余計新鮮で素敵に見えるんですよね。

  • トヨタ マークII

    トヨタ マークII

―――この年代のクルマにしかない 良さ ってやつですね。

それでいくと、バブル期のクルマならではの、お金をかけて作ってます感の漂う内装も好きですよ(笑)。

エアコンのパネルがボタンを押すとスライドして出てきたりとか、今のクルマだと樹脂だろうなという部分が本革になっていたりとか。

仕事柄、新車に乗ることも多いので、どうしても比べちゃうんですけど、違いはよく感じますね。

新型車の方が性能は抜群に良いけど、古いクルマはエンブレム1つとっても個性やこだわりが強かったりするんです。どっちも素敵だけど、それぞれの魅力はありますよ。

―――両車の良さを知りながら、なぜ旧車を選んだのですか?

電気自動車にシフトチェンジするという話があったり、マニュアル車の設定のある新車が少なくなってきていたり、こんな時代だからこそ、この先運転出来なくなるかもしれない古いクルマを選んだんです。

正直なところ、新車に比べると壊れることも多いし、それを修理する部品もなかなか手に入らなかったりします。

だけど、僕がそれをしないのは、自分の人生を豊かにするためです。

通勤の往復2時間、この時間が週5であるわけじゃないですか。それが1年、定年退職するまでに換算したら、この時間って僕の人生の多くを占めるんです。

だからこそ、可能な限りはこの時間を、好きなクルマとワクワクする時間にしたいと思いました。これって人それぞれで、好きな服を着て、音楽を聴いて、美味しいご飯を食べて、という感じだと思うんですけど、僕の場合は好きなクルマに乗ることで幸福度があがるんですよね。

そう考えると、やっぱり乗って良かったと感じます。

  • トヨタ マークII

    トヨタ マークII

そう話してくれたNさん。これからもマークIIと一緒に、素敵なカーライフを送っていくことでしょう。

(文:矢田部明子)

MORIZO on the Road