愛車として迎え入れて50年。日産・シルビアへの“ときめき”はこれからもずっと
1964年の東京モーターショーで発表され、翌年の1965年4月に発売された初代シルビア(CSP311型)に乗る「Aさん」。
一目でそのスタイルの素晴らしさに惚れ込み、就職したばかりで買えもしないのに、カー雑誌に出ていた東京方面のショップに何度も足を運んだと話してくれました。
そんな Aさん と愛車のシルビアは、出会ってもうすぐ50年を迎えるそうです。
今回はA さん×シルビアのお話をお届けします。
―――5代目のS13シルビアを何度か取材させて頂いたことがあるのですが、初代シルビアは当時どんな方が乗っていたのですか?
初代シルビアが登場した頃、私は15歳くらいだったのですが、一般人がおいそれと乗れるようなクルマじゃなかったですね。
なぜなら、当時の初任給が2万円いくかどうかというなか、120万で売られていましたから。高級車と呼ばれたクラウンですら100万しなかったから、買えるのは本当に一握りの人といった感じでした。
―――ということは……Aさんは儲かってたんですね♪
あはは(笑)!「はい」と答えたいところだけど、いわゆる普通の勤め人でした。
私が購入したのは発売されてから10年後だったから、50万前後が相場といったところでね〜。それでもかなりキツかったけど、高度経済成長期で給料もそれなりだったから、25歳の時にかなり思い切って購入したんです。
サニーやカローラに乗っている友人からは、「何でそんなに古いクルマに乗ってるの?お前、変わってるな〜」なんて言われていましたがね(笑)。
―――そこまでして乗りたいと思った理由を教えて下さい。
スポーティーなのに、背広をピシッと着て乗るような洗練された美しいデザインと、走りは……。あのね?う〜ん。答えになっていないかもしれないけど……いいかい?
―――……?
もう50年も乗ってるから、コーナリングが良いだとか、エンジンの心地良い音がどうだとかは、どうでもよくなってしまってね(笑)。
大事なのは、ハンドルを持つと“胸がときめくこと”なんです。
若い頃に、恋人をデートに迎えに行く時にワクワクしたような、あんな気持ちになれるんですよ。まぁ、妻は「せまい、うるさい、臭い」って乗りもしなくなりましたけど(笑)。
時代と共に変わりゆくものもあるけど、私の中でのシルビアは“生き甲斐”“元気の秘訣”です。
そうだなぁ〜、ついこの間は山口県に、ちょっと前は北海道にもふらっと行きましたね。とにかく、行きたい場所があれば行くので、特に走行距離は気にしていません。
―――維持は大変ではないのですか?
個人的に、旧車の楽しみってのは5つほどあると思っていましてね。1つ、操る。2つ、見る。3つ、見られる。4つ、部品を探す。5つ、語るです。
維持するために困るのが“部品集め”だと思うんですけど、楽しみの4つ目に挙げた通り、私にとっては楽しいことなんです。最終的に見つからなかったら、知り合いの業者などを頼って、何とかするという手もありますしね。
―――そういった箇所はありますか?
フロントグリルです。実は、購入したてはフロントグリルに直径15㎝くらいの穴が左右に空いていたんです。それが気になってしまったから、愛車として迎え入れて一番初めに取り掛かったのが この部分でした。
シルビアにはアルミのフロントグリルが付くんですけど、グリルの横のサンが角度も長さもそれぞれ違っていて結構大変でしたね〜。身内にクルマ屋を営んでいる者がいたから、角度や長さを調べてもらって、ピッタリ合うのを私も少し手伝いながら作りました。
そうやって完成したフロントグリルに愛着が湧いてしまって、純正も持っているのに、自作の方をずっと使っているんです。
あとは、ほぼレストアに近いオールペンを2回しています。初めは深緑っぽい色だったんですけど、何せサビが酷くてね。その後、アイボリーに塗り替えて、次に日産で一番初めに設定されたメタリック色の“シャンパンゴールド”というボディーカラーにしているんです。
ほかには、60年前のクルマだから“現代のクルマ”に付いている機能が無いから付け足したりとかですかね。例えば、安全性の面を考えて5、6年前に2点式から3点式のシートベルトに変えたり、ハザードとパッシングライトも装着しました。
―――ハザードって無かったんですね!
そうそう、無かったんだよ。あとは、ETC、ナビ、オーディオの快適グッズも長旅のお供に取り付けました。
とにかくね、このクルマについて話し始めると、1日じゃ足りないくらい色々あるんですよ。もうそろそろ1時間ですね……でも、最後にこのミニカーについて話してもよろしいかな?
―――はい!お願いします!
実は、日本で最初に高速道路のスポーツカー型パトカーに採用されたのが、初代シルビアなんです。神奈川県警が第三京浜に採用したそうで、このミニカーにはロゴや当時のナンバープレートが入っているんです。
通院している病院の先生がクルマ好きで、待合室にクルマ雑誌が置いてあるからパラパラめくっていると、プレゼントコーナーにこれが出ていたんです。なんとその日がちょうど締め切り日で、ダメ元で出したら当選したんです。
もちろん当選したことも嬉しかったけど、シルビアって、こういう風に私にサプライズをしてくれるんです。これが、このクルマに乗り続けたいと思う理由の1つなんですよ。
だからこそ、乗れる限り乗り続けたいです。これからもずっと。
シルビアで日本全国を走っておられるので、取材のアポがなかなか取れなかったAさん。噂によると、今週もどこかにドライブに行くとか?見かけたら、ぜひ声をかけて下さいとのことでした。
(文:矢田部明子)
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