カスタードイエローの日産・マーチは誰にも渡したくない愛おしいクルマ
今回、お話を伺ったのは、イラストレーターのFUGさん26歳。
遡ること約6年前、初めての愛車に実用性を重視して選んだ日産・キューブを迎え、何気なく乗っていたというが、環境の変化で手放すことになったのだそう。
その後、仕事が軌道に乗ってきた頃、新しい愛車に1997年式の日産・マーチ(K11型)を迎えることになったのだとか。
カスタードイエローのその姿に魅了され「今でも思わず見惚れてしまう瞬間がある」と話す彼とマーチには、一体どんな物語があったのでしょうか。
今回は、マーチ(K11型)×FUGさんのお話です。
――マーチとはどういう出会いだったんでしょうか?
元々、マーチの存在をあまり詳しく知らなかったんですが、ある日、地元のホームセンターの駐車場の端っこに、見たことのない車が停まっていたんですよ。近づいて見に行くと、ミヤセ自動車という会社が、マーチ(K11型)をベースに製造した“コペル ボニート”というクルマだったことが分かったんですよね。
イギリス車っぽい見た目なんですが「何だこれ!?」って気になって…。その後も頭から離れず、ネットで色々と調べていくうちに、標準仕様のマーチも可愛いなって気になりだしたんですよ。
――調べるうちに惹かれていったクルマだったんですね。
自分がクルマに求めるものって結構漠然としていて、少し旧くて自分の生まれた年代と同じくらいのクルマが良いな程度に思っていたんですが、調べてみると、正に自分の生まれた年と近かったんです。それで「これ、めっちゃいいやん!」ってなって、愛車候補になったんですよ。
――見つけ出すのは相当苦労されたんじゃ…?
それが、その後ネットで探してみると、カスタードイエローで3ドアの走行距離が3,700 kmっていう超希少な個体が掲載されていたんですよ。とても魅力的な車両を見つけることができたんですが、売られていた場所が愛知県と遠くだったんですよね。
購入条件の中に現車確認が必須と記載があったので、当時住んでいた福岡県からは「さすがに遠いよな」って渋っていたら、2日後くらいに売れちゃいまして…。それからというもの、ずっとそのマーチが忘れられなくて、探していましたよ。
――相当悔しい思いをされたと思います。その後はすぐに見つけられたんですか?
実は、買い逃した2週間後くらいに、別のクルマではあるんですが、同じ色のマーチが出てきたんです。もう「買うしかない!」って思って、すぐに購入に向けて動きましたね。
色、形、年式、全てが探していた条件にピッタリだったので、本当に驚いたんですが同時にとっても嬉しかったのを覚えています。
――振り返ってみて、具体的にマーチのどこに心を奪われたんでしょう?
難しいな…1番はやっぱり顔かな。いかにも話しかけてきそうな優しい顔をしてるじゃないですか。そこに惹かれたというのと、日本車っぽくないところでしょうかね。
ちょっと欧風というか、ヨーロッパでもカーオブザイヤーを受賞したらしいのですが、向こうでも評価されただけはあるなって感じますね。スマートなんだけど愛くるしさを感じる内装の丸っこいデザインが、めちゃくちゃ気に入っているんですよ。
今思うと本能的に惹かれていた部分もあったんだと思います。
――マーチが納車された日のことは覚えていますか?
もちろん覚えています。
実車を見た時の第一印象は、思ったより小さいなって感じましたね。実はマーチってそれまでに乗ったことがなかったので、購入前は設計図から寸法を割り出して、メジャーで測って「こんくらいかな?」って家でシミュレーションをしていたんですよ(笑)。
それで、いざ実車に乗ってみたら、中は思ったよりも広く感じて、これは良いなって思いましたね。それと、ミラーの小ささやハンドルの細さにも驚いたのを覚えています。
――運転した時のフィーリングはどうでしたか?
このマーチの排気量って997 ccなんですけど、乗ってみるとやっぱり全然パワーがないんだなって感じましたね。
納車日が9月の少し暑い日だったので、エアコンを入れて走ると、なお進まないみたいな感じでした。なるほどなーって思いながら、でもそこがまた可愛いなって当時から感じていました(笑)。
小回りが軽自動車並みに効くので、取り回しがかなりしやすいのも気に入りましたし、ミラーを格納する時は手動なんだって驚きつつも、愛くるしさを感じましたね(笑)。
――アナログ的な要素がFUGさん的にグッとくるポイントなんでしょうか。
そうだと思います。乗っていくうちに愛着が湧いてくるのって、そういうアナログ的な部分があるからこそなんじゃないかって思うんですよ。
最近の自動車は電動格納式になってますけど、自分はやっぱりマーチみたいなアナログ式に良さを感じますね。コーヒーを自分で淹れる感じというか、サブスクで音楽を聴くんじゃなくて、レコードでちゃんと聴くみたいな感じで…。手間=向き合える時間と感じているんだと思います。
――FUGさんとマーチの1番の思い出を教えていただけますか?
福岡県に柳川市っていう、彼女が昔住んでいた場所があるんですが、当時よく遊びに行ったりしていたんですよね。そこにこのマーチで再び一緒に行けたことが1番の思い出になっています。
それと、幼少期によく近くで遊んでいた地元のイチョウの木があるんですが、そこにこのマーチで行けたのも嬉しかったですね。
お気に入りのマーチで、こういう思い出深い場所に来られるっていうのは、とても感慨深いものがあります。
――マーチに乗っていて幸せを感じる瞬間ってどういう時なんでしょう?
このカスタードイエローの色って、自然と溶け込むような色なので、写真映えもすごくしてくれるんですよ。背景が街でも良い感じになってくれるんです。
それがすごく気持ち良いというか…。良い感じに写真に収まってくれると、自分の心の中にあるちょっとした満足メーターみたいなものが満たされるんですよね。
それと、運転している時、約1000 ccなのに頑張って走ってくれている感が伝わってきて、それがすごく愛おしいですし、買って良かったなって思う瞬間でもあります。
――今のFUGさんにとってマーチってどういう存在になっていますか?
うーん…。難しいですね…(笑)。
触れてない期間が長くなると早く会いたいっていう気持ちになるので、親友みたいな感じでしょうか。「あいつ元気にしてるかな?」みたいな感覚になるというか。
駐車場に停めている時に、遠くから見ると「居た!」みたいな気持ちになる(笑)。分かりづらいかもしれないですが(笑)。「うわ、停まってる!」みたいな…。なんて言うか、こいつを見ると嬉しい感情になるんですよね。もう、誰の手にも渡したくないくらいです。
マーチを購入して1年が経った今、自分でもびっくりするくらい気に入っているというFUGさん。
イラストレーターでいらっしゃるので、愛するマーチのイラストもきちんと描かれていました。
97年9月に製造されたマーチと98年9月生まれのFUGさん。
秋色がチラリと覗かれる彼らには、正に絶妙な“カスタードカラー”のようなバランスで、この先もずっと、穏やかでありながら楽しさで輝くカーライフを送り続けて欲しいと、筆者はしみじみ思うのでした。
(文:秦 悠陽)
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